Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
(ダニエル・グロスマン/アンサンブル28)


NEOS30802Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

ダニエル・グロスマン/アンサンブル28

NEOS30802 2003年録音

 Daniel Grossmann (1978-)って若い世代だけれど、初演時の編成に古楽器演奏、これが快速+テンション高い熱気はノリノリ。16:26ー11:11-5:51-10:48、第2楽章「Marcia funebre: Adagio assai」は最速とか、ま、速い遅いだけで音楽の価値はカンタンに決まりまへんで。音録りの関係か(ウィーン、エロイカ・ホールーロブコウィッツ・パレス内)小編成古楽器にありがちの薄い響きを感じさせぬもの。どうしても管楽器が前面に出てバランスがよろしくなくなりがち(タッシェン・フィルではそのことが気になった) ここではそんな違和感は比較的少ないもの。編成の大きなモダーン楽器による豊かな響きは現代の会場(大人数の聴衆)に相応しいけれど、もともと原点はこんな響きだったのか、納得できる成果はこんな粗野な勢いがあってこそでしょう。(「音楽日誌2018年9月」より)

 ここ最近、Beeやんの交響曲だったら「英雄」ばかり。かつての苦手意識どこへやら、いつ聴いても、幾度馴染んだ旋律を繰り返しても新鮮な感動をいただけます。この”アンサンブル28”とやらは欧州28人の古楽器奏者によるアンサンブルとのこと。その後、録音が続いて出ていないので活躍ぶりは伺えません。これ一発の臨時団体だったのか。際立った特徴は快速テンポ、テンションの高い推進力、そして小編成でありながら響きのバランスに不足を感じさせないこと。技術のキレは当たり前の前提でしょう。この人数が1804年初演時の編成と銘打っております。こんなに上手くなかったと思うけれど。

 第1楽章「Allegro con brio」冒頭二和音のぶちかましに充分迫力有、そして「バスティアンとバスティエンヌ」序曲酷似優雅なな第1主題へ。提示部繰り返しはもちろん実施、この編成ではやはり”弦が弱い”バランスなのですね。そのかわり目眩く管楽器の粗野なサウンド、表情豊かな色彩がたっぷり絡み合って愉しいもの。表現はストレートに飾りないものでも、疾走しアツく躍動してノリノリ。コーダに於けるトランペットは脱落したまま、というか、ベーレンライター新版では、それでも違和感がないようになっているらしい。(16:26)

 第2楽章「Marcia funebre: Adagio assai」は史上最速(11:11)とのこと。宣伝文句的に「速い遅い」は常用されるけれど、それだけで芸術の価値は決まりませんって。眉間にシワ的重厚深刻なる「葬送行進曲」が浪漫派以降のイメージ刷り込み、おそらくは28名の薄い響きではサクサクとしたテンポ設定が似合うのか、ずいぶんと淡々さっくりさっぱりとした軽量サウンドあります。昔馴染みな聴き手(含む=ワシ)ほとんどあっという間に終わっちゃう感じ。

 第3楽章「Scherzo: Allegro vivace」。ここ、分厚い編成なら重戦車がごりごり侵攻するような感じ。こちら軽妙な躍動とゴキゲンな推進力がいかにも”スケルツォ”、管楽器の音色が鄙びた味わい深さ、ホルン重奏などなかなかの迫力、一気呵成に過ぎ去って(5:51)アタッカにて

 最終楽章「Finale: Allegro molto」。Beeやんお気に入りの「プロメテウス」主題が次々と変奏して表情を千変万化させる名曲中の名曲!ここも従来のイメージは重厚長大堂々たるスケール、こちら馴染みの主題に+とくに粗野な木管があちこち色を添えて大活躍!よう理解できましたよ。10:48は充分速いけれど、テンポ設定的に咳いて急いだ印象はなくて、歩みは軽快でもひとつひとつの変奏曲をしっかり、味わい深く描き分けて仕上げはていねいでした。ラスト渾身の渾身の大爆発にも満足。ハノーヴァー・バンドやデイヴィッド・ジンマンと出会って既に20年以上、古楽器(系)モダーン楽器、太古歴史的録音含め、各々の味わいを堪能して贔屓の引き倒し的音楽愛好家から卒業しております。

(2019年4月28日)

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written by wabisuke hayashi