Beethoven 交響曲第1番ハ長調/Shostakovich 交響曲第1番ヘ短調
(ミヒャエル・ザンデルリンク/ドレスデン・フィル)


SONY 88985492782 Beethoven

交響曲第1番ハ長調

Shostakovich

交響曲第1番ヘ短調

ミヒャエル・ザンデルリンク/ドレスデン・フィル

SONY 88985492782 2017年録音

 偉大なる父Kurt Sanderling(1912ー2011独逸)の三男坊、Michael Sanderling(1967ー独逸)は2011年よりドレスデン・フィルの首席。時代を超えた作曲家の交響曲全集を同時録音しておりました。

 Beethoven30歳頃の作品である交響曲第1番ハ長調は1800年初演。Mozart既に亡く、Haydnラストの交響曲第104番ニ長調は1795年の作品だから、既に時代は次に移行しておりました。古典的端正な作品は彼の個性をしっかり刻印した傑作。音質クリア、編成小さめ、引き締まって緊張感を湛えた響き、馴染みの不器用なオーケストラのサウンドも魅力的であります。優秀録音。

 第1楽章「Adagio molto - Allegro con brio」の序奏はハ長調から遠く不安定に浮遊する革新的なもの。第1主題はジュピター交響曲第1楽章に似る、とはWikiによる情報、力強い推進力に充ちた青春の躍動を感じさせます。オーケストラの響きは素朴さを残して流麗に非ず、質実に力みのない始まりであります。ティンパニが力強い。(9:25)第2楽章「Andante cantabile con moto」は符点のリズム際立って、淡々と速めの歩み。この辺りさっぱりとしたテイストが現代(いま)風なのでしょう。(7:02)

 第3楽章「Menuetto, Allegro molto e vivace」題名は「メヌエット」になっているけれど、既に実質上はScherzoの躍動に充ちた闊達な楽章。溌剌として力まぬ勢い充分、ヘルベルト・ケーゲル辺りを思い出すと、このオーケストラもずいぶん洗練されたと感じます。(4:18)第4楽章「Adagio - Allegro molto e vivace」冒頭の一撃はのちのBrahmsを連想させるもの。やがて上機嫌に軽快な主題が疾走して爽快な演奏でした。センスはモダーンだけれど、素朴さを失わぬサウンド、微笑みを絶やさぬ流れの良さ。(5:54)

 Shostakovich 交響曲第1番ヘ短調は栴檀は双葉より芳しい19歳の作品。天才でっせ。

 第1楽章「Allegretto - Allegro non troppo」はトランペットとファゴット・ソロによる様子見のような開始からユーモラスに不安気な行進曲、「ティル・オイレンシュピーゲル」を連想させるオーボエとはWikiの指摘でした。ヴァイオリン・ソロなど扱い方は新鮮、優雅な第2主題はワルツ、やがて怒涛の如く重量級サウンドが爆発して、打楽器の重低音が効いております。アンサンブルの仕上げは丁重、Beethovenに比べるとスケールは格段に大きい。(8:49)

 第2楽章「Allegro - Meno mosso」はスケルツォ。冒頭コントラバスの切迫した入から快速。ここはピアノの活躍が印象的でしょう。遅く暗鬱なトリオを挟んで、冒頭の激流が戻ります。もの凄く上手いオーケストラじゃないと思うけれど、金管の迫力充分、指揮者の統率が行き渡って緊張感は維持されました。(5:18)

 第3楽章「Lento」じっくりと構えた緩徐楽章はWagnerの引用とか(Wikiによる)。オーボエ独奏は心情が読み取れぬ雄弁、それがチェロ・ソロに引き継がれ、これは「ジークフリート」?たしかにうねうねと情感が高まっていく風情は辛口なWagner風かも。トランペットの無機的な合いの手は妙にシニカルと感じます。第2主題は葬送行進曲、そのままアタッカで(9:57)第4楽章「Lento - Allegro molto」へ。小太鼓とドラも鳴って不穏なフィナーレの始まり。各パートはさほどに名手の技に非ず(←すんまへん、ド・シロウトの勝手な感想)サウンドのキレも地味め、ミヒャエルは慎重入念ていねいな完成度高い仕上げに、打楽器低音迫力も充分にたっぷりラスト盛り上がって作品を堪能いたしました。(9:38)

(2022年5月7日)

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written by wabisuke hayashi