Beethoven 交響曲第5番ハ短調(モニカ・ハジェット)/
第6番ヘ長調「田園」(ロイ・グッドマン)
(ハーノーヴァー・バンド)


NIMBUS NI 5144ー8 Beethoven

交響曲第5番ハ短調(モニカ・ハジェット1983年)
交響曲第6番ヘ長調「田園」(ロイ・グッドマン1987年)

ハーノーヴァー・バンド

NIMBUS NI 5144ー8

 これはモニカ・ハジェット(Monica Huggett 1953-英国)、ロイ・グッドマン(Roy Goodman 1953-英国)が振り分けた史上初の古楽器による交響曲全集だったはず。発売されてすぐ心躍らせて拝聴した記憶も鮮明、やがてCD不良劣化廃棄に泣きました。第7番第8番へのコメントは15年前、現在は既に古楽器が隆盛、モダーン楽器を使用しても古楽器風影響を受けた演奏も多く登場しております。この録音も三十余年前となりました。当時はまだまだ”重厚長大”時代、自分はBeethovenBrahmsを苦手としておりました。現在だったらそんなことはない、心安らかに先人の残した名曲を堪能できます。久々の拝聴印象はいかがでしょうか。

 残響豊かなロンドン、オールセインツ教会にて収録。残響豊かにややオフ・マイクっぽく音像は遠く、素朴な”薄い”サウンドが個性でしょう。その印象は4年早い第5番に顕著、世評では”古楽器の技術がこなれていない”との声有、まだまだ新時代の古楽器演奏は手探りの時期だったのでしょうか。それでも従来の”重厚長大”とは趣の異なる、新鮮な印象はありました。

 交響曲第5番ハ短調は有名な第1楽章「Allegro con brio」冒頭のジャジャジャ・ジャーンがあまりに有名、作品全貌との出会いは小学6年生のクリスマス、ユージン・オーマンディでした。テンポはやや速めな勢いに違和感なし、提示部繰り返し有、弦は素朴に響き薄く、管楽器(とくに木管)が際立ちます。サウンドに芯は足りないかも。粗野なホルンは迫力満点に魅力的でしょう。(7:35)第2楽章「Andante con moto」ヴィオラとチェロによって奏でられる第1主題は軽快に弾むよう。オーケストラの各パートを上手く活用した変奏曲はみごとなワザ。ここもやや速めのテンポ、浮き立つような軽さ、金管の爆発に素朴さを失いません。(9:10)

 第3楽章「Allegro」トリオは繰り返しなし。これがスケルツォねぇ、ずいぶんと深刻かつカッコ良いチェロとコントバスの出足、ホルンは「運命の動機」そのまま、ここもリズムの軽さを感じさます。トリオは「像のダンス」、この辺り近現代オーケストラの重低音、分厚い響きを求められる方も多いと思いますよ。やや迫力不足に素朴な響きも悪くはないけれど、モニカ・ハジェットはヴァイオリニスト、もうちょいと弦の揃え方を求めたいところ。(7:39)アタッカで第4楽章「Allegro - Presto」は提示部繰り返し有。おそらく技術的な不備を指摘されたのはこの辺りでしょう。軽快な勢いにややアンサンブルもリズムも甘くなって、響きも混濁気味。ラストちょっとがちゃがちゃした印象はありました。それでもワリと好きな演奏ですよ。ラスト前、静かな部分での浮き立つリズム感のところ辺り。(10:59)

 4年後のオーケストラの熟達、交響曲第6番ヘ長調はロイ・グッドマンの統率が感じられる充実した響きでしょう。音質もこちらのほうがよろしい感じ。ディジタル録音に慣れてきたのか。第1楽章「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め(Allegro ma non troppo)」はかなり速めの印象、アンサンブルは前曲よりずっと整って、木管も金管もたっぷりヴィヴィッド。ここも浮き立つようなリズムを感じさせます。(10:48)第2楽章「小川のほとりの情景(Andante molto mosso)」Andanteだから「歩くような速さ」まさにそのような雰囲気満載、全体サウンドの溶け合い方は、やや散漫な印象だった第5番よりずっとデリケート。これは音質印象かも知れません。弦は薄く、木管ののびのびと清潔な響きは際立って、美しく啼き交わす鳥の声に惚れ惚れ。(11:43)

 第3楽章「田舎の人々の楽しい集い(Allegro)」の粗野なホルン最高。軽快軽妙な木管がホルンやトランペットに受け継がれて、この辺り古楽器の熟達を感じさせました。(4:54)第4楽章「雷雨、嵐(Allegro)」の迫力に不足はない、金管の粗野な響きにティンパニも決まっております。ちょいとアンサンブルが緩くて縦線がずれる。(3:59)第5楽章「牧歌 嵐の後の喜ばしい感謝の気持ち(Allegretto)」はホルンとクラリネットの出足は神々しく、弦の主題はシミジミ感謝の気持ちを感じさせるところ。モダーン楽器に慣れている人には第4−5楽章は迫力不足に感じるでしょうか。弦は引っ込みがち、管のバランスが強く、その響きにはこくがあって魅力的(9:13)

 最近の”上手いけど骨と皮”みたいな演奏よりずっと好きです。

(2021年2月6日)

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written by wabisuke hayashi