Beethoven ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
(アルフレッド・ブレンデル(p)/ズービン・メータ/ウィーン交響楽団)


BRILLIANT 93761  35枚組総経費込5,400円ほど Beethoven

ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」

ズービン・メータ/ウィーン交響楽団(1961年)

ピアノ、合唱、管弦楽のための幻想曲ハ短調 作品80

ヴィルフリート・ベッチャー/シュトゥットガルト・フィルハーモニー/シュトゥットガルト・レーラーゲザンクフェライン(1966年)

アルフレッド・ブレンデル(p)

VOXBOX CDX3 3502 3枚組2,000円ほどで購入→BRILLIANT 93761/9

 子供の頃から音楽好き、やがて若さと体力衰えた似非金満中年に至って+21世紀にはCD価格崩壊にオトナ買い〜しかし肝心の音楽を拝聴すべき無垢な清い耳とノーミソを失って、集中力体力も減退を自覚する日々〜この話題は千度【♪ KechiKechi Classics ♪】に繰り返しました。パラダイムの転換というものはあるものですね。LPは高かったですよ、直径30cmの円盤なんて若い世代は見たことないんじゃないか、あれは高かった!一世代廻るとデータ・ダウンロードですもんね、この「皇帝」もおそらくパブリック・ドメインだから無料入手可能なことでしょう。若いころVOXの中古LPを入手(500円?ジャケットぼろぼろ)エラく乾いて、奥行きのない音質に閉口した記憶もあります。こうして久々に拝聴すると改善顕著、しかしオン・マイクにデリカシー不足な印象に記憶は蘇りました。ま、たった今聴いてさほどに違和感なし、がっかりするほどの音質に非ず、充分音楽愉しめますよ。

 下にも書いてあるけど、ずいぶん長い間「Beeやん苦手」症状続きました。「皇帝」はその最左翼、”「人生の闘いに勝利するぞ!」的姿勢に拒絶反応”みたいなものがありました。2006年頃からCDを処分し始めて、ピアノ協奏曲辺り最初に手放したはず(ステファン・ヴラダーとかフライシャー、バックハウス、ルービンシュタインとか)拝聴機会は少ないことを前提にリファレンスはケンプ、ライトナーのバックが立派だったことが主因だったかも。閑話休題(それはさておき)、既に引退した巨匠ブレンデル30歳、若き日の記録+ズービン・メータ25歳のデビュー録音、勇壮とか肩肘張ってご立派!演奏に非ず、リリカル知的に美しいピアノ。

 第1楽章 「Allegro」いきなりのオーケストラぶちかまし〜ピアノの華やか鮮やかなソロは雄弁そのもの、以前だったらここで”もうご勘弁を”。じつはここは序奏、ほんの出会い頭のご挨拶だったのですね。辺りを睥睨するかのようにオーケストラによる熟達の第1主題登場、勇壮でかっこ良い!はずの威圧的な推進力にさらに、もうご勘弁を”状態続いて〜みたいな記憶(先入観)はすっかり薄れました。若々しい爽やか、テクニックが表層を流れることもない、ここでもやはりリリカル知的に美しいピアノでしょう。

 第2楽章「Adagio un poco mosso」ここエエ感じにしみじみ静かですよね。たしか小学校の卒業証書授与に流れておりました(小学6年生で作品旋律に気付く生意気!)。華麗なる加齢を重ねるごとに緩徐楽章への嗜好は高まります。繊細なピアノ〜主題を予告しつつアタッカで終楽章「Rondo Allegro - Piu allgero」に突入するでしょ?子供の頃、ここカッコ良い!大好きでした。溌溂として躍動いっぱい、こんな元気な音楽は(ブレンデルだったら)時々聴いても悪くない・・・

 メータのオーケストラは細部やや粗いというか、合わせものってけっこう難しいですから。でも、元気はありますよ。きっと安いギャラでも喜んで振ってくださる若者を呼んだのでしょう(ブレンデルの回想に、その頃の様子が述懐されております)大きな名曲を快く表現してくださった記録です。もう苦手でもないけど、好んで何度も聴くほどに非ず。古楽器のは別耳です。

 「合唱幻想曲」は作品として「皇帝」ほど熟達していないけれど、自在なピアノ・ソロ、絡み合うオーケストラは変奏曲、ラストを締めくくる合唱も多彩な名曲と思います。ヴィルフリート・ベッチャー(Wilfried Bo"ttcher 1929-1994)はVOX系にたくさん録音のある(たしか)独逸の人、チェロも弾いてましたっけ。独墺では珍しいコンサート専門のオーケストラであるシュトゥットガルト・フィルは(さきの「皇帝」より)アンサンブルは上出来、合唱団もまずまず。

 音の状態はこちらのほうがやや良好です。

(2015年6月21日)

 これ、メータのデビュー録音です。ブレンデルも当時デビューしたての新人。(最近*、国内盤が出ているが@1,200くらいだから、輸入盤を探して下さい)LP時代も所有していて、ちゃんとVOXレーベルでした。(ウィーン・プロ・ムジカ管の表記)メータ当時25歳。

 久々に聴いたけど、これは最高の一枚ですね。ブレンデルがリリカルで繊細で、派手ではないが、味わい深い。雄弁な「皇帝」ではないが、軽快で若々しくてとても好感が持てます。ここ一番のキメ、もちゃんと準備してます。録音はやや薄手だけれど、LP時代に比べれば信じられないほど改善されていて、鑑賞に問題ないはず。

 メータは、とくにどうのという個性を発揮しているわけではないが、合わせ上手で立派なもの。若いのに。*註;最近とは2000年当時のことか


 ・・・というのが2000年当時のコメントです。残念ながらワタシはBeethoven の佳き聴き手ではなく、とくにピアノ協奏曲は(むしろ)苦手方面の罰当たり者!でして、滅多に聴かんのです。ところが、ネットで情報検索していて当盤が「メータが舐めきった伴奏をしている」旨コメントがあって、そうだっけ?舐めきった伴奏ってどんなんだろう?興味津々、という不純な動機で取り出したCD。ま、最近「皇帝」もグールド盤で少々目覚めた感じもあるし、ということで。

 ブレンデルは大家であって、巨匠としての不動の評価であるが、ワタシはLP時代「コロムビア・ダイヤモンド1000シリーズ」廉価盤のBeethoven 担当、といった昔馴染みなんです。著名になってからのCDは4枚くらいしか聴いていない。録音当時30歳〜ピアニストは早熟な人も多いから、この年齢なら完成度高い演奏も期待できるし、実際その通りでもあります。

 「人生の闘いに勝利するぞ!」的姿勢に拒絶反応がありまして、「皇帝」も勇壮でチカラ強い旋律に(正直)腰も引けます。こういった作品を更にバリバリと!表現されると、ますます耳を塞ぎたくなりまして、昨今流行(はやり)の若手お笑いコンビ(つっこみ)のリキみ過ぎ絶叫不自然さを連想して、「やはり”しゃべくり漫才”は、いとし・こいしが最高やったな」とご隠居風ぼやきも出ようもの・・・閑話休題。

 ここでのブレンデルは「リリカルで繊細で、派手ではないが、味わい深い」「軽快で若々しく」という(以前のワタシの)評価はほぼ当たっておりまして、大家としての構えたスケールより、爽やかで自然な歌が魅力的でした。細部まで明快な語り口だけれど、存分なるテクニックのみが表出されることなく、音色含めて知的な味わいの演奏だと思います。テンポの揺れもほとんど自然で、恣意的なところがない。

 さて、話題のメータの伴奏です。「舐めきった伴奏」?数年前のワタシの評価は「どうのという個性を発揮しているわけではないが、合わせ上手で立派」〜さてどちらが正しいのか?ピアノ・ソロの合間にオーケストラが主導権を握る部分があるでしょ、そこで時に「走る」ことがあるんですね。やや雑な感じで。そのことを指しているのか。静謐なる第2楽章「アダージョ」で、ココロを込めて誠心誠意演奏するピアノに対して、オーケストラはやや淡々とした味わいか?(悪くないと思うけど)

 ワタシは(世評高い)Mahler 「復活」(1975年)でも「呼吸が浅く、尻が軽い。完成度は高いが、まだ成熟が足りない。懊悩・苦悩が感じられない」と厳しい評価をしていたから、その路線とそんなに変わらないかな、とも思いますが。ウィーン響も特別に魅力的な響き、ということでもなく、かといって素っ気ない音でもない・・・いかがなものでしょうか。


 合唱幻想曲は、声楽含めバランス良く出来た演奏だと思います。正直、作品的にまだ魅力を心底発見できておりません。(2004年11月5日)


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written by wabisuke hayashi