Beethoven 交響曲第9番ニ長調「合唱付き」
(ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンド/オスロ大聖堂合唱団)


NIMBUS NI 5144〜8

Beethoven

交響曲第9番ニ長調「合唱付き」

ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンド/オスロ大聖堂合唱団/エドウィン・ハリー(s)/ジーン・ベイリー(con)/アンドルー・マーガトロイド(t)/マイケル・ジョージ(b)

NIMBUS NI 5144〜8 1988年録音(All Saints, Tooting, London) 

 いろいろあったような、無為無策に過ごしたような2013年も師走に至って、正しい日本の音楽愛好家であるワタシは「第九」をシミジミ拝聴いたしましょう。アベノミクスの影響か、式年遷宮ブームのせいか、猫も杓子も的古楽器熱!も醒めつつあって、往年の大編成迫力求む!数多く要求出現との噂。もとよりBeeやん苦手を公言して憚らぬワタシは、少々旧聞となった往年の古楽器演奏のハシリをちゃんと聴いてあげましょう。世間の評価もやや辛口でございます。

 重々しくゴリゴリした威圧感、”人類の懊悩はすべて自分が背負う!眉間に皺”的1960年代風演奏は苦手。スッキリ軽快なのがよろしい。ハノーヴァー・バンドの演奏はタメも詠嘆も(工夫も?)ない、素っ気ないほどストレート素直な流れ、響きは濁らない。近現代大管弦楽に馴染んだ耳にはいかにも頼りなく、迫力不足に響くのでしょうか。こちら、もうそろそろ20年のお付き合い、これも個性として好ましく受容したものです。ま、作品とは40年以上のお付き合い、クリスマスに買ったユージン・オーマンディが出会いでした。

 第1楽章「Allegro ma non troppo, un poco maestoso」〜宇宙の果てからなにか神秘的なものが降ってくる・・・やがて劇的フル・オーケスラの響き爆発!って、Brucknerはここから学んだのだな。豊かな残響に古楽器は迫力不足?詠嘆、タメ一切ないまっすぐな(約14分弱というのはちょいと短い)快速表現、いえいえワタシは”作品の素の姿”、素朴なサウンドからまっすぐに感銘受け取りました。ユーザーレビューに”(現在では)考えられないような演奏レベル”、”悲しいかな思い出話的存在”とあるのは、例えば木管金管は”素朴に奏している”(技術的な破綻はない)のみ、その後四半世紀を経、各パートの表情付けとか自分の色、ニュアンス付け、もっと凄いのが出ている、ということでしょう。いくらでも大仰なるスケールを表現できる楽章は、スッキリ爽やかでした。

 第2楽章「Molto vivace」15:21掛かっているのは繰り返し実行故。もともと快速な楽章だからでしょう、ここは軽快軽妙なスタイルがもっとも成功していると思われます。ヴィヴィッドなリズム躍動し、ややオフ・マイク残響豊かなサウンドに汗水系威圧感皆無。爽快なノリに溢れ、ティンパニの粗野な響きが効果的(これは第1楽章も)。ま、ここも近現代オーケストラは効果的なところでしょうね。第3楽章「Adagio molto e cantabile」は瞑想的な変奏曲であり、ホルンの大活躍を注目したいところ。ここもさっくり淡々とした表現やなぁ、わずか12:15。弦楽器木管の淡彩な(薄い)響きはともかく、期待のホルンはやや期待外れにおとなしい(上手にまとめました、的水準)、少々音を外してよろしいから、豪快に堂々と存在を主張して欲しかったところ。この辺り、未だ古楽器演奏は手探りだったのか。

 この楽章にもBrucknerへの影響を感じさせました。

 全3楽章とは違和感多大なる名曲終楽章、ここも長大なる変奏曲ですね。24:11はカラヤン辺りとほとんど変わらない。出足の粗野な金管(+ティンパニ木管)の響きに期待は高まります。やがて「歓喜に寄す」旋律が各パート次々参集して成長していく美しい対位法の精華。ここ文句なく古楽器の効果が良い方向に出ているでしょう。そしてオーケストラの不協和音から"O Freunde"〜マイケル・ジョージ(b)登場。この人は美声ですよ。

 オスロ大聖堂合唱団(テリエ・クヴァム合唱指揮)はオーケストラ同様整ってスッキリとした響きを誇ります。声楽ソロ同様、現代派の人にも違和感なく受け止めることは可能でしょう。"Freude, schoner Gotterfunken"変奏ラストは存分に盛り上がって”タメ”登場。”Alla marcia”行進曲は予想よりずっと遅いテンポであり、アンドルー・マーガトロイド(t)(この人も美声)に伴われた合唱〜管弦楽によるフーガに向かって若干のテンポ・アップも効果的な緊張感でしょう。ここもホルン!もっと出張ってくれ。

 そして誰でも知っている歌ってる「歓喜の歌」登場。合唱は上手いなぁ、均質に整ってヴィヴラートは抑制されております。"Seid umschlungen, Millionen!"「抱擁」の主題登場〜「歓喜」との二重フーガ辺り、合唱と管弦楽のバランス極上と感じます。現代楽器嗜好の方には管楽器は安っぽいと思われるかも。ラスト、クライマックスまでクールな佇まいを崩さぬから、熱狂を求める方には物足りないかも。

(2013年12月1日)

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written by wabisuke hayashi