Beethoven 交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
(ブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団)


FIC ANC-4/ANC-91 Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」(1958年録音)
序曲「コリオラン」作品62(1959年録音)

ブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団

FIC ANC-4 中古で350円

交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」(1963年録音)
序曲「レオノーレ」第3番ハ長調 作品72a(1960年録音)

レナード・バーンスタイン/ニューヨーク・フィルハーモニック

FIC ANC-91 中古で350円

 購入時のメモが残っていて、2000年3月。おそらくはご近所BOOK・OFFにて購入。1999年、異動で転居した岡山のマンション(4階)より外を眺めると「本」の看板が・・・それがBOOK・OFFとの本格的な出会いでした。正直、人生を変えたくらいの衝撃が・・・やがて幾星霜。CDと書籍の多くはBOOK・OFFにて購(あがな)うようになり、爾来本格的なネット時代を迎え通販、そしてオークションへ・・・ワタシはすっかり草臥れ、中年人生を転げ落ちてしまいました。それでも、この怪しげ駅売海賊盤はしっかりと、残響豊かにエエ音で鳴って下さっております。音質かなり極上。下の文書には日付がないから、このサイトごく初期2000年頃の執筆でしょう。

 ワタシは不遜にも”Beeやん苦手”と公言するようになり、しかも古楽器系の軽妙快活なる演奏を好むようになったから、こんな本格的・往年の巨匠の名曲名演奏を聴いたのも久々。8年ぶり?巡り巡って、こんな重厚で豊満、オーソドックスで構えの大きなスケールも新鮮に受け止めたものです。コロムビア交響楽団の技量に不満はないが、瑞々しくも華やかな官能と洗練(往年のウィーン・フィルみたいな)は求め得ない亜米利加西海岸のオーケストラ。よく鳴って、明るく、厚みのある響きを愉しみましょう。上手いもんです。低音をたっぷり効かせるのはワルターの好みか?それとも録音のマジックか。

 大柄で良く歌う余裕の第1楽章、しっかりと落ち着いて沈静化する葬送行進曲、圧巻の推進力と貫禄+リズムの盤石を誇る第3楽章「スケルツォ」(ここのホルンを賞賛したい!)、満を持してスケール豊かに表情が変化する最終楽章の変奏曲・・・先日、不遜にもペーター・マーク/パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管弦楽団の「英雄」(1994年)を「鳴らんオーケストラやなぁ」と感じ、それは誰の演奏がノーミソに刷り込まれたのか・・・と考えていたんだけれど。そうか、このワルターだったのか。

 いかにも巨匠然とした、立派な、それこそ21世紀古楽器系とは一線を画す演奏。ワタシが子供の頃。物故した巨匠達が現役で腕を競い合っていた、1960年代を思い出させる、文句なくゴージャスで大きな「英雄」。帰れ、原点に。終楽章後の満足感は筆舌に尽くしがたい。

(2008年11月7日)

 LP時代、クリスマス〜年末年始時期に有名どころを集めた「2枚組3000円」みたいなセットが出ていませんでした?「巨人」「ロマンティック」の組み合わせとか、「運命」「合唱」、そしてこのCDみたいに「英雄」「田園」とか。ワルター、バーンスタインという、当時CBSの2大人気指揮者が振る、「いかにも」といった説得力ある名曲2枚。(この時期、ほかにセルとかオーマンディも専属だったから、豪華な時代でした)こういった評価の高い定番も聴いておかなくっちゃ。

 じつは両方とも初耳。(少なくともちゃんと意識して聴くのは)ニューヨーク時代のバーンスタインはともかく、コロンビア響による晩年のワルターの演奏は毀誉褒貶の論議が喧しい。曰く「オーケストラがヘタクソで薄い」「録音のマジック」「全盛期をとうに過ぎた老人の音楽」等など。ま、音楽はとにかく聴いてみないと話しにならないですから、こうして格安で売ってくれると「ん、じゃあ試しに買っておくか」ということになります。ジンマンだ、アーノンクールだ、朝比奈だ、という前に、ひととおりこの辺りの「名演奏」は体験しておく価値有。

 「ワルターのBeethoven は偶数番が良い」ということになっています。この「英雄」、録音状態がたいへんよろしい。ワタシ好みの、残響が自然な奥行きを感じさせるものではないにせよ、細部まで明快に聴かせてくれれば文句はありません。オーケストラの響きが明るく、いかにもアメリカ的(というか西海岸的か)開放感も感じます。ややベートーヴェンのイメージとは異なるにせよ、技術的な不備とか、噂ほどの薄さは感じませんでした。

 演奏は立派だと思うのです。大家の演奏であり、堂々として格幅のある貫禄は悪くない。80歳を越え、心臓が悪くって引退している人でしょ?(モントゥーみたいに亡くなる寸前まで、若々しくも現役の演奏を維持した人もいましたが)1950年代、東海岸での録音の勢いとはずいぶん違うけれど(トスカニーニ追悼演奏会でしたっけ)これはこれでゆったりとした味わいはある。繰り返しをしてくれないのは個人的に不満です。

 低音を効かせて、重厚さを出しているのは録音か、それともアメリカのオーケストラにあえて望んだことなのか。高名なフルトヴェングラーのようなデモーニッシュさではなく、最近の軽快でリズミカル、スピードに乗った演奏でもない、どっしりとした演奏。あちこちの旋律のラストで、ややテンポを落として成果を確認するような「キメ」もみごと。たしかに暖かい。オーケストラの各パートも、ワルターの要求に応えようと精いっぱいなのも理解できる誠実さ。

 で、ワタシは、これは満足すべき演奏であって、ワルターのような世代の人が、良好な音質で録音を残してくれことに感謝の気持ちでいっぱい。文句をつけるとすれば、オーケストラの音色には不満はあります。もっと技術的には落ちても、中低音に自然な厚みの感じられるオーケストラであってほしい。それと、現役時代の勢いのある録音を懐かしがっている人には、そうとう印象が異なって嫌う人もいるでしょう。


 バーンスタインは、のちのウィーン・フィルとの全集の評価が高くて有名です。NYPO時代の録音は「毀誉褒貶」というより、熱心なファンが存在しているものの、メジャーな評価ばかりではありません。ワタシもその勢いというか、熱っぽさには魅力も感じます。SONYさんは、廉価盤にはあまり熱心じゃないので、あまり聴く機会がありません。

 まだ40歳代の壮年時代の録音でしょ?第1楽章は、なんとなく浮ついているというか、落ちついた安心感が感じられません。第2楽章以降は、興が乗ってきたようで、オーケストラの厚みも感じられます。録音はワルターの「英雄」より自然ですが、鮮度は落ちる感じ。いつものように熱い、推進力のある演奏ではありますが、「田園」のやすらぎはありません。

 はっきりいってワルターのほうが好き。コロンビア響ほどではないにせよ、オーケストラの音色も明るすぎて少々気になります。レオノーレは、ものすごい集中力と怒涛の迫力で聴きもの。

 こういった有名指揮者の演奏ばかり聴くのもナンですが、基本として押さえておくのは大切なことでしょう。あわせて700円。この価格なら文句なし。じつはブーレーズ/NPOの「海」と一緒に購入したのですが、上記のCDに続けて聴くと、そのアンサンブルの精緻さに驚愕してしまいました。ホント、ずいぶんと違う。


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written by wabisuke hayashi