Bartok ヴィオラ協奏曲/ピアノ協奏曲第2番(ブール)


Bartok

ヴィオラ協奏曲(1950年)
プリムローズ(va)

バレエ音楽「不思議なマンダリン」(1969年)

ピアノ協奏曲第2番(1969年)
エルフェ(p)

ブール/フランス国立放送管弦楽団

VOGUE 672 006  1,100円で購入

 棚整理で出現したCDだけれど、かなり以前(10年ほど前か?)に購入したもの。値札を見たら「1,100円」で「!?」状態。当時は贅沢だった・・・というか、ていねいにCDを聴いていたんだろうな。でも、音楽の好みの方向はほとんど変わっていないみたいだから、進歩がないでしょ。

 ASTRE'Eのブール4枚組(中古で6,400円!)も買っているから、(当時のワタシは)ブール(1913〜2001)を気に入ったんじゃないかな?彼の録音はなかなか安く出てくれないので、その後あまり聴く機会がありません。南西ドイツ放響ではロスバウトの後任だったから、現代音楽のスペシャリスト、クールで明快な指揮ぶりはブーレーズを連想させたりします。


 Bartokの遺作であるヴィオラ協奏曲は難解です。と、いうか「マンデリン」だって名作揃いの彼の作品中では、ようワカランほうの曲か。ピアノ協奏曲第2番は演奏効果も上がって、楽しめます。歯が立たない作品には、なるべく努力してその真価を自分なりに見つけたいもの。

 プリムローズのために書かれたヴィオラ協奏曲は未完成(ティボール・シェルリー補筆完成版)ですが、評価としてはTelemann以来の名作(だそう。いや、Hindemith、Walton はどうだ!という人も有でしょ?)。これが陰鬱で、「管弦楽のための協奏曲」みたいな明快な作風を想像しちゃうと、ややついていけません。この作品の普及に尽力したプリムローズに敬意を表して真剣に聴きましょうね。

 これ、1950年の録音だけれど「同時代」の熱気を感じさせて、雄弁な演奏でした。(音の状態は上々)その豊かで、艶のある響きはチェロの領域に踏み込んだもの。録音スタイルがやや昔風で、ソロが前面に出ているせいでしょうか。このアツさと「入れ込み」は、現代の若いテクニシャン(上手いが、こじんまりしている)には出せないものかもしれません。

 「マンデリン」が凄い。ワタシ、ブーレーズ/NHK交響楽団のライヴ(1995年)は気に入りませんでした。もっぱらオーケストラの技量の責任とは思うが、明快さと冷酷さを兼ね備え、洗練された暴力が欲しい作品ゆえ、求めていたのはこのブールのような演奏であった、と気付きました。

 美しくて、細部まで良く聞こえる演奏なんです。迫力には欠けないと思うが、重量感あるオーケストラではないし、一歩引いて冷静に音楽を刻んでいくブールの姿勢がじつにわかりやすい。各パートのバランスが考慮されていて、混沌と混乱のダンゴ状態からは遠い演奏。アンサンブルの緻密さにも文句ないでしょ。

 クロード・エルフェClaude Helffer (1922〜)は、何度も来日している現代音楽のスペシャリスト。名前からしてフランスの方と思うが、技術的にまったく見事で、しかも冷たさ、空虚さを感じさせません。この第2番はBartokの作品中でも、特異な明るさを持った作品と思うが、ピアノもオーケストラも強面じゃないところが好ましい。

 フランス国立放送管は、たしか管楽器がウリだったような記憶があるが、ライヴ故か金管の乱れなんかは散見されます。しかし、のびのびとして気持ちよく吹いているようで、表情が晴れやか〜というか、これやはり独墺系の響きとは異なる明るさ、軽快さがこの作品に似合っていると思います。

 エルフェのピアノは、リリカルで、やや難解な旋律を解きほぐすような味わいが魅力的です。第2楽章は落ち着いた静謐さが魅力だし、終楽章は緻密さよりむしろ勢いがよろしくて、でも細部を流したところもない。わかりやすい作品に仕上げました、といったところでしょうか。(2002年9月20日)

 


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written by wabisuke hayashi