Bartok ピアノ協奏曲第2番/第3番/
弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
(エディット・ファルナディ(p)/ヘルマン・シェルヘン)


URANIA URN 22.303 Bartok

ピアノ協奏曲第2番
ピアノ協奏曲第3番

エディット・ファルナディ(p)/ヘルマン・シェルヘン/ウィーン・フィル(国立歌劇場管弦楽団?1953年)

弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽

ヘルマン・シェルヘン/スウェーデン放送管弦楽団(1954年)

URANIA URN 22.303

 Edith Farnadi(1921-1973洪牙利)はその存在、名前さえ初耳でした。Hermann Scherchen(1891ー1966独逸)はバロック古典作品〜同時代の作品も熱心に擁護して、同年生まれのBartokの音楽も当時未だ最先端だったかも、そんなレパートリーでおそらくウィーン・フィルにも登場していたのですね。(オーケストラ表記はウィーン国立歌劇場管弦楽団というのも有)音質は時代相応、さほどにクリアなものでもありません。ピアノ協奏曲はなかなかアツい演奏でした。

 ピアノ協奏曲第2番(1933年作曲者初演)はピアニストにとって難しい作品なんだそう。第1楽章「Allegro」の伴奏は弦楽器抜き、華麗なる金管前面に、暴力的なピアノは叩きつけるような打楽器的扱い顕著な開始。ピアニストのタッチは力強くテクニックに曖昧さの感じられないもの。緊張感切迫感に一気呵成に聴かせてくださいます。(9:19)第2楽章「Adagio」は弦楽器+打楽器のみの伴奏に不気味な静謐が続いて、ティンパニは遠雷のように、つぶやくピアノと呼応します。中間部の「Prest」は細かい快速音形に超絶技巧を要求され、激しい不協和音は両手の掌を使うんだそう。繊細デリケートなピアノはやがて激高してティンパニは大活躍!(13:13)第3楽章「Allegro Molt」はようやくフル・オーケストラが参入して、土俗的な舞曲が疾走するカッコ良いフィナーレへ。管楽器と打楽器の華やかなリズムに支えられて、ピアノの猛烈にアツい疾走は続きます。ラストの金管炸裂は圧巻のダメ押し!(5:23)

 文句なしの完成度だけれど、これでもうちょっとクリアな音質だったらなぁ、残念。

 ピアノ協奏曲第3番(ラスト部分未完/1946年ジェルジ・シャンドール初演)は第1番第2番に比べて平易な明るさが感じられる作品。第1楽章「Allegretto」はわかりやすい旋律に落ち着いた味わい、暴力的な不協和音連続に非ず、いつの間にか終わっていく感じ。(6:42)第2楽章「Adagio religioso」は宗教的安寧を感じさせる静謐に懐かしい緩徐楽章。弦のみの伴奏に淡々とつぶやくようなソロも寂しく繊細に美しいところ。中間部は剽軽な木管が踊りだして、可憐な雰囲気はかつての”不気味さ”とは一線を画して晩年の枯れた心情を反映しておりました。(9:47)第3楽章「Allegro vivace」も民族的な舞曲だけど、表情は明るく大太鼓の迫力に支えられて開始。雰囲気は「管弦楽のための協奏曲」フィナーレに似て、破壊的な暴力に非ず、優雅な旋律があちこち顔を出します。ピアノと管弦楽の有機的な緊張感は続いて、テクニックの破綻はありません。(6:49)

 スウェーデン放送管弦楽団はスウェーデン放送交響楽団の前身。これはライヴかな?会場ノイズが入ります。弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽も恐ろしげに厳しい作品と思います。初演は1937年(パウル・ザッハー)第1楽章「Andante tranquillo」は弱音器付きヴィオラの曇った音色から、弦楽器が妖しく絡み合うような不吉な音楽に、やがて打楽器が参入して力強くクレッシェンドする圧巻の集中力演奏、やがて儚いチェレスタが彩りを添えるBartokの天才。(6:25)第2楽章「Allegro」硬質なリズムがバロック風。弦が疾走して(バルトーク・ピチカート登場!)打楽器がくさびを打ち込むところ、これもカッコ良いなぁ。音質さておき(まずまず)これは圧巻の勢いと緊張感に充ちてドキドキする演奏です。チェレスタと打楽器の扱い、色彩感とリズムのテンション、粗々しいアッチェレランドも素晴らしい。(7:10)

 第3楽章「Adagio」まるで日本の拍子木のような開始、ティンパニの特殊な奏法?にたっぷり恐ろしい幽霊屋敷風緩徐楽章、最高。(7:38)第4楽章「Allegro molto」ティンパニの一撃から弦の騒がしいピチカート?を経、リズミカルな舞曲が疾走するノリノリのフィナーレ、なんという情熱、共感。チェレスタが唯一の色彩を添えて、その扱い対比の絶妙なこと!(7:13)

 ちょいとアンサンブルは粗いけれど、これはシェルヘンの同時代音楽へのアツい共感を堪能できる、立派な記録でした。

(2021年9月18日)

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written by wabisuke hayashi