ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団(1961年ルガノ・ライヴ)


ERMITGE時代のジャケットDOCUMENTS/membran(AURA)  223602-CD2 10枚組1,770円にて購入したウチの一枚
ジョン・バルビローリ編「エリザベス王朝の組曲」

Byrd(1954-1623)「ソールズベリー伯爵のパヴァーヌ 」
(作曲者不明)「アイルランドの嘆き」
Farnaby(1560-1620)「おもちゃ」「ジャイルス・ファーナビーの夢」
Bull(1562-1628)「王の狩」

Vaughan Williams

交響曲第8番ニ短調

Rimsky-Korsakov

スペイン奇想曲

Chabrier

交響詩「スペイン」

DOCUMENTS/membran(AURA) 223602-CD2 10枚組1,770円にて購入したウチの一枚

 ERMITAGE/AURAはもともと良心的価格の貴重なライヴ音源だったが、2006年激安ボックスものとして集成され、再発されました。ワタシは既存所有分数枚をオークションで処分しつつ、再購入の財源としたものです。「GREAT CONDUCTORS」10枚組は1960年代までに活躍した往年の指揮者を集めたもので、白眉はこのジョン・バルビローリ。手兵ハレ管弦楽団(マンチェスター)が、スイスに訪問したときのライヴ音源(スイス・イタリア語放送)でしょう。目の覚めるような!録音とはいかぬが、好事家向けとばかりは言えない、それなりの音質となります。わりと聴きやすいほうか。

 旧き良き大英帝国時代の音楽が、甘美濃厚なるメルヘンに変貌する「エリザベス組曲」。1969年ベルリン・フィルとのライヴも存在するから、バルビローリ得意のレパートリーだったんでしょう。古式床しい旋律は(例の如し)纏綿と叙情的・雰囲気タップリに表現されます。四角四面に集中した超・緻密アンサンブルじゃないけどね。「王の狩り」のホルン・アンサンブルはいかにも楽しげ。

 Vaughan Williams 交響曲第8番ニ短調は彼の十八番(おはこ/彼に献呈され、1956年初演もした)であって、自信に溢れた語り口がまったくお見事。手持ち1956年録音よりいっそうの雄弁とスケール、ライヴ故の熱気を増しております。日本では人気は出そうもないが、激昂せず、リズムを強調しない、諄々と(しつこく)語るような世界。少々馴染みにくい内省的な旋律(表現は雄弁!)に馴染むと、圧倒的快感がやってまいります。

 やや茫洋としてつかみ所のない印象のある交響曲中、これは30分に充たない、古典的な佇まいの作品となります。「ファンタジア」(主題のない変奏曲)/「行進曲風スケルツォ」(管楽器のための)/「カヴァティーナ」(弦楽のための/この場合、抒情的な旋律を表現の主体とする小品という意)/「トッカータ」(ここでは、即興的で自由な音楽の意)、5人の打楽器奏者が加わるにしてはそう派手な作品とは言い難いが、バルビローリの表現はやはり”濃厚甘美”であって、(他の穏健派演奏に馴染んでいると)同じ作品とは俄に気付かないほど。英国風含羞ではなく、独墺系がっちり構成感でもない、まさに横流れの纏綿たる歌の連続であります。

 おそらくは当夜のコンサートでは、協奏曲が入ったんじゃないか?アンコールっぽい「スペイン奇想曲」「スペイン狂詩曲」は、アツい、のりのりの大爆発。会場聴衆のどよめき、熱気が伝わってくるようでした。この一枚収録作品では、音質問題乗り越えヴェリ・ベスト間違いなし。

(2008年7月18日)


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written by wabisuke hayashi