Bach カンタータ第213/214番
(ペーター・シュライヤー/ベルリン・ゾリスデン/ベルリン室内管弦楽団)


Bach

カンタータ第213番「岐路のヘラクレス」
カンタータ第214番「太鼓よとどろけ、ラッパよ響け」

マティス(s)ヴァトキンソン(a)ピルツェッカー(a)ハマリ(a)シュライヤー(t)ローレンツ(b)アダム(b)
ペーター・シュライヤー/ベルリン・ゾリスデン/ベルリン室内管弦楽団

CCC 0001512CCC 1980年前後録音  8枚組2,190円で購入したウチの一枚

 2000年はBach YEARだったそうだけれど、個人的には2001年に入ってからカンタータ三昧なんです。そのキッカケを作ってくれたのが、このCD。挟んであったレシートによれば、2000年7月11日購入。「おっ、安いじゃん」と珍しく地元タワーレコード岡山店で見かけたもの。いっきにハマって、目覚めました。

 結局、BRILLIANTでカンタータは60枚ほど揃えたのですが、小編成の古楽器、スッキリとしたリズム感に打ちのめされ、現代楽器の演奏がうっとおしく感じたりしたものです。でも、問題は楽器ではなく、演奏の質そのものであることは当たり前。この世俗カンタータばかり8枚集めてくれたシュライヤー盤は、もちろん現代楽器。でも、なんと溌剌として、躍動するような楽しさに溢れていることか。

 「岐路のヘラクレス」というのは、きっとなんかの寓話(音楽劇となっている)だと思うのですが、いつものことながら言葉がわからない。しかも45分以上かかる長い曲。でも、これが楽しいんですよ。どこをとっても。第3曲の牧歌的な旋律の繰り返しに乗った、アルトのしみじみとした歌唱(ヴァトキンソンでしょうか)の味わい。第5曲における素朴なオーボエの音色、再び登場したアルトとの絡みあい、シュライヤーのレシタティーヴォはいつもの美声。

 第7曲は、速いテンポで哀愁の旋律を、まずオーボエが、そしてヴァイオリン・ソロが、続いて通奏低音が追いかけるフーガ。その旋律をシュライヤー自らが歌います。その緊張感、高揚感。第9曲のアルトのアリアも、どこかで聴いたことがある馴染みの旋律。第11曲のアルトとテナーの楽しい2重奏もきっと誰もが知っているはず。

 第12曲のバスのレシタティーヴォの立派な貫禄、最終第13曲は全員の喜ばしい合唱でした。


 「太鼓よ」は、クリスマス・オラトリオの第1・3部と共通部分が多い。「トン・トン」とティンパニが叩かれ、華々しいトランペットが鳴り響くと祝祭気分が一気に溢れます。鋭くも味わい深いトランペットは表記はないけれど、名人ギュトラーでしょうか。リズムがしっかりしていること、合唱の充実ぶりも文句なし。

 さっそく、シュライヤーの朗々たる雄弁なレシタティーヴォが聴けました。表情の細やかなこと、劇的なこと。第3曲はやさしいフルートのオブリガートに包まれて、マティスが可憐に歌います。第5曲目はオーボエとともに、ハマリがしっとりもの哀しい。

 第7曲は、クリスマス・オラトリオでもお馴染みの、雄壮なトランペットとバスの掛け合いがカッコいい。テオ・アダムも貫禄充分だけれど、トランペットの輝かしい妙技性に打たれます。(こんなのを聴くと現代楽器もまんざらじゃない、としみじみと思う)ラスト第9曲は、クリスマス・オラトリオ第3部冒頭と同じ旋律です。(これ、ワタシが一番気に入っている旋律)本当の幸せ、を感じます。

 言葉はなにもわからないが、人の息遣い、旋律そのものが心を語っているような音楽。録音は暖かくて、明快。アナログ再末期の優秀録音。ワタシの感想は、ほとんど抽象的な表現ばかりで、ほかのCDを聴いても同じような文章になるかも知れません。こんな世界が200曲以上揃っているかと思うと、もう最高の気分でした。(2001年3年2日)


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written by wabisuke hayashi