Bach,Schumann,Rachmaninov,1984-1989
(エフゲニー・キーシン(p))
(伝)Bach
シシリエンヌ 変ホ長調 BWV.1031
Schumann
アラベスク ハ長調 作品18(以上1989年2月26日録音)
Rachmaninov
リラの花 作品21-5/前奏曲 嬰へ短調 作品23-1/イ短調 作品32-8/変ト長調 作品23-10/音の絵 作品39(6曲)(以上1986年5月23日録音)
Szymanowski
練習曲 変ロ短調 作品4-3(1989年5月28日録音)
Kissin
インヴェンション第1番/インヴェンション第2番(1984年ステレオ録音)
エフゲニー・キーシン(p)
Brilliant 8528/2
Evgeny Kissin(1971ー)も立派な中年、デビュー頃の可愛らしい姿の印象が初々しくて、Chopinのピアノ協奏曲は1984年12歳のライヴ、ストレートで爽やかな演奏でした。これは12歳から17歳頃の録音、旧ソヴィエット時代の録音にはしばしば泣かされるけれど、このくらい時代が進むと、ちゃんとした音質に仕上がっております。ライヴ音源の寄せ集め米Pipeline原盤のライヴ音源は、時にメチャクチャなコンピレーションに驚くこともあるけれど、これはようできた配列、まるで演奏会に臨んだみたい。各楽曲に暖かい拍手も入ります。
落ち着いた「シシリエンヌ」を冒頭に配して、Schumannの「アラベスク」(アラビア風)はしっとり甘く、浮き立つような旋律が歌います。聴衆は最初のわずか10分、すっかり夢見るような切ない旋律に心奪われました。若いピアニストには技巧が先に立って、味わいは後回し、みたいなことも稀にあって、キーシンには清潔なタッチに、切ない情感を読み取ることも可能です。
Rachmaninovは硬派なリヒテル辺りが刷り込み。ホロヴィッツとかベルマン、骨太ごついオッサンの演奏ばかり聴いていて、こちら1曲め「リラの花」からたっぷり甘く可憐。劇的に暗く重い印象のある前奏曲集は、切なく哀しく、それは軽快なタッチに表現されました。イ短調 作品32-8は快速、みごとな技巧!音の絵 作品39(6曲)には脂っこい粘性を感じることもあって、14歳少年の響きは濁らず、劇性より寂寥、落ち着いたバランスを感じさせるもの。
「劇的に暗く重い」「脂っこい粘性を感じさせる」そんな先入観に、ピアノ独奏曲を敬遠気味だったけれど、若いキーシンと出会ってすっかりRachmaninovのファンになりました。イメージはChopinでっせ。音の絵〜第3曲ホ短調はたしかに露西亜風旋律なのに、軽快なリズムにその風情を感じせます。4曲目変ホ短調にはもっと泥臭いテイストが必要なのかも。イ短調の細かいパッセージの処理は圧巻!
Szymanowskiの練習曲は初耳。懐かしい民族的な(民謡のような)余韻漂って、寂しくも劇的な5分間、足取りしっかり力強く、やがて静かに終わりました。ラスト自作の2曲はアンコールでしょう。可憐な、儚い別れのようなBach風作品であります。 (2017年7月23日)
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