Bach カンタータ 「われらが神は堅き砦」 BWV80/
カンタータ「心と口と行いと命もて」 BWV147
(マーティアス・アンタル/ファイローニ室内管弦楽団/ハンガリー放送合唱団)


NAXOS 8.550642 Bach

カンタータ 「われらが神は堅き砦(Ein feste Burg ist unser Gott)」 BWV80
カンタータ「心と口と行いと命もて(Herz und Mund und Tat und Leben)」 BWV147

マーティアス・アンタル/ファイローニ室内管弦楽団/ハンガリー放送合唱団/イングリット・ケルテシ(s)/ヨジェフ・ムック(t)/ユディト・ネーメト(a)/イシュトヴァーン・ガーティ(b)

NAXOS 8.550642 1992年録音

 20年前の恥ずかしい一文が残って、初期NAXOSのCDは売り払ったとありました。この2曲は著名であって、久々に懐かしさとともに拝聴したもの。この2作品は誰でも知っているような名曲中の名曲だけど残念、自分は人生六十有余年、日本語一筋に過ごしてガイコク言語不如意、幼少時代熱心にカソリックの幼稚園に通って小学校3年生くらいまで日曜礼拝にも通っていたけれど、それはお友達に会うため、敬虔な気持ちのみ残して無神論者に育ちました。キリスト教の素養に欠けて、もちろん独逸の四季やら民族的な習慣もほとんど知らぬまま、Bachの声楽作品にちょっとずつ馴染んでおりました。

 D.Scarlattiの膨大なるソナタ集にも似て、拝聴するたび”嗚呼エエな。美しいな”そう感じつつ、このカンタータも全貌を理解するほど個別聴き込んでおりません。アーノンクール/レオンハルト全集以来古楽器による演奏が主流となって、その闊達なリズム感、素朴粗野な響きを愛するけれど、ド・シロウトには結局なんでも良いんです。ヘルムート・リリングの演奏を聴いても必ず感動は間違いない。Matyas Antal(1945-洪牙利)、Budapest Failoni Chamber Orchestra(1989年創立モダーン楽器)とも知名度に薄いけれど、20年ぶりの拝聴に感動の質はいささかも衰えないことに気付きました。音質だって豊かな残響に充たされて秀逸。声楽の水準など云々できないけれど、誠実なソロ、合唱団のバランスになんの不満も感じません。

 BWV80Mendelssohnの交響曲第5番ニ長調「宗教改革」に旋律を引用しております。第1曲 「われらが神は堅き砦」は躍動する混声合唱に鋭くトランペットが参入して開始しました。この声楽の水準は充実して器楽アンサンブルとのバランスにムリがないもの(力みや絶叫がない)。第2曲 アリア「神より生まれし者はすべて」はソプラノとテナーの有機的な掛け合い、前曲からの推進力が続いて躍動しておりました。第4曲 アリア「来たれ、わが心の家に」は清楚に哀しげなソプラノ・ソロ。オブリガートはシンプルなオルガンとチェロのみ。第5曲 コラール「悪魔が世に満ちて」これは第1曲第2曲を連想させる闊達な合唱はシンプルな下降音形+(控えめな)器楽でした。

 第7曲 「幸いなるかな」はアルトとテナーの優雅な二重唱、オブリガートはオーボエ・ダ・カッチャとヴァイオリン。ここはこの作品のもっとも美しい瞬間と感じました。第8曲コラール「世の人福音を蔑ろにせしとも」はこれもシンプルな下降音形による合唱、「マタイ」も連想させます。真摯な思いが前編に伝わる名曲でした。

 BWV147第1部第1曲「心と口と行いと命もて」はトランペットの控えめなソロに導かれて清潔闊達な合唱が喜ばしげに、陰影豊かに歌い出します。素晴らしい旋律に涙が出そうなほど。第3曲 アリア「おお魂よ、恥ずることなかれ」はアルトのソロ、現在ではカウンターテナーが担当するのでしょうか。オーボエとチェロのオブリガートが寂しげに効果的。Bachの作品は声楽ソロに絡む器楽を楽しみにしております。第5曲 アリア「イエスよ、道をつくり給え」は清楚なソプラノ・ソロとヴァイオリン・オブリガートがシミジミしっとりと哀しく絡み合いました。

 そして万感迫る第6曲 コラール「イエスはわたしのもの(Wohl mir, das ich Jesum habe)」は誰も知っている敬虔な合唱。Bachはなんでも好きだけど、これが一番旋律ですよ。出会いはストコフスキーでした。オリジナルの声楽がいっそう美しいのは当たり前。

 第2部に入って第7曲 アリア「助け給え、イエスよ」はテナーの明朗な歌にチェロがしっかり細かい音形で絡みました。第8曲 アルトのレチタティーヴォ「全能にして奇跡なる御手は」はオーボエの旋律が印象的なもの。第9曲 アリア「われは歌わんイエスの御傷」はトランペットが優雅軽快にバスの雄弁闊達なソロを支えました。ラスト第10曲 コラール「イエスは変わらざるわが喜び(Jesus bleibet meine Freude)」は先のNo.1胸に染みる名旋律の再来でした。

 きっとド・シロウト(=ワシ)はBachのカンタータ、どの作品でもどんな演奏でも感動するやんやろな、きっと。

(2021年12月11日)

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written by wabisuke hayashi