Bach ブランデンブルク協奏曲全6曲
(ギュンター・ケール/マインツ室内管弦楽団)


これはLP時代のデザイン Bach

ブランデンブルク協奏曲
第1番ヘ長調BWV1046/ 第2番ヘ長調BWV1047/ 第3番ト長調BWV1048/ 第4番ト長調BWV1049/ 第5番ニ長調BWV1050/ 第6番 変ロ長調BWV1051

ギュンター・ケール/マインツ室内管弦楽団

VOX ACD-8046/ACD-8047 1958年?録音

 バロック音楽はここ50年ほど、演奏スタイルが変遷したものです。レオンハルト/ブリュッヘン/クイケン兄弟による1976-77年の古楽器演奏と出会って以来、小編成によるキビキビとしたリズムが自分の基準となりました。これはいささか昔の、しかも知名度の少ない音源、Gunter Kehr (1920ー1989)なんて誰も知らんかも。 けっこう録音は多数。昔若く貧しかった頃、廉価盤ばかり追い求めてVOXBOX音源とはお馴染み、現在ならNML拝聴が可能です。詳細な録音情報、ソロの特定もできません。1959年にはLPが出ているようだから、その前の録音とは信じられぬほど!かなり瑞々しいステレオ録音であります。超廉価盤「クアドロマニア」4枚組でも出ておりました。

 ブランデンブルク協奏曲はお気に入り中のお気に入り作品、入手可能であればなんでも聴きたいもの。モダーン楽器古楽器問わず、例えばカラヤンの演奏もたっぷり愉しんでおります。これは時代的にもちろんモダーン楽器、しかし大仰に大柄な時代錯誤スタイルに非ず、よう歌って慌てず、しっとり豊かな響き、各パート人じゃないにせよ編成小さめなバランス演奏であります。21世紀に価値ある演奏でしょう。

 第1番ヘ長調BWV1046はホルンやオーボエが活躍する、全曲中もっとも大きな作品。狩りの風情を感じますね。第1楽章「Allegro」(4:24)第2楽章「Adagio」(4:20)第3楽章「Allegro」(5:07)第4楽章「Menuett-TrioーPolacca」(3:56ー4:09)。弦の詠嘆が(現代の耳には)ややウェットに感じるけれど重くはない、ホルンもオーボエも朗々としてスケール大きく、高い技量を誇ります。終楽章は途中テンポのケジメもなかなか、ややノンビリとして各部分ラストが必ずルバートするのは懐かしい昔風スタイル。

 第2番ヘ長調BWV1047のキモはトランペット・ソロ。これは録音のバランスか、トランペットはあまり突出しません。あまりスムースに上手過ぎず、やや粗野に苦しそうな高音もエエ感じ。昔の録音ではフルートを使っていたものもあったけれど、ここではちゃんとリコーダー(ちょいと存在目立ち過ぎか)。しっかり地に足をつけたテンポの第1楽章「Allegro」(5:19)ヴァイオリン・ソロはギュンター・ケール自身らしい。トランペット抜きの静かな第2楽章「Andante」はシンプルな主題が追いかけっこして、美しく絡み合いました。ラスト名残惜しくたっぷりとテンポを落とすのはお約束。(3:47)第3楽章「Allegro assai」ここは各ソロ楽器によるフーガですね。力みとは無縁のゆったりとした適正テンポによるノリであります。(3:03)

 第3番ト長調 BWV1048は練り上げられた弦楽合奏のみ。この作品が一番人気かも。リズミカルの躍動する第1楽章「Allegro」(実際は楽譜にテンポ表記はないらしい)シンプルな音型が躍動して絡み合います。ここも力みなし、悠々とした歌、バランステンポを以て慌てない。重すぎない。陰影に充ちたBachの旋律和声の真骨頂であります。(6:32)第2楽章「Adagio」はなぜかふたつの和音のみ、ここにどんなカデンツァを持ってくるのか愉しみですよね。ここはかなり長い(悲劇的)チェンバロのソロが入って1:49也。第3楽章「Allegro 」は12/8拍子がオモロい躍動、これもフーガですよね。ここも味わい深い弦がしっとりとしたもの。そしていつものお約束、ややルバートして終了。(5:10)

 第5番ニ長調 BWV1050はチェンバロ協奏曲。ここも落ち着いた中庸のテンポが快いもの。フルートは太い音色、いかにも独逸風の存在感でっせ。先の第3番にも登場したチェンバロは、時代的にやや金属的な音色だけど、時代錯誤のようなデーハー大音量に非ず。第1楽章「Allegro」の長大なるカデンツァはノリノリの見事なもの。ロックバンドのライヴで延々とギター・ソロが入って、ラスト満を持してバンド全員で息を合わせて復活!あの雰囲気のタメもあります。(10:44)第2楽章「Affettuoso(優しい感情を込めて)」はヴァイオリン、フルート、チェンバロのみの三重奏、切々とした情感のもの哀しい掛け合い。(5:33)第3楽章「Allegro」は付点のリズミカルなフーガが優しく、晴れやかに躍動しました。(5:56)

 第4番ト長調BWV1049は2本のリコーダーが可憐な色を添えて活躍する作品。かつては会場バランスの問題か、フルートで代用している演奏もありました。ここではもちろんリコーダー(ネヴィル・マリナーはオクターブ上げて演奏していたっけ)。第1楽章「Allegro」かなり難しそうな生真面目厳格なヴァイオリン・ソロも大活躍します。この楽章も落ち着いた風情が牧歌的作品に似合っているでしょう。(7:41)第2楽章「アンダンテ」は悲劇的な詠嘆が続くところ、まるで受難曲の一部、リコーダーが嘆きの歌風に聴こえます。(3:51)第3楽章「Presto」は低弦から躍動的な開始、これもフーガでっせ。途中伴奏抜きでリコーダーとヴァイオリン・ソロが絡み合うところ、まるで天空の舞のよう。やがて慌てぬテンポに熱が加わってくる・・・のはいつものこと。(5:43)

 ラスト第6番 変ロ長調BWV1051は編成にヴァイオリンを欠いて、いかにもジミなサウンド。第1楽章「Allegro」はユーモラスな躍動するカノンですね。(6:52)じつは第2楽章「Adagio ma non tant(緩やかにしかし甚だしくなく)」こそこの作品のキモ、全6曲中でも屈指の美しいところ。悠々と歌う子守唄のような・・・各パートが次々と優雅な旋律を受け渡して(とくにチェロの動きに)陶然としました。(6:09)第3楽章「Allegro」は無骨な中低音楽器がシンコペーションして溌剌と躍動します。ここも低音の動きが活発に、忙しく下支えしておりました。ここもフーガかな?(8:18)

(2018年3月26日)

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written by wabisuke hayashi