Bach ブランデンブルク協奏曲全曲
(ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団のメンバー)


VOX CDX2-5519 Bach
ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047
ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV1049
ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050
ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調BWV1046
ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048
ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051

ヤッシャ・ホーレンシュタイン/ウィーン交響楽団のメンバー
Walter Schneiderhan (Solo Violin); Dimiter Tortscanoff (Violin); Paul Trimmel (Violin); Ernest Opawa (Violin); Rudolf Lindner (Violin)
Paul Angerer (Solo Violin, Violino piccolo, Harpsichord, 2nd Recorder) Karl Troetzmueller (Viola, 1st Recorder)
Josef de Sardi (Viola) Viktor Goerlich (1st Cello) Nikolaus Harnoncourt (1st Viola da gamba) Hermann Hoebarth (2nd Viola da gamba) Emil Kremer (Double-bass)
Camillo Wanausek (Flute)
Friedrich Wachter (Oboe) Rudolf Spurny (2nd Oboe) Josef Koblinger (3rd Oboe)
Leo Cermak (Bassoon)Franz Koch (Horn) Karl Buchmayr (Horn)
Adolf Holler (Ttrumpet) Josef Ortner (Trumpet)
Josef Nebois (Harpsichord)

VOX CDX2-5519 1954年録音

 クラシック音楽は保ちがよろしくて、1980年ディジタル録音以降は体感”新録音”、1955年以降アナログ録音の時代でもびっくりするほど現代に現役!音質も存在します。むしろここ最近、録音経費節約のためライヴ録音を編集して発売するから、粗製濫造、仕上げの粗い音源も時に見掛けます。演奏スタイルは別物、とくにバロック音楽は(ここにも参加する)ニコラウス・アーノンクールやらクリストファー・ホグウッド辺りを嚆矢として(概ね)ディジタル時代以降古楽器演奏が隆盛を迎え、すっきりした小編成リズムにキレのある演奏が主流となりました。

 大昔のバロック演奏はたいてい大仰に重過ぎて、21世紀の耳には少々ツラいもの。古楽器演奏も日々技術的な洗練が進んでおります。じゃ、この1954年(モノラル録音)は?史上初の古楽器録音!(らしい)と力んでも音質ボロボロ、技術的にヘロヘロでは資料的価値しかない、市井の音楽ファン(≒ド・シロウト=ワシ)には縁の薄いものになってしまいます。

 Jascha Horenstein (1899-1973)は往年の巨匠、こんな意欲的なプロジェクトに参加していたのですね。結論的に音質極めて良好、演奏スタイルも昔風大仰なものに非ず少人数、現代のリズム先鋭なものではないけれど、違和感のないスッキリ引き締まったスタイル、マイルドな音色に感銘を受けました。これは現役の完成度でしょう。メンバーも(ヴォルフガングの弟)ヴァルター・シュナイダーハン(1901ー1978)、カミロ・ワナウゼク(fl)、フリードリヒ・ヴェヒター(ob)、フランツ・コッホ(hr)など往年のウィーンの名人がずらり。パウル・アンゲラーは指揮者として活躍もして、ここではヴァイオリン、ヴィオリーノ・ピッコロ、チェンバロに加え、リコーダー迄担当して八面六臂の活躍。第1番のソロ(ヴィオリーノ・ピッコロ)は彼なのかな?

 ブランデンブルク協奏曲第2番ヘ長調BWV1047からスタート。第1楽章と第3楽章(Allegro assai)にピッコロ・トランペット(アドルフ・ホラー)大活躍する場面となります。Karl Troetzmueller?のリコーダーとのバランスがキモ、アドルフ・ホラー(tp)(1929ー)はソロのレコードも出ていて、古楽器(?)による史上初の録音とのこと。現代のトランペットは輝かしく音量も大きくて、他のソロとバランスが難しいところ、ここでは線が細く控えめな響き(技巧はお見事)他のソロとウェル・バランス、第2楽章(Andante)はトランペットを除く各ソロが優しく歌い交わしました。終楽章は走らず、重くならず、すっきり明晰な響きはまったく現役でしょう。

 ブランデンブルク協奏曲第4番ト長調BWV1049は(他の楽器の兼任する)リコーダー二人の清廉な響き(余技とは思えぬ技術の冴え)+ヴァイオリン・ソロの超絶技巧がポイント。ヴァルター・シュナイダーハンかな?柔らかくも古雅な響きは古楽器なのかも。第1楽章「Allegro」は落ち着いた雰囲気にバックや低音の存在感が弱く、ソロばかり目立つ録音であります。第2楽章「Andante」ホ短調の劇性を強調せず、リコーダーが自在に歌うところ。第4楽章「Presto」はフーガ、リコーダーが登場すると華やかであり、前楽章ではお休みしていたヴァイオリン・ソロもともに大活躍いたしました。

 ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調BWV1050。ここも余裕のリズムな優雅な風情。ここに名人カミロ・ワナウゼク(fl)(1906ー1999)登場。これも古楽器?華やかなモダーン・フルートとは雰囲気の違う柔らかくも深い音色、ヴィヴラートはけっこう掛けてますね。(ヴァイオリンも同様)ヨーゼフ・ネボワ(1913-1981)がチェンバロ・ソロですか?世間ではこの時期ランドフスカ(その弟子筋のカークパトリックも)風盛大に鳴り響くモダーン・チェンバロを使っておりました。ここは最近馴染みの控え目な響き+技巧は優れて控え目な主張。第2楽章「Affettuoso」ソロ楽器のみの静かな掛け合い、終楽章「Allegro」の弾むようなリズムは余裕あるもの。

 ブランデンブルク協奏曲第1番ヘ長調BWV1046はホルンがキモでしょう。フランツ・コッホ(1910-1982)、カール・ブッフマイヤ?この辺りは皆ウィーンの名手、高音のコントロールも生々しい活躍です。(とくに第3楽章「Allegro 」)全体に牧歌的のんびりした風情が漂って、オーボエ、ヴァイオリン(第4楽章ではウェット)もよく歌っております。昔ありがちだった大仰なルバートは出現しません。世間では第5番(チェンバロ・ソロ)第3番辺りが人気みたいだけど、ワタシはこの第1番(狩りの風情)が大好き。

 ブランデンブルク協奏曲第3番ト長調BWV1048は弦楽合奏のみ。小編成によるきびきびした、テンポは中庸、古雅な響きのアンサンブルであります。第2楽章「Adagio」は素っ気なくもホ短調の二つの和音のみ、ここは最近色々趣向を凝らしてますよね。第3楽章「Allegro」は第1楽章とテンポ雰囲気ともまったく変わらない。

 ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051。若きアーノンクールが参加しているのはここでしょう。第1楽章はは溌剌として、これは全曲中出色(過激なほどの)の推進力がありました。第2楽章「Adagio ma non tanto」はガンバ抜け、纏綿とした豊かな歌が続きます。第3楽章「Allegro」は晴れやかな表情豊か、荒々しいほど快活な風情が戻りました。

(2017年4月30日)

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written by wabisuke hayashi