Arriaga 弦楽四重奏曲第1番ニ短調 / 弦楽四重奏曲第2番イ長調 /
弦楽四重奏曲第3番 変ホ長調(カメラータ・ボッケリーニ)


NAXOS 8.557628 Arriaga

弦楽四重奏曲第1番ニ短調
弦楽四重奏曲第2番イ長調
弦楽四重奏曲第3番 変ホ長調

カメラータ・ボッケリーニ

NAXOS 8.557628 2003年録音

 Juan Crisostomo Jacobo Antonio de Arriaga y Balzola(1806-1826/西班牙バスク人とのこと)は”スペインのモーツァルト”との異名有(誕生日も同じ )著名なところではBerlioz(1803-1869)、Glinka(1804-1851)の時代の人でしょうか。わずか19歳での早逝は残念、いくつか拝聴した作品は珠玉の美しさを誇りました。この3曲はいずれも22−23分ほど。古楽器らしいけど、技巧的にはまったく洗練されてスムースそのもの。

あながち看板に偽りはなくて、”短調哀愁のMozart ”風情なる濃密甘美な作風(もちろん半生記時代差有)に心奪われます。って、旋律に馴染みがあるのはおそらく、FMエア・チェック・カセットにて若い頃に聴いていたせいでしょう。古楽器?(perform on authentic Italian instruments≒イタリアの歴史あるエエ楽器使うているよ、という意味?)ほんまか、そのわりにヴィヴラートあるけれど。軽快なリズム感、清潔な浪漫(時に西班牙らしいリズムも)香る、情感豊か魅惑の旋律溢れて延々連続、これが二十歳前の青年の作とは俄に信じがたい完成度、68分夢のように過ぎ去ります。名前から類推してイタリア人主体のメンバー(Massimo Spadano, Mauro Rossi (v), David Quiggle (va), Luigi Piovano (vc))はよく歌って、歯切れのよいリズム感、美しい音色を満喫させて下さいました。(「音楽日誌」2013年10月)
 ・・・上記に言い尽くされた素晴らしき一枚。Camerata Boccheriniの演奏はこの一枚しか探せないのはもったいない!ほど充実してヴィヴィッドな演奏であります。陰影に富んで才気煥発、上記にコメントされる”短調哀愁のMozart ”風情なる濃密甘美な作風とは第1番 ニ短調のことであって、Mozart 弦楽五重奏曲ト短調K.516にとても良く似た哀愁の旋律であります。グリュミオー等の演奏(1973年)と比較して感じたのは、Arriagaの素直な快活さとヴィヴラートが控え目であること。いずれ清潔、よう歌っても甘美具合は比較的さっぱりとして素朴。第2楽章「Adagio con espressione」の晴れやか安寧な表情、第3楽章「Menuetto - Allegro - Trio piu moderato」不安が交差する表情、第4楽章「Adagio - Allegretto」の楚々として哀しみが疾走〜途中詠嘆の風情も名曲でっせ。

 第2番イ長調は快活溌剌な第1楽章「Allegro con brio」からMozart 弦楽五重奏曲ハ長調K.515を連想いたしました。細かい音形はデリカシーと愉悦に充ちて躍動します。第2楽章「Andante con variaciones」の変奏曲こそこの作品の白眉、Haydn風シンプルな主題は変幻自在に陰影豊かに、しっとりと変化して懐かしさ限りなし。第3楽章「Menuetto - Scherzo - Trio」軽妙なリズムにも陰影有、終楽章「Andante ma non troppo - Allegro」に於ける名残惜しそうな短い序奏から、快活素直軽妙な世界が続きました。

 第3番 変ホ長調。これは雰囲気変わって第1楽章「Allegro」から陰影に富んで力強いもの。表情は時に暗転し、心象風景は複雑に不安が漂います。第2楽章「Pastorale - Andantino」も同様、Pastraleというには全体に寂しげ〜激昂する場面も劇的な力強さ有。第3楽章「Menuetto - Scherzo - Trio」は更に哀しみ怒りが深まり、Mozart 弦楽五重奏曲ハ短調K.406 (516b)を連想いたしました。中間部はちょぴり息抜きの付点のリズムを挟みました。終楽章「Presto agitato」の細かい音形が快活に疾走する締め括りも、ちょっとした陰を感じさせるもの。

(2016年10月30日)

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written by wabisuke hayashi