R.Strauss アルプス交響曲/歌劇「薔薇の騎士」組曲
(クリスチャン・ティーレマン/ウィーン・フィル)
R.Strauss
アルプス交響曲
歌劇「薔薇の騎士」組曲
クリスチャン・ティーレマン/ウィーン・フィル
DG 4695192 2000年ライヴ
油断すると昔懐かしい音源ばかり聴いてしまうことになりがち。現役世代もちゃんと聴いてあげなくては・・・と思ったらChristian Thielemann(1959-)はもう既に還暦近くて若手とは呼べぬ世代、この”最新録音”(そう自分には思える)だって17年前じゃないの。例えばBeethovenの交響曲全集録音、バイロイトで「リング」担当、ハインリヒ・ホルライザーの弟子筋とか、典型的な独墺系カペルマイスター王道を歩んで現在はドレスデンにて活躍しているらしい。じつはあまり彼の音源は聴いていないんです。
自然描写の上手さは類例を見ないR.Strauss。LP時代に「英雄の生涯」(オーマンディ/1960年)を聴いていたけれど、一般に捕まえどころのない音楽、難解とさえ感じることも多くて、素直に拝聴機会が増えたのは意外と最近でした。作曲者自演の記録も貴重だけど、フリッツ・ライナー(1954年)以来オーディオ映えすること、オーケストラの技量を前面に立てた演奏を愉しむように。目覚めたのはヘルベルト・カラヤン(1974年)圧倒的剛力かな?「アルプス交響曲」だったらルドルフ・ケンペ(1966年)か。皆亡くなった人ばかりだ。
このティーレマンには痺れました。ウィーン・フィルへのデビュー・ライヴ?とやら。残響たっぷり、しっとり落ち着いて力みやら煽り皆無、ごりごり輝くしく大見得切って演りたくなる音楽じゃないっすか、ウィーン・フィルの(とくに)金管の深くマイルドな音色を活かして、ムリムリな刺激皆無、朗々と余裕の表現であります。作品への”聴き方、対峙の仕方”をガラリ変えたか?「夜」「夜明け」登頂、前半は弱音を主体としたデリケートな響き、それでも「嵐の前の静けさ」(Stille vor dem Sturm)〜「雷雨と嵐」(Gewitter und Sturm)に至って絶叫せずとも響きの厚みは迫力充分、しかも余裕がありました。安易にテンポ・アップしない、詠嘆に安っぽくテンポを揺らせない姿勢もよろしい感じ。日没(Sonnenuntergang)諦念への収束もお見事、オーケストラは常に八分の力で鳴り響きます。
「終末」(Ausklang)のオルガンは控え目、金管木管のシミジミとした弱音の深さ美しさ落ち着き、弦はしっとりして清潔に溶け合いました。ラスト、夜(Nacht)に冒頭の「夜の動機」「山の動機」が回帰して全体を静かに、寂しく締め括っております。
「薔薇の騎士」(管弦楽組曲)は賑々しく、懐かしく、粋でセクシーな音楽でしょう。これもしっとりして落ち着いてゴージャスな雰囲気にも欠けない・・・豊かな残響のイメージもあるのかな?すっかり気に入りました。
(2017年6月18日)
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