Albeniz/Peter Breiner編 イベリア
(イーゴリ・ゴロフスチン/モスクワ交響楽団)


NAXOS 8.553023 Albeniz/Peter Breiner編

イベリア

エヴォカシオン/港/セビーリャの聖体祭/ロンデーニャ/アルメリア/トリアーナ/エル・アルバイシン/エル・ポーロ/ラバピエス/マラガ/ヘレス/エリターニャ

イーゴリ・ゴロフスチン/モスクワ交響楽団

NAXOS 8.553023 1996年録音

 オリジナルのピアノ作品集より(難曲らしい)著名なEnrique Fernandez Arbosによる編曲はエヴォカシオン/セビリアの聖体祭/トゥリアーナ/港/エル・アルバイシン(+ナバーラ)のみ、しかも移調しております。こちら(NAXOS専属?でもないか)Peter Breiner(1957-)編は元調通り、しかも全曲1時間17分しっかり収録。Igor Golovschin(1956ー1998)は露西亜期待の俊英だったらしいけど、若くして亡くなったんですね。NAXOSに結構な数の録音が残っております。西班牙音楽とは縁の薄そうなモスクワ交響楽団(この団体が謎。パーヴェル・コーガンの国立交響楽団とは別物)NAXOSに幾度登場して、これがけっこう上手い。この「イベリア」だって初めて演奏したはずだけど、意外にちゃんとしたアンサンブル、雰囲気に仕上げているのはゴロフスチンの統率の賜物でしょう。音質良好、打楽器の迫力も充分。

 例の(ド・シロウトが連想するところの)西班牙情緒たっぷり魅惑の旋律に、デーハーな色付け+メリハリ(打楽器の多用など)はわかりやすい。この編曲に厳しいご意見もあるみたいだけれど、それはちょうどストコフスキーのBachが昔、ボロカスに云われたみたいなもの?ワタシは多彩な響きをたっぷり愉しみましたよ。

 イングリッシュホルンのゆったり神秘的な開始から弦に引き継ぐ「エヴォカシオン(魂を呼び戻す)」は、やがてホルンを呼び出してスケール大きく盛り上がります。(5:46)「港(カディス地方のサンタ・マリア港)」はちょっぴりテンポを上げて陽気なリズム感有、打楽器参入して(もちろんカスタネットも)賑やかアクセント、華やかに管楽器も歌います。(4:34)ピアノでは超難曲らしい「セビーリャの聖体祭」これは行進曲なのですね。これは金管打楽器が呼び交わしてスケール大きな風景が見えるところ。中間部は木管主体に静かな歩みとなります。オーケストラの上手さが光って相当な迫力〜静かなラストを迎えました。(7:58)以上第1巻。

 第2巻は「ロンデーニャ(マラガ地方のロンダ)」より開始、弦主体に優雅に歌うフラメンコといったところ。途中、ティパニの一撃は衝撃、ギターもこっそり参入しました。(6:05)「アルメリア」(地名)は全曲中一番長い静謐穏健な風情、ハープのアルペジオに乗って弦、木管が優しく、静かに歌い続けました。ここにもティパニの一撃がアクセント、やがて5分を過ぎたあたりから風雲急を告げて暗転、リズムは激しく怒り哀しみの管弦楽(金管打楽器)が呼び出されます。そして平穏な風情へと戻って締めくくられる。(9:38)「トリアーナ」(これも地名)は一番馴染みかな?弾むように陽気なフラメンコのリズムは、木管の剽軽な出足から弦へと引き継がれてカスタネットも参入します。変奏曲なんだそう。途中圧巻の金管打楽器も入って迫力充分に華やか、愉しい作品ですね。(4:06)

 「エル・アルバイシン(グラナダの古い地区)」は細かい音型リズムが特異な、不思議な味わいを持っております。これも打楽器の参入が迫力有、やがて不協和音っぽい金管が華やかな盛り上がりを作り出しました。(7:42)この辺りオーケストラの上手さを確認できるところ。「エル・ポーロ(アンダルシアの舞曲)」はバスクラリネット?のアルペジオに乗ってシンプルかつ怪しい風情の静かな歩み。途中、オーケストラが絶叫してもすぐに静かになって、西班牙のリズムを淡々と刻んで(こっそり)カスタネットも鳴りました。(5:58)「ラバピエス」(マドリードの地域名)はピアノでは最難関とのこと。トランペットがタンゴを歌って、間の手の木管も色彩豊かに細かいリズムを刻みます。ユーモラスに”ぽこぽこ”鳴る打楽器も印象的。ここはリズムが難しそうやな。ギターソロも登場して、金管が賑やかに締め括ります。(6:20)以上第3巻。

 第4巻は「マラガ」(マラゲーニャを生んだ町)からスタート、ド・シロウトが連想する例のあれでっせ。優雅な風情漂うゆったりとした舞曲であります。弦の陰影豊かな主旋律に木管の間の手も華やかなアクセント。やがてティンパニ大活躍+金管が大騒ぎ状態に参入いたします。スケール大きな、このパターンを嫌う人がいるのかも。(5:08)「ヘレス」(スペイン南部の街)は静寂であり、ここも噂によるとピアノでは超絶技巧必須らしい。暗く、時に微笑みを浮かべるような複雑な心象風景が広がります。打楽器+金管も控え目な登場、優雅でありしっとりとした風情が続きました。(9:08)「エリターニャ(セヴィーリャ城門の外にあるオーベルジュ)」はラストを飾るに相応しい華やか軽快な出足、トランペット〜木管〜弦と細かい音型を明るく歌い続けます。そしてティンパニのアクセントは効果的。イメージとしてChabrierの狂詩曲「スペイン」を上品デリケートにしたみたい。(4:39)

 Peter Breinerさん、なかなかエエじゃないの。Arbos+誰だかの編曲で全曲録音はあるみたいだから、それも聴いてみたいもの。

(2017年10月29日)

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written by wabisuke hayashi