Mahler 交響曲第3番ニ短調
(アバド/グスタフ・マーラー・ユース管/ECユース管1988年ライヴ)


カセットからMDへ Mahler

交響曲第3番ニ短調

アバド/グスタフ・マーラー・ユース管/ECユース管/ウィーン・ユース合唱団/ベルリン・フィルハーモニー合唱団/テルツ少年合唱団/ノーマン(s)

1988年8月6日 ヴァルトビューネ野外音楽堂ライヴ

 有名なホーレンシュタインのCDを手に入れたので、ワタシの流儀に従って「まず、聴き比べ」〜かなり以前120分テープに録音した、この演奏を聴きました。音質も良好、MDに落として楽しみました。爽やかな涼風を感じさせる「夏の交響曲」(これは日本独特の呼び名かな?)。そしてこの演奏。

 カラヤンの後釜、というのがマズかったのか、それとも世界的な不況の関係か、アバドの評価はイマイチ。ワタシもLSO時代までは期待を込めて聴いていましたが、その後ウィーン・フィル、ベルリン・フィルとの彼の録音はほとんど興味がありません。Mahler の全集は、1970年代から録音が始まっていましたが、最近ほとんど話題にもならない。(かなり以前FMで聴いた、ウィーン・フィルとの第3番は自然体でとても良い演奏でしたが)

 ヴァルトビューネ野外音楽堂の演奏会は、テレビで数回、観客がほんとうにリラックスして音楽を楽しんでいる様子を見たことがあります。この録音、演奏はもちろんだけど、会場の和んだ雰囲気というか、聴衆の暖かい拍手もとらえられていて、いい感じなんです。音楽に満ちた「空気」がちゃんと感じられる。観客の「喜び」が伝わります。

 第3番って100分に及ぶ大物ながら、こんな楽しい、ウキウキする曲は滅多にない。子供時代「いつまでも続いて欲しい夏休み」の感触を思い出させます。なが〜いけど、けっして飽きさせない。こんな野外コンサート、演奏者には若者やこどもたちもいっぱいで、音だけでも華やいだ舞台や客席が目に浮かぶよう。こんな曲で「野外コンサート」を成立させてしまう「音楽的背景」に驚愕。日本じゃ考えられない。

 冒頭から八本ものホルンがシンプルながら、強烈な旋律のユニゾンで圧倒します。「夏の行進」は軽快で楽しげな表情。若者のオーケストラながら、おそろく厳しいオーディションをくぐり抜けてきたのでしょう、技術的な不備は見られず、最後まで「割り引き」して聴く必要もありません。とにかくどのパートも、もの凄く上手い。アバドは「個性ゴリゴリ派」ではないし、オーケストラも「独自の色」は持っていません。でも、この爽やかさは貴重で、100分間体力が落ちないのも若者たちの特権。

 第3楽章「夏の終わり」(「若き日の歌」より)では、ポストホルンが活躍します。この遠くから鳴っているような音色、夢見るような旋律は、おそらく欧州の歴史的背景があるのでしょう。ここでの表現は真っ直ぐすぎて微笑ましい。(レーグナー盤における、ギュトラーの名人芸〜目眩がするくらい〜には当然及ばない)

 ノーマンの芯のある声質は圧倒的説得力有。第4楽章の前に拍手・口笛・歓声が上がります。ノーマンが登場するんですね。「待ってました!」という観客の期待が高まります。30分を越える第1楽章のあとにも、自然と拍手がわき上がりますが、それがぜんぜん変じゃない。それも、もうほとんどアイドルとかロック・バンドのノリ。

 第5楽章。こどもたちの歌声は言わずもがな。終楽章は、とくにアバドの巧まざる自然体の表現に説得力があって、控えめながら練り上げられた弦の響きは圧倒的な感銘を呼びます。長く続く熱狂的な拍手、観客たちの喜びの叫び。


MDには74分しか入りませんから、当然2枚に分けます。すると2枚目に余白ができる。で、Mahler の交響曲第6番イ短調を収録しました。

マレク・ヤノフスキ/オーストリア放送交響楽団(1988年4月14日ウェーン・コンツェルトハウス・ライヴ)〜まっすぐで、実直な演奏。で、この演奏も80分以上かかるので、もう一枚MDが要る。そんなこんなで「アバド/ヤノフスキ」でMD3枚組の出来上がり。

 この調子で「エア・チェック版Mahler 全集」を完成させたいもの。(2000年8月16日更新)


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written by wabisuke hayashi