A.Rubinstein ヴァイオリン協奏曲ト長調 作品46/
Cui ヴァイオリンと管弦楽のための協奏的組曲 作品25(西崎崇子(v))


NAXOS 8.555244 A.Rubinstein

ヴァイオリン協奏曲ト長調 作品46

ミヒャエル・ハラース/スロヴァキア・フィル(1985年)

Cui

ヴァイオリンと管弦楽のための協奏的組曲 作品25

ケネス・スカーマーホーン/香港フィル(1984年)

西崎崇子(v)

NAXOS 8.555244

 馴染みの薄い作曲家、作品を意識的に聴いて幅を広げるのは、音楽愛好家として大切な基礎作業のひとつ。Anton G. Rubinstein(1829-1894)はTchaikovskyの師匠であり、指揮者、ピアニスト、教育者、そして大量の作品が存在する作曲家とのこと。”ドイツ・ロマン主義的で保守的な作風は民族主義的作曲家グループロシア5人組と対立した”(Wikiより)〜なるほどなぁ、所謂”クサみ”は少ない、弟子であるTchaikovskyの西欧風甘美な洗練+露西亜の濃厚憂愁との調和成果に非ず、素直に”美しい”作風と聴き取りました。初期NAXOS(Marco Polo)による意欲的録音。

 著名なMendelssohnのホ短調協奏曲が1844年〜こちら1857年〜Brahms は1878年(Tchaikovskyも同年)、3楽章計37分に及ぶ堂々たる作品。作曲の経緯はようわかりません。第1楽章「Moderato Assai」は田園風景のような穏健安寧な出足、細かい音型が上昇するヴァイオリン・ソロ開始も爽やかそのもの。バリバリと技巧を披瀝する系に非ず、優雅、明るい旋律が滔々と流れて〜伴奏も含めどこをとっても美しいけど、陰影とか深みとか凄み激しい爆発、みたいなものに欠けて、やや印象は薄い感じ。(13:14)第2楽章「Andante」〜冒頭低弦中心の弦楽アンサンブルは落ち着いた風情、そのまま管楽器(トランペット・ソロ〜ホルン)が旋律を引き継いでヴァイオリン・ソロへ。この流れはBrahms の雰囲気ですね。ここも素直、優美な旋律やなぁ、結果的に第1楽章「Moderato Assai」という指定が、第2楽章との対比を弱めているような?やがてソロは暗転して〜激情の爆発に至らず、静かな嘆きが継続します。嗚呼、もどかしい!(12:07)

 第3楽章「Moderato assai」おお、第1楽章と同じ指定じゃないか。もっと躍動リズムを!求めたいのは作品そのものの個性か、西崎さんの(バランス)表現故なのか。破顔一笑的カタルシス(盛り上がり)に欠け、あくまで上品、美しい音楽、Tchaikovskyのヴァイオリン協奏曲にやや風情は似て、不純物(香りも味も)を濾し取った感じか。(11:53)音質、オーケストラもソロも作品を紹介するに充分な洗練、しかし、もっと陰影に富んだ凄い演奏は他にありそうに思えます。

 セザール・キュイ(Cesar Cui、1835-1918)は長命を保って、作品も膨大とのこと。しかし、ほとんど聴いたことはありません。【♪ KechiKechi Classics ♪】サイト内検索を掛けても出現しないから、ほんまに聴いていないのかも。4楽章から成る21分ほどの作品。こちら第1楽章「Intermezzo scherzando」(まさにこの表題通りの雰囲気)変拍子を含む西班牙風旋律躍動リズムが躍動してユーモラス、第2楽章「Canzonetta」は優雅な、陰影に富んださりげない歌が聞こえます。リズムの溌剌とした変化(ワルツ)も切ないほど。

 第3楽章「Cavatina」人懐こい、優雅な歌に溢れました。Tchaikovsky「なつかしい土地の思い出」を連想させます。フィナーレ「Tarantella」暗い音型繰り返して、ノリノリの流れ、リズムであります。音質はちょっぴり(やや)落ちて、香港フィルのアンサンブルはまずまずでしょう。

 正直な感想はA.Rubinsteinよりずっと魅力的。オーケストラの扱いは型通りといった前曲とは打って変わって、ソロと対等平等でした。前者の演奏機会が少ないことには納得、後者はもっと、いろいろ聴きたい!そんな魅惑の作品也。

(2014年9月21日)


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written by wabisuke hayashi