Beethoven 交響曲第3/4番
(デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団)


ARTE NOVA 74321 592142 Beethoven

交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
交響曲第4番 変ロ長調 作品60

デイヴィッド・ジンマン/チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

ARTE NOVA 74321 592142 1998年録音 780円で購入

 おそらくは10年ぶりの再コメント、いや聴取かも。(p)(c)1998であり、発売と同時に購入したと記憶します。現在なら全集が格安で入手できるし、SONY/BMG系の「60枚組ボックス」にも収録されたから、単発ものはいつでもYahoo!オークションに出品処分されているのを見掛けます・・・(たいていは売れていない)20世紀ラスト辺りは、まだ廉価盤が貴重だったし、話題の新録音を毎月一枚一枚揃えるのが楽しみでありました。これが正しい、本来の音楽の聴き方の姿。21世紀には廉価盤が日常茶飯事となり、メジャーレーベルが巨大激安ボックスを連発し、かつての貧しい音楽少年達は”オトナ買い”連続〜ちゃんと聴けもしないのに、未踏峰ミチョランマを嘆きあっている今日この頃、全国の中年音楽のファンの皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

 ここ数年CDは(オークションにて)ずいぶんと大量処分いたしました。(前回コメント時より更に)Beethoven の交響曲は全集も、単品も大量に処分したものです。それでも棚中の全集は7セットを数えるし、単品残も多数有。滅多に聴かないのにね。

 新ベーレンライター版による初録音、というのが発売当時の”ウリ”だったはずだけれど、実際はジンマンによるかなり恣意的な解釈が入っている、とはどこかのサイト情報で拝見いたしました。こちら”聴くだけ”の音楽愛好家としては、生き生きとした演奏であるか、がポイントであって、”楽譜に忠実”かどうかは(ド・シロウトだから)わからないんです。

 「英雄」始まりました。第1楽章はリズムが軽妙であり、ティンパニは粗野に、激しくアクセントを刻みます(ラスト迄)。快速テンポで颯爽、旋律の節回しにニュアンスは充分だけれど、濃厚浪漫に表情付けをしたり、アンサンブルを艶々に磨き上げたりしないから、素朴さが目立ちます。技術的には機能的で、上手いオケだと思いますよ。第2楽章「葬送行進曲」は響きも洗練され、清潔で明るい。重厚長大なる表現とは無縁です。(カラヤン1962年録音が16:52に対して、こちら12:58)

 第3楽章「スケルツォ」にはノリノリの激しさがあり、快速で一気呵成。終楽章は、一部弦の旋律がソロになったり、オーボエに装飾音が付いたりするのが効果的だけれど、これはジンマンの意図であって、楽譜由来ではないとのこと。劇的な切迫感(若い頃はこの変奏曲に感銘した!)ではなく、軽快軽妙を旨とした、明るい”英雄”です。巨魁なる貫禄表現に馴染んでいた耳には(当時)ほんまに衝撃的な、新しい解釈と感じたものです。

 久々の鳴り響いた音楽に、鮮度は落ちていないな、との手応えを感じました。録音も良好。

 第4番 変ロ長調交響曲といえば、カルロス・クライバーの熱血ライヴ(1982年)が圧倒的世評でしょうか。ジンマンの演奏は「英雄」より、いっそうリズムの推進力と洗練を加えて、爽快であります。明るい作品との相性かな?旋律のフレージングがすっぱりと切れ味良く、快速のように聞こえるが、他とそう演奏時間は変わらない〜但し緩徐楽章+終楽章はたしかに(そうとう)速いけれど。

 第2楽章は相変わらず、ティンパニの粗野な迫力がエエですね。晴れやかな表情の旋律表現も気持ちがよろしい。クラリネットには装飾音が散見されます。コレもジンマン独自の解釈か。

 第3楽章「スケルツォ」は、リリカルな味わいで力みがない。終楽章があまり速すぎるのはクセもの、という論評を拝見したことがありました。ここでは快速、しかも緻密な仕上げに集中力がありました。オケは上手いですね。最近、話題にならなくなった(廉価盤専門!とか、楽譜に忠実ではなかった、とか)が、拝聴すべき個性を誇る演奏と確信いたしました。それにしても、Beeやん交響曲2曲聴いたら、んもう!あっぷあっぷ。満腹でございます。

(2009年2月13日)

 Beethoven の交響曲のCDは油断すると、どんどん増えてしまう。LP時代もフルトヴェングラー、ベームの全集を先頭に、ずいぶん持っていたような記憶があります。CD時代に入った当初も似たような状況になって「これではいけない、どうせ聴かないんだから」と思って、数年前にかなり処分しました。

 でも、けっきょく後悔するから、今年(98年)から思い切って我慢するのはやめ。もう今年だけで全集は3組、バラ買いでもそれなりに買っていると思います。(数えてませんが)最近、安くて良い演奏のCDがたくさん出ているんですよ。

 ジンマンはモントゥーの弟子で、わりと地味な存在だったでしょう。チューリヒ・トーンハレ管も歴史あるオケですが、クリップス、ケンペ以来あまり録音がないようですし、このシリーズはいつかは買おうと思っていました。

 結果は想像以上の劇的な感動に身も震える思い。

 1997年J.デル・マー校訂ベーレンライター版による、最新の研究成果をふまえた録音。(とのこと。なかの解説は真剣に読んでいないのですが、じつはジンマンは独自の解釈をかなりしているそう)名演奏ひしめく「英雄」の中にあって、注目の個性的演奏でしょう。最終楽章の弦のアンサンブルがソロになったり、聴き慣れない木管の装飾音が出たり、驚くことばかり。

 早いテンポ、メリハリのついた激しいアクセント。
 しかし、それがアーノンクールのようなアクを感じさせず、非常にスッキリ、かつ流麗、軽快でもあります。オケの響きが洗練されていて、透明であるのも驚きで、技術的にも最高のアンサンブル。金管の独特の柔らかい音色は最高。思わず引き込まれて、興奮します。アツい演奏です。

 第4番は冒頭序奏の繊細なアンサンブルの水準の高さ、アレグロ・ヴィヴァーチェに移る超快速なテンポによる躍動感が素晴らしい。ティンパニの野性的な音色、木管の透明な響き。
 第3楽章の弾むようなリズム、「フィナーレは早すぎるのはよくない」とか云うけれど、相当な快速でもアンサンブルは一糸乱れず、バランスは完璧。冷たくならないのもいいですね。
 Beethoven 演奏新時代の幕開けを告げる新鮮な演奏でしょう。古楽器演奏の影響も受けているのでしょうが、(弦はノン・ヴィヴラート。美しい)使用楽器にかかわらない新しい問題意識が提起されてきていると思います。

 録音も極上。既に出ているジンマンのCDは買う決意をしました。また、全集のコレクションが増えそうです。


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written by wabisuke hayashi