Bach 平均律クラヴィア曲集第1巻(全曲)
(ジョン・ルイス・グラント(p) John Lewis Grant)


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平均律クラヴィア曲集第1巻BWV846-869(全曲)

ジョン・ルイス・グラント(p) John Lewis Grant

Piano Societyよりダウンロード

 世間のちゃんとした音楽ファンには笑止千万なる行為かと思うが、ネットでフリー音源を探して自主CD化するのは楽しいものです。聴くのが追いつかなくなるくらいダウンロードして、ついには自主CD化さえ間に合わず、圧縮データをそのままDVDに保存したり〜挙げ句そのことを忘れて、同じ音源を再びダウンロード、みたいな愚かな行為を繰り返しております。このCD2枚分は2009年、2年ほど前?に作成、一度聴いて放置していたもの。時々在庫の虫干しをしていて、久々再聴、仰け反りました。そりゃ、グレン・グールドやらスヴャトスラフ・リヒテルは凄いっすよ、名演。でもね、ジョン・ルイス・グラントもなかなかの存在感〜って、初耳、カナダ・トロント出身のヴェテラン・ピアニストらしい。無料だからこその出会い。

 .mp3(不可逆圧縮音源)→.wav変換してCDに焼いたものだから、所詮知れている水準ながら、残響たっぷり低音も豊かなエエ音で鳴っていると思います。ま、人民中国製激安極小ディジタル・アンプとの相性がよろしいと言うことでしょう。かなり強弱、テンポのメリハリを付けて、瑞々しく表情豊か、つまり浪漫的な表現。これがとんでもカンチガイ演奏でもなんでもなくて、説得力を以て聴き手を厭きさせない。テクニックは充実していて、細部配慮は感じられるが、神経質ということではない。方向性としてアンドラーシュ・シフに似るが、彼(か)の鬱陶しさ(ごめんなさい)はないんです。流麗ではない、もっとのびのびとして、骨太。

 現代現役のBach 表現として、こんな情感たっぷりなのはあまりないんじゃないか。ウェットであり、馴染みの硬派大Bach の旋律が甘美に響く場面が多いんです。まずは馴染みの冒頭第1番ハ長調の前奏曲BWV 846を堪能あれ。ね、甘美で優しいでしょ。ちょっと揺れているでしょ。前奏曲ホ短調BWV 855もちょっと表情濃い表現。どれも素敵なんだけど(途中飛ばして)ヘ短調のフーガBWV 857辺り如何ですか。ウェットな浪漫でしょ、瑞々しいでしょ。例をあまりいっぱい引っ張っても空しいので、ぜひ全部ダウンロードして全曲聴いていただきたい。

 知名度とか世評とか、CD価格の高さ云々抜きにして、出会いを大切に、虚心に音楽を聴く大切さ。ネットやらコンピューターのテクノロジーが発達して、こうして無料の音源を気軽に聴けるようになったことに、感謝。後は聴き手の誠心誠意な音楽への対峙精神が課題でしょう。つまり大切に、丁寧に聴け、という自戒であります。

(2011年8月26日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi