「指環」への道〜Wagner 楽劇「ヴァルキューレ」
(ギュンター・ノイホルト/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団)



BRILLIANT 99629/1-4  14枚組  $27.86 Wagner

楽劇「ヴァルキューレ」(全曲)

ヴォータン:ヴェグナー、 フリッカ:ニコロヴァ
ジークムント;クック、 ジークリンデ;ロンゲ
フンディング;オルセン、 グリムゲルデ;ケンパ
オルトリンデ;フローレン、 ジークルーネ;オブライエン
ヴァルトラウテ;ニコロヴァ(二役?)、 ブリュンヒルデ;ポール
ロスヴァイゼ;エルンスト・モスライティス、 シュヴェルトライテ;ヴュルコップ
ヘルムヴィーゲ;チャルカ、 ゲルヒルデ;エグラー 
(以上、読み方ほとんどウソ)

ギュンター・ノイホルト/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団(1994年〜1995年ライヴ)

BRILLIANT 99627/1-4  14枚組  $27.86 (日本で買えばもっと安かったかも)のウチの4枚

 第2夜(舞台では第1夜)となり、4枚組の大物登場。黒田恭一さん著「オペラへの招待」(朝日文庫)に、指環攻略のカリキュラムが載っているので、それなりに従って(日程大幅に短縮)聴き進めることにしましょう。


1) 粗筋を読め、とのお達し。先の「ラインの黄金」の筋はなんとなくつかめたが、「ヴァルキューレ」は4時間を超える長丁場。これは重要でしょう。で、必死に台本を読みました。以下、誤解があるのかも知れませんが・・・・(ご指導乞う)

 じつは双子の兄妹であるジークムントとジークリンデ。(神々の長・ヴォータンのこども。母親はフリッカではない) ジークリンデは無理矢理フンディング(こいつ誰?)の妻とさせられており、傷ついたジークムントと出会い、勝利の剣(ノートゥング)を抜き、愛し合うことに。(筋だけ見れば、もの凄い近親相姦と不倫のように見えるが、ま、ここはお話と言うことで)

 場面変わって、神々の長であるヴォータンと、奥さんのフリッカ(結婚の神)が、ジークムントとジークリンデの結婚のことで激しい言い争いをします。ヴォータンは「いいじゃないの」と思いつつ、奥さんに屈し(これは現代とあまり変わらない)、戦いの女神達(ヴァルキューレ〜ヴォータンの娘達)のひとりである、ブリュンヒルデ(知の神・エルダの娘)に命じてジークムントを殺そうとさせます。

 ところがブリュンヒルデは、二人の純愛に感動し、守ろうとし、裏切ってしまう。ヴォータン自ら、心ならずも勝利の剣を無力化し、フンディングはジークムントを殺してしまう。そのあと、ヴォータンはフンディングを殺します。

 ブリュンヒルデはジークリンデを守って、ニーベルングの森へ逃がします。(既に胎内にはジークフリートがいる)父であるヴォータンから怒りを買い、神性を奪われ、魔の炎に守られながら永い眠りにつきます。(ここがラスト・クライマックス)

 正直、わからないことは多くて、ジークムントとジークリンデがヴォータンのこどもなんてのは、台本を読んでもなかなかわからないし、解説本には「この二人は神と人間の混血」となっているけど、母親は誰なんでしょ?ラストでヴォータンが「ローゲよ!」と唐突に言うので、「?」状態だったのですが、ローゲって火の神なんですね。この辺りは「基礎知識」なんでしょうか。それにフンディングも、どういう意味があるのか(どこのどいつか)理解できない。


2) CDの最終面(第3幕)から聴け。との黒田さんの指示有。いきなり「ヴァルキューレの騎行」から始まりました。ラストは「魔法の火の音楽」だし、ワタシみたいなシロウトでも飽きずに聴けます。・・・・そうか、思い出した。「指環」って、「ラインの黄金」はなんとか聴いて、「ワルキュ−レ」前半で挫折するんですよ。あとは、意外と知っている旋律の多い「黄昏」をつまみ聴きする程度になっちゃう。

 「ヴァルキューレの騎行」はむかしから有名だったし、映画「地獄の黙示録」でダメ押しのようにポピュラーとなりました。効果的で派手なオーケストレーションなので、馬力のあるオーケストラで派手派手しく演奏されたら最高。でも、予想通り我がバーデンのオーケストラは抑制された、というか、ずいぶんと大人しい感じ。日常の劇場ではこんな音なんだと思います。ま、オーケストラが上手くないだけかも。

 この部分は、ブリュンヒルデがジークリンデを伴って逃げてきて、ニーベルンクの森へ逃がしてやり、ヴォータンの怒りに触れ、永い眠りにつかせるクライマックスへと進む場面。知っている旋律も多く、ラスト「魔法の火の音楽」の盛り上がりは立派なものでしょう。


3) 第1幕後半を聴け(ジークリンデとジークムントの濃厚な「愛の二重唱」を中心に)

4) 第2幕後半を聴け(ブリュンヒルデがジークムントへ「死の予言」をするところ)

5) 第2幕前半を聴け(ここはヴォータン/フリッカ夫妻のやや理屈っぽい会話がつまらないという)でも、前奏曲は雄壮で楽しめる音楽。

6) で、はじめて最初から通して聴け。とのお達し。

〜なるほど、最初から聴こうとするから挫折するんだな。ま、筋がわからないと意味もないが。

 歌い手については云々するほどの判断力はありません。ヴォータンは若々しすぎで、朗々としていて苦悩が不足気味?ブリュンヒルデは、偉大なるニルソンのイメージが強いのでしょうか、どうしてもやや線が細いように感じてしまいます。なにせこのあと「ジークフリート」「黄昏」と出ずっぱりの重要人物ですから。

 フリッカは意地悪さは出ているが、貫禄が足りない。ジークリンデの高揚した声の感じは悪くない。但し、第1幕第3場の始め、各々の独白は長く、なかなか楽しむには難しい。(静かに遠くで鳴っているホルンとチェロは美しいが)でも、そのあとの「愛の2重唱」が良いじゃないの。さきほど無頼っぽかったジークリンデもやさしく、端正。(でも、だんだん声が出なくなっていくのはまさにライヴ)ジークリンデも喜びに満ち、この場面の高揚は「トリスタン」に負けない魅力でしょう。凄い拍手有。

 ・・・・疲れました。A4版の台本をひっくり返しながら、CDのインデックスを探したり、CDを取り替えたり、なんてやっていると、あっという間に数時間経っているもの。ましてや、ところどころメモったりでしょ?でも、これが趣味の醍醐味。嗚呼、ようやく「指環」道半ば。日暮れて、道遠し。(おおげさな)(2000年12月22日)


参考資料   「ニーベルングの指環」対訳台本〜ライトモティーフ譜例付 (訳;天野晶吉  ライトモティーフ分析;川島通雅) 新書館 1990年発行

黒田恭一「オペラへの招待」(朝日文庫)


引き続き匿名氏からの補足

『ヴァルキューレ』ですが、あれは前史があるんです。それを知らないで聴くと、 わかわからん状態なので、かなり不親切です。

こいつ誰のフンディングや、 ヴェルズンク族のお話し、ノートゥングの由来(これは第一幕の第三場で ジークリンデが説明する)も前史にあります。これは文章でうまく説明できない ので、参考文献か資料をあたっていただくのが良いですね。

個人的には、『ヴァルキューレ』は第一幕が好きで、特に後半のジークムント のジークリンデのデュエットは素晴らしい出来です。ただ、第弐幕は 冒頭の前奏曲(格好良すぎ)以外は全く詰まらないし、第三幕も中間が やや冗長。ヴォータンとフリッカの夫婦喧嘩なんて、犬でも食わない。 第三幕の、「ヴォータンの告別と魔の炎の音楽」は有名でこれも好きです。

ただ、やはりこの『指環』という傑作はただ、音楽だけを聴いていれば良いという 次元のものではなく、その背景の神話だとか、文学、心理、音楽史背景が ないとかなりきついです。やはり一番良いのは映像で見るのが一番だと思います。 (でも、指環を映像で見るのはかなり苦しい。眠くなるのは必至)

(2000年12月29日追加)


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written by wabisuke hayashi