Wagner 管弦楽曲集(ワルター戦前録音)Wagner
楽劇「神々の黄昏」から「夜明けとジークフリートの旅立ち」(1932年)/ブリティッシュ交響楽団 ブルーノ・ワルター指揮 History 205245-303 10枚組 2,180円で購入したウチの一枚 ワタシにとってのワルターは、晩年アメリカで引退後にステレオ録音してくれた一連のCBS録音の印象が主だったものです。あまり沢山は聴いていないが、音の状態も良いし充分楽しめます。でも、ボチボチ昔の録音を聴く機会が増えると新たな発見がある。1935年の「ヴァルキューレ」(第1幕のみ)など、驚くほどホットで豊かな演奏と思いました。 驚くべきは録音の水準で、とくにブリティッシュ交響楽団(このオーケストラいったいどんな素性?)との録音が聴きやすい。演奏もいい感じです。「夜明け」は、ほのかにポルタメントのかかったチェロが極上に甘くて、ホルンの奥行き、クラリネットの豊かな低音も、弦の高らかな歌いっぷりも最高。(途中カットがあって)ジークフリートの角笛を表現するホルンが希にみる技巧でした。全体としてテンションが高く、グイグイ引き込まれるような魅力に溢れて圧巻。(「Wagner MANIA」にてダブリ収録。ブリティッシュ響はイギリスの録音用寄せ集めオーケストラらしい、とのこと) 「名歌手」の暖かさ、豊かさもそれに匹敵します。感覚の旧さはなくて、テンポの揺れもほとんど最低限でスッキリとした表現、しかも暖かみには欠けない。晩年の録音より勢いが感じられて、繊細な細部の仕上げはいかにもワルターらしいと思います。テンポは遅すぎず、速すぎず適正。これは楽しさいっぱいでした。(もしかして1930年録音?) 期待通りなのが「ジークフリート牧歌」でしょう。ウィーン・フィルの甘やかな響きは弦を中心に(ここでもポルタメント!)最高潮で、この心の込めかたは並じゃない。ずいぶんと旧い音源だけれど、演奏者の息遣いが感じられるような演奏なんです。クラリネット、オーボエの色気のあること。中間部のテンポの上げかたも自然で、ゆったりとしたリズム感が快い。ブリテッシュ交響楽団のホルンも立派だったが、ウィーン・フィルのはその上を行きます。 おそらくいままで聴いた中では最高の「ジークフリート牧歌」。聴き終わってもしばらく余韻を楽しみたい。同じオーケストラでも、ショルティのはちっとも感動しませんでした。 ロイヤル・フィルというのは、ステレオ時代から登場する同名のオーケストラではないそう。先のオーケストラより少々落ちると思います。それでも1920年代の音とは信じられない(ずいぶんとマシな)音質。「リエンツィ」には、もっと沸き上がるような輝かしさが欲しいところで、やや落ち着きも足りないかも知れません。「パルシファル」は、ワタシはこの曲にあまり馴染んでいなくて(いったい何度聴けば?!)、コメントは書けません。スッキリとして、時代を感じさせない(ポルタメントを除いては)演奏だと思います。 Wagnerはもっとも音の状態が問題になりそうな世界だけれど、そうでもないんですね。いたずらに昔のものを良し、とはしませんが、現代では得難い個性を小さなCDからでもほのかに感じることが可能です。Historyの一連の組み物の中では、ワルターが一番楽しめました。(・・・て、言うほど聴き込んでいないが)(2002年3月28日)
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