Wagner 歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲/
Beethoven ピアノ協奏曲第4番ト長調/ロンド・ア・カプリッチョ 作品129/
Schubert 交響曲第9番ハ長調
(ジェイムズ・レヴァイン/メトロポリタン・オーケストラ/
エフゲニー・キーシン(p)/2013年カーネギーホール・ライヴ)


DG B001909402 Wagner

歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲

Beethoven

ピアノ協奏曲第4番ト長調
ロンド・ア・カプリッチョ 作品129

Schubert

交響曲第9番ハ長調

ジェイムズ・レヴァイン/メトロポリタン・オーケストラ/エフゲニー・キーシン(p)

DG B001909402 2013年カーネギーホール・ライヴ

 James Levine(1943ー2021亜米利加)はジョージ・セルの弟子、45年に渡るメトロポリタン・オペラでの成果も、2017年に性的不適切行為発覚して晩節を汚しました。1960年前後、ラインスドルフ辺りのオペラを聴くと”それなりのオーケストラ”水準と感じるけれど、たしかに彼の薫陶の成果、素直にアクを感じさせぬ洗練サウンド、瑞々しく整ったアンサンブルを確認できました。豊かな残響に臨場感はあって、かなりオフ・マイクっぽいけど音質はまずまず。彼は車椅子からの指揮だったそう。病や怪我に悩まされた晩年であり、これは久々の復活ライヴの記録、前回拝聴した記憶よりちょいと陰影や個性、味が薄いように感じました。

 神秘な歌劇の始まりをしっかり感じさせる「ローエングリン」序曲は、静謐清涼な響きから、しっかりクライマックスに至って感動的、洗練された響きでした。(10:39前後盛大な拍手有)

 42歳になったキーシンのピアノは華やかな音色と技巧に、あわてず落ち着いた風情(強奏にちょっと音が濁る)レヴァインの統率は常に適正なテンポを感じさせて、エキセントリックなところのないデリケートな伴奏はソロと息はぴったり。Beeやんのもっとも安らぎの風情が醸し出されたピアノ協奏曲ト長調は名曲、第1楽章「Allegro moderato」の躊躇いがちのタッチにテンポの揺れも床しく、カデンツァは雄弁、そして全体に穏健に抑制され、ほとんど止まりそうな静謐感が漂います。(入場拍手有20:14)第2楽章「Andante con moto」は落ち着いて、つぶやくようなピアノはしっとりと暗く哀しいい風情。(5:34)春の訪れを感じさせる第3楽章「Rondo」は軽やかに突入して力みのないタッチ、表情は晴れやかにスムースに流れるよう。徴収より熱狂的な喝采が湧き上がりました(9:52)。アンコールは快速にユーモラス、ちょっぴりイライラした「なくした小銭への怒り」。息も付かせぬ無窮動最高。(5:48拍手有)

 Schubertはレヴァインのバランス感覚、適正中庸なテンポ設定、自らの育成したオーケストラは明るく響いて、秀逸なアンサンブルはヴィヴィッドに、リズミカルに歌いました。第1楽章「Andante - Allegro ma non troppo」冒頭のホルンから素直な音色、木管や弦の静かな入りも洗練されて、微妙なテンポのタメも自然、力感と熱はいつの間にか高まります。(14:23)第2楽章「Andante con moto」は陰影と抑制、メリハリしっかりとした歩み、優雅な歌心。ここは出色の出来でしょう。中盤の軽快なテンポ・アップも効果的(14:10)第3楽章「Scherzo: Allegro vivace」のリズミカルな躍動もノリノリに重くならぬ響き。(繰り返し有13:45)第4楽章「Allegro vivace」最終楽章迄進んでテンポは常に適正、スケールや熱気、重厚さの強調より、素直に耳あたりのよろしい流れと響き優先の表現と理解しました。(11:54熱狂的な拍手含む)稀有な才能をしっかり受け取ったけれど、ちょっと常識的過ぎかも。

(2023年11月25日)

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written by wabisuke hayashi