VOX

　2000年にはVOXレーベルのCDは、一枚も新しく買いませんでした。まだ、店頭を探せば在庫はあると思います。単価がやや高め（1,000円以上）ながら、CD復刻も続いております。（ホーレンシュタインなど）ただ、歴史的録音のセットものの価格破壊とか､メジャーレーベルも次々と価格値下げを実行している現在､このレーベルの魅力は相対的に下がっていると言わざるを得ません。

　国内盤でブレンデルの若い頃の録音が､輸入盤の2倍くらいの価格で出ていることも気になります。もう一度、ライン・アップを整理､価格も見直して意欲的な復刻を期待したいところ。このレーベルは録音水準に問題があり､演奏は玉石混淆、かなりの審美眼が必要なので､あまり安易にお勧めできません。

　手元には、相当数の在庫があって、まだまだコメントしたい意欲はあります。1960年前後の演奏家､アメリカの非メジャーの演奏には興味津々。

　1999年に入って、ようやく新しいVOXBOXが発売されました。ブレデンデルとクリーンによるピアノ連弾で、ハンガリー舞曲とスラヴ舞曲の全曲。（スラヴ舞曲はLP時代に愛聴しておりました）

　値段も安かったので、喜んで買ってきたら、供給元が変わっている。以前のものは、MOSS MUSIC GROUP/ESSEX ENTERTAINMENTだったものが、VOX MUSIC GOUP/SPJ MUSICへ。詳細はわかりませんが、住所も変わっているし、発売権が移ったんでしょうか。

　ともあれ、以前の方針に忠実な一枚を見かけたのでほっとしたところです。既に発売されたCDもライン・アップで再発して欲しいものです。

　「VOX」はLP時代からお気に入りでした。コロンビア・ダイアモンド1000シリーズや、ファブリ名曲シリーズの音源として使われていました。CD時代を迎えると、だいたい1枚700円相当の価格と、「常に在庫がある」ことを魅力に「廉価盤界の横綱」を張ってきました。（ここ数年、じょじょに棚から見えなくなっているのが心配）

　第2次世界大戦後のモノラル録音（けっこうネームバリューのある人が演奏している）、1960年頃〜70年代のステレオ録音、が中心です。ごく一部、最近のデジタル録音も存在します。

　モノ時代のクレンペラー、ホーレンシュタイン、ロスバウト、ペルルミュテール、カサド。有名どころではブレンデルの初期録音。若き日のギーレン、スラットキンもこのレーベルでデビュー。フィルクシュニーやクリーン、ススキンド、(ここ最近注目の)スクロヴァチェフスキ、亡くなる直前のシッパーズの録音もあります。

　実力派ながら知名度の低いラウテンバッヒャー、ロザンド、フランクル、パウク、シャンドール等の音源も豊富。珍しい室内楽、現代音楽も格安で揃います。安いから思い切って買ってしまう。このレーベルでずいぶんと勉強させていただきました。

　マイナーな演奏家がほとんど。録音状態もイマイチで、そのことを気にしてか、メロディアや東欧のわけのわからん音源を利用した「デジタル録音」を借りてきたり、一部、意欲的な新録音もないではない。しかし、それは弱くなった横綱が立会に変わるようなもので、このレーベルらしくありません。

　ワタシとしては、あくまでLP 時代の膨大な音源のCD化に邁進していただきたい。アメリカやヨーロッパのマイナーながら、往年の味わい深い演奏家の復刻を目指して欲しい。少々の音質の悪さは目をつぶります。（価格次第）珍曲、希少価値な曲の録音は、このレーベルが先鞭を付けたと思うのです。「ロマンティック・ピアノ協奏曲集」（演奏･録音水準はともかく､曲が珍しい）は、全7巻揃えようと思っていたのに、結局第7巻のみの入手。あとは中古で探すしかないのでしょうか。

　VOXに対する私の知識は微々たるもので、おそらくまだまだ知らない素敵な音源がたくさん眠っているはず。戦後のモノ時代の録音は、ときどき中古のレコード屋さんで珍しいLPをみかけます。かつてパイオニアが、LP時代に意欲的に国内盤を出していました。そのなかにもCD化されていない音源がかなりあります。普通のレーベルなら必ずあるはずのベートーヴェンやブラームスなどの交響曲全集がないのも不思議です。「通俗名曲」にはあまり手を出さないのかも。

　最近発売されたものは、値段が高めで1,000円以内では買えないのが気になります。VOX音源が、他のレーベルに流用されてるのも一部あるようです。