Vivaldi リュート協奏曲集(ヤコブ・リンドベルイ(lute)/
ドロットニングホルム・バロック・アンサンブル)


BRILLIANT 99420 Vivaldi

リュートと2本のヴァイオリンのための協奏曲二長調 RV.93
リュート、ヴァイオリンと通奏低音のための三重奏曲 ハ長調 RV.82/ト長調 RV.85

リュートとヴィオラ・ダモーレのための協奏曲ニ短調 RV.540
ファゴット協奏曲ヘ長調

ヤコブ・リンドベルイ(lute)/ドロットニングホルム・バロック・アンサンブル/ニルス-エリック・スパルフ/トゥロ・ガリ(v)/モニカ・ハゲット(ヴィオラ・ダ・モーレ)/ミヒャエル・マックロウ(fg)

BRILLIANT 99420 (BIS原盤1984/85年録音)

 こどもの頃、イ・ムジチの「四季」を愛聴しておりました。1959年フェリックス・アーヨの素晴らしいソロは当時の大ベスト・セラー。現在でも棚中に眠っているが、もうウカツに聴けませんよ、怖くて。想い出がぶち壊れそうで。それにシンプルな旋律を聴きすぎて、作品そのものに飽きてしまった(かも?)〜罰当たり者です。BRILLIANTの8枚組は2000年頃入手したものだけれど、聴く機会が少なくてオークション処分を決意、でも、安くしても売れなかったんですよ。ま、しかたがない、これもなにかの縁、心入れ替えて再聴し〜結果、深く反省いたしました。これは得がたい魅力いっぱいの一枚也。

 誰でも知っているリュートと2本のヴァイオリンのための協奏曲二長調。ギターやマンドリン協奏曲としても有名でしょう。シンプルで屈託のない旋律はもう飽きた・・・と思っていたら、録音会場のしっとりとした空間が極上のサウンドで広がります。素晴らしい音質。バロック音楽は昔風ノンビリゆるゆるリズムも、アーノンクール以降のハードな演奏、両方とも避けたいところ。これは小編成(ほとんど室内楽)、通奏低音は暖かいポジティヴ・オルガンが担当していて、リュートの控えめなソロが優雅なんです。リュートはナマで聴いたことがあって、ほんまはずいぶんと音量が小さいもの。屈託がない、清明な旋律が続いて心洗われる静謐な協奏曲であります。

 ト長調協奏曲は、密かにすすり泣くようなヴァイオリンの旋律に乗って、ゆったりリュートが絡むんです。ヴィヴラート控えめなバロック・ヴァイオリンは(現代楽器とは別な意味で)艶やかな美しさを誇って、得難い魅力+暖かさであります。ハ長調協奏曲の晴れやかな旋律も、ずいぶんと地味に控えめなサウンドでしょう。ちょっと暗転もあって、陰影深い作品也。じつは両曲とも、おそらくは現代楽器にてかつて聴いたことがあって、旋律は(どこか)お馴染み。もしかして”偉大なるワン・パターン”と時に揶揄されるVivaldiは全部そう聞こえるのかも。

 ヴィオラ・ダモーレ(viola d'amore )って”愛のヴィオラ”という意味でしょ?ニ短調協奏曲ももの哀しく、寂しげな旋律続きます。現物は見たことはないが、一種鼻に掛かったような甘美で表情豊か、粘着質な音色が得難い個性であります。名手モニカ・ハゲットが担当して、静謐なリュートと絡み合います。ここでの主役は明らかにヴィオラ・ダモーレであって、泣けるような旋律はこのCD中の白眉。おそらくは、この作品もLP時代現代楽器で聴いていた記憶有。

 ファゴット協奏曲は作品番号がないので、どの辺りの出典かようわかりません。いずれ、番号が付いていても馴染んでいるわけでもないけれど。とても達者なる技巧を誇るファゴットであって、この地味な楽器にはありがたい協奏的作品でしょう。ヘ長調となっているが、旋律は意外と暗く、ややスケールも感じさせる曲想。第2楽章がアンダンテなので、緩徐楽章がないような印象を受けます。ここも旋律は不安に暗転するんです。終楽章「アレグロ」が堂々たる構えの貫禄でした。

 Vivaldiをちゃんと聴いたのは、数年ぶり?古楽器はエエですね。

(2010年4月23日)

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written by wabisuke hayashi