Villa-Lobos「カイピラの小さな列車」/John Antil/Ginastera
(ユージン・グーセンス/ロンドン交響楽団)


Everest EVC 9007 Villa-Lobos

カイピラの小さな列車(ブラジル風バッハ第2番より「トッカータ」)

John Antil(1904-86濠太剌利)

バレエ組曲「コロボリー」

Ginastera(1916-86亜爾然丁)

バレエ音楽「パナンビ」組曲
バレエ音楽「エスタンシア」組曲

ユージン・グーセンス/ロンドン交響楽団

Everest EVC 9007 1958年

 Everstが誇る60年以上前の優秀録音。驚異的な臨場感、自然な高音低音の伸び。Eugene Goossens(1893ー1962英国)は「春の祭典」英国初演担当(1912年)亜米利加や濠太剌利でも活躍した往年の名指揮者。この録音も「運命」「未完成」主流の時代に意欲的な演目だったと思われます。ロンドン交響楽団も絶好調なノリでしょう。

 「カイピラの小さな列車」はHonneger「パシフィック2-3-1」と並んで蒸気機関車描写音楽の傑作!あちら欧州の都会を疾走する重厚な列車イメージに比べて、こちらアンデスの山岳を走るなんともノンビリ鄙びた田舎列車・・・いまにも壊れそうなオンボロ列車のはずが、グーセンスの手に掛かるとかなり立派な響きに変わります。著名な「ブラジル風バッハ」の一部わずか4:34。

 John Antilとは初耳作曲家。バレエ音楽「コロボリー」アボリジニたちの儀式であるコロボリーの音楽が元になって・・・オーストラリアの音楽の起源ともみなされ、大いなる自然崇拝、極彩色の音楽・・・とは勝手にネットから情報を拾ったもの。「歓迎式典」はゆったり土俗的な歩みに迫力ある金管。多様な打楽器が個性的です。(2:55)「夕星のための踊り」はユーモラスなオーボエにティンパニ、チェレスタのユーモラスかつ静謐神秘な掛け合い。後半は緊張感を増して金管のリズムが激しさを加え、ヴィブラフォンの妖しい響きが主役となります。(8:49)「雨の踊り」は変拍子の連続、打楽器のフクザツな絡み合いは「春の祭典」を連想させるところ。かなり激しい雨模様でっせ。(2:32)「トーテムの行列」はクラリネットによる静謐な始まり、淡々とした神秘。(2:26)「閉会式」は豪華な金管が打楽器の思いリズムに乗って炸裂します。この辺り賑々しくも泥臭いデーハーな迫力も「春の祭典」を思わせます。(7:54)以上5曲収録、サウンドはかなり洗練されたもの。風の精霊/日が昇る/朝の星は含まれません。ジェイムス・ジャッドの録音があるのですね。聴いてみたいものです。

 Ginasteraは南米の広大なる牧場を連想させる爽快な作品。ジセル・ベン=ドールが全曲録音を残して、心躍らせて拝聴した記憶もあります。組曲「パナンピ」。「パラナの月光」は神秘にきらきら静謐な南米版Debussy風情。生暖かい空気が感じられます。(5:33)「力の精たちの呪文」は打楽器の激しいリズム炸裂連続、ほとんどそれのみ。(1:12)「若い女たちの悲しみ、輪舞」は密やかに甘い哀しみは弦に表現され(2:27)「戦士の踊り」はティンパニのリズムに呼び込まれた闊達なリズムが切迫感を強めました。(3:22)

 エスタンシアとは南米の大規模農園とのこと。組曲「エスタンシア」に出会ったのは若き日の小澤征爾でしたっけ。「農園で働く人々」からノリノリに突き進んで、シンプルなリズム(変拍子)と旋律の繰り返しが熱気を高めます。(2:44)「小麦の踊り」は一転、静謐なフルート〜弦の落ち着いて甘い歌が絶品。(3:40)「大牧場の牛追い人」は金管と打楽器が勇壮な牧場風景を描写して躍動します。(1:48)「マランボ」とは亜爾然丁の田舎の民族音楽とのこと。変拍子連続の闊達なリズムがやがて熱狂を呼びました。(3:38)

(2022年4月15日)

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written by wabisuke hayashi