Vieuxtemps ヴァイオリン協奏曲第1番ホ長調/
第4番ニ短調(ミッシャ・カイリン(v))


NAXOS 8.554506Vieuxtemps

ヴァイオリン協奏曲第1番ホ長調
(デニス・バーク/ヤナーチェク・フィル1995年)
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ短調
(湯浅卓雄/アーネム・フィル1999年)

ミッシャ・カイリン(v)

NAXOS 8.554506

 Misha Keylin(1970-露西亜→亜米利加)による意欲的な Henry Vieuxtemps (1820-1881白耳義)のヴァイオリン協奏曲全曲録音の一枚。自身テクニシャンだったらしい作品は知名度さておき、技巧披瀝の冴えはもちろん、作品の完成度旋律の美しさに於いてPaganiniを凌駕しているとさえ感じます。カイリンのヴァイオリンは哀愁の旋律にしっとり甘く、控えめに歌って美しい。伴奏はシンプルにワン・パターン風”ズン・チャ”調に非ず、ちゃんとソロを引き立てて美しいバランス作品でした。

 第1番ホ短調。第1楽章「Allegro moderato」は穏健、オーソドックスに爽やかな旋律。いかにも技巧を要求されそうなカデンツァも雄弁でした。第2楽章「Introduction: Adagio」は短いやすらぎの緩徐楽章。湧き上がるような懐かしさのまま、アタッカで第3楽章「Rondo: Allegretto」へ。表情は晴れやかにややノンビリとした風情が漂いました。オーケストラはやや響きが薄く、もっさりしているけれど、まずまず誠実なサポートぶり。(24:16-3:04-12:58)

 第4番ニ短調。第1楽章「Andante - Moderato」の序奏は清潔に哀愁の始まり。湯浅卓雄のオーケストラは前曲より雄弁に充実しておりました。4:37時点ようやくしっとりソロが登場。勇壮雄弁な風情は切ないミニBrahmsな感じ。白眉は第2楽章「Andante religioso」の夢見るようなハープとのシンプルな対話、静謐な囁きでしょう。第3楽章「Scherzo: Vivace」は細かい音形が疾走して息付く間も与えぬテクニックの冴え、躍動も素晴らしい。中間部はホルンを伴って憧憬の風景が広がりました。第4楽章「Finale marziale: Andante - Allegro」は第1楽章の静かな序奏が回帰して、ティンパニも大活躍。晴れやかなヴァイオリン・ソロが歌って締めくくりました。カイリンのヴァイオリンはバリバリ濃厚に〜といった風情に非ず、達者な技巧にやや線は細めにデリケートなもの。(10:23-6:29-4:39-8:12)

 ・・・と、まぁ全7曲揃えて録音してくださったヴァイオリニストに敬意を評したけれど、オーケストラ伴奏はちょいと厳しいっす、正直なところ。

(2023年10月7日)

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written by wabisuke hayashi