Verdi 「レクイエム」
(イヴァン・マリノフ/ソフィア歌劇場管弦楽団/合唱団)


MUSICA di ANGEL  99190 Verdi

レクイエム

イヴァン・マリノフ/ソフィア歌劇場管弦楽団/合唱団/ネディアルコヴァ(s)/ニノヴァ(s)/ドイコフ(t)/ポノルスキ(b)

MUSICA di ANGEL  99190 (録音年不明、購入価格忘却。組み物でものすごく〜おそらく@200〜300円相当で〜安く個人輸入したはず)

 音楽を心より楽しめるようになること、新たなる作品に馴染むためには、おそらくは”たくさん聴くこと”が必要なのでしょう。ほんの偶然だけれど、ワタシはここ一ヶ月くらいで、トスカニーニ盤(1940年)、ライナー盤(1960年)、ネニア・ゼナーナ盤(2001年)・・・手許に眠っていたCDを続けて聴く機会があって、その流れで取り出したもの。数年前の自らのコメント↓は赤面するほど頓珍漢であって、でも、それはそれでサイト読者からコメントをいただけるからありがたいものです。現役CDとして未だ入手可能。

 これは驚くほど”イタリア・オペラ風”な演奏であって、それは歌い手の劇性溢れる表現による印象でしょうか。これほど雄弁に、輝かしく死者を悼む世界があって良いのか、というくらい甘美な旋律が朗々と表現されます。これはソロ4人とも文句なしだけれど、とくにエミール・ポノルスキ(b)の圧倒的貫禄が感銘深い。音質について”とくに良くも悪くもない音”〜とは失礼なる評価でして、現在なら自然な会場残響と奥行きがあって、聴き疲れしない立派な音質であることは理解できます。

 ソフィア歌劇場合唱団の充実ぶりには驚くばかり。ここ最近、いろいろと声楽作品を聴いてきて、絶叫タイプはいやだな、透明でヴィヴラート少ない粒の揃ったアンサンブルを・・・などと思ってきたが、それをぶち破るような”迫力と雄弁と集中と繊細”が一体化した、理想の世界がここにありましたね。ヴィヴラートたっぷりだけれど、その高貴なる集中力と豊かな表情に胸打たれるばかり。

 つまり、この演奏は声楽を聴くべきものであって、残念ながら管弦楽が少々弱い。怒濤の金管ラッシュ大爆発にはほど遠く、トランペット連続ワザの「Tuba mirum」も迫力押し出し不足か。(おそらく声楽に馴染みいっそう少なかった数年前、ワタシはこの点を”個性不足でオケの厚みも足りない。おとなしい”と評したのでしょう)でもね、これは声楽作品だから、これだけ立派な声楽陣が揃っていれば問題はほとんどないんです。

 ラスト「Libera me」でメゾ・ソプラノが入ると、ライナー盤では背筋が寒くなるような残酷なる切迫感が溢れたものです。その後、叩き付けるような全声楽、管弦楽のラッシュがやってくるが、やはり少々線が細いでしょうか。(金管がおとなしい)そして、冒頭の旋律が回帰するが、その切実なる静謐の感動は筆舌に尽くしがたいものでした。

 結論として、新たにこの作品に接しよう、とする音楽愛好家にとって、福音のような一枚。価格、音質、そして声楽の充実には比類がない。

(2006年2月23日)


 歌ものは苦手ですが、宗教曲はマシなほうで、なにせ歌詞を気にしなくてもいいでしょ。だからバッハのカンタータ方面も美しい旋律と、人の声の動きを楽しめます。レクイエムも、モーツァルトから始まって、フォーレ、ブラームス、なんかもずいぶんと馴染んだし、ペルコレージの「スターバト・マーテル」も素敵です。ワタシみたいな無宗教、東洋の外れに住まいするものでも、敬虔な気持ちが伝わってくるところが音楽の底力。

 このCDは、たしか10枚組くらいのそんな宗教曲的なものばかり集めたもので、安かったんですよ。(でも届いてみたら3枚分手持ちとだぶっていて、人にあげました)ヴェル・レクも名曲ですよね。劇的で、スケールが大きくて、彼のオペラのテイストそのままで、「諦観」とはちょっと違う感じ。(むしろ壮大な悲劇、といった趣)古今東西の名指揮者が名盤を残しているのはご存じの通り。

 MUSICA di ANGELというレーベル、得体が知れなくてきっと借り音源ばかりと思います。演奏者のみの情報で、じつにそっけない無解説ぶりがいかにもお安いCD。日本では馴染みの薄いブルガリアの演奏者ですから、バルカントーン辺りの録音でしょうか。音質的にはフツウのステレオ録音で、1960年代の雰囲気。とくに良くも悪くもない音。全78:50でCD一枚に納めてくれたのはありがたいもの。

 この曲、もちろん声楽が大切ですが、金管が会場の空気を揺るがすようなオケの迫力も楽しみ。有名な録音は、たいていウィーン・フィルとかベルリン・フィル、スカラ座オケ等々定評のある実力オケが目立つでしょ。だから、こうした普段聴く機会の少ない歌劇場(おそらく伝統ある実力派オペラ・ハウスでしょうが)での録音は楽しみにしておりました。イヴァン・マリノフもいかにも東欧的な名前ながら初耳の人。きっと「オペラ畑一筋」の人なんでしょう。

メールにて情報をいただきました。マリノフはむしろ作曲かとして著名であって、けっこう作品も多いとのこと。

 で、演奏はどうかというと、これがまぁフツウの水準。全体として手堅くまとまっていて、ソロ、合唱団とも声楽の充実しているし、オケのアンサンブルもそう悪いものでもありません。しかし、弦の細かいパッセージでのもたつきや、金管の迫力不足は否めなくて、こんじんまりとした演奏なんです。個性不足でオケの厚みも足りない。おとなしい。当たり前でしょうが、こういった曲はもっと録音が良好であることに越したことはない。

 ま、すべての演奏がトスカニーニとかライナーのような、凄い演奏である必要はない。少々おとなしい演奏も、それはそれとして楽しめばいいんですよ。

 曲の味わいを損ねて誤解させるような、クセのあるものじゃありませんから、これはこれで(価格も安かったし)存在価値はあるCD。わざわざ探して手に入れるようなものではないでしょうけれど。声楽は一流で文句なし。なにより、珍しいのが個人的には嬉しい。

(2000年5月12日更新)


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written by wabisuke hayashi