Messiaen「トゥーランガリラ交響曲」(ホルスト・シュタイン/北ドイツ放送交響楽団/
イヴォンヌ・ロリオ(p)/ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)1986年ライヴ)


Messiaen

トゥーランガリラ交響曲

ホルスト・シュタイン/北ドイツ放送交響楽団/イヴォンヌ・ロリオ(p)/ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ)

1986年11月16日 ハンブルク音楽堂ライヴ(エア・チェック・カセット)

 メシアンは最近まで存命だった現代の作曲家ですが、演奏機会は多かったと思います。この作品は「世の終わりのための四重奏曲」と並んで、よく知られている作品でしょう。花火が夜空に舞い散るかのような、華々しく美しい作品。楽器編成も、80分近い演奏時間も巨大な作品。クーセヴィツキーの委嘱、1949年バーンスタイン/ボストン響によって初演、とのこと。

 CDはそれなりに出ていて、ワタシは(レギュラー価格で!)小澤/トロント響(1967年録音)の演奏で馴染んでおりました。(BVCC5523〜作曲者自身による詳細な解説に価値がある)廉価盤では、フロマン/ルクセンブルグ放送管のVOX録音が存在しますが、CDにはなっていないはず。(残念。ヴィトのNAXOS盤が出たが、2枚組じゃねぇ)

 ホルスト・シュタインの録音は、きっとタイマーを駆使して録音したんでしょう。白石美冬さん(この人の解説は淡々として、的確で好き)の解説も収録されていて、記憶はないが1980年代に録音したはず。テープはフジ・フィルムのそうとう使い古したものだけれど、音質的には問題なくて、このたび無事MDで保存しなおしました。

 だいたい、シュタインみたいなオーソドックスなドイツ系の人がこんな曲を演奏するのは珍しいし、北ドイツ放送響もシュミット・イッセルシュテット以来、ドイツ・オーストリア方面の作品ばかりやっているような印象がありましたね。ま、放送局のオケだから、こういった意欲的な作品もちゃんと取り上げるんでしょう。興味津々。

 ライヴ〜放送録音〜NHK-FMでの放送〜カセット(あまり高級ではない)への録音、という段取りを踏んでいるのですが、音質に問題はありません。(最近、歴史的録音の聴きすぎか)小澤の録音はさすがに少々古くなって、奥行き、厚みではむしろこちらのほうが歯ごたえがあるくらい。

 それにオケの厚みがちがう。このオケ「ベルリン・フィルより上」と評価する人がいるくらい、実力派なんです。妙に色っぽすぎること(これはカラヤン時代か?)もないし、ここでもしっとりとした響きが美しい。金管が活躍する「うるさい」楽章も多いのですが、ヒステリックにならずに余裕を感じさせます。重心も低い。「愛の眠りの園」なんかは極限のデリカシーで、シルクのような弦、地味ながら繊細な木管が聴きもの。ハラリハラリと、ピアノがその上で「鳥の歌」を静かに奏でます。

 現代に近い作品では「春の祭典」という別格人気曲がありますが、オンド・マルトノという特殊楽器(ヒューンという効果が素晴らしい)を使うというハンディはあるものの、演奏機会は多い。「春の祭典」の激しいリズムは(複雑な変拍子ではあるが)、野性的であり、現代のロックに一脈通じてノリやすい。「トゥーランガリラ」の打楽器は、激しい部分も多いが、もっと多彩で一筋縄ではいかないおもしろさもあります。(トゥーランガリラ 2の激しい打楽器群の複雑なリズム)ピアノの独立した使い方は「ペトルーシュカ」よりいっそう興味深い。(ロリオのピアノは、ドキドキするほどエキサイティング)

 より知的で官能的で、わかりやすい曲。冒頭のトロンボーンによる循環主題は何度も繰り返されてお馴染みだし、「花の主題」と呼ばれる第2循環主題、「愛の主題」である第3循環主題、あちこちと顔を出して全10楽章、かならずどこかで聴いたことがあるような気持ちになる。シュタインの表現は明快で、バランス感覚抜群、先鋭になりすぎず、アンサンブルの完成度は高い。楽しい、ある意味オーソドックスな演奏。

 曲が曲だけに、うるさい演奏になりうる可能性を持っていますが、指揮者、オケの個性でしょうか、晦渋だったり独りよがりの演奏に陥っていません。(テープの劣化によって、高音がダメになっているだけかも知れないが)この曲は、ロリオ姉妹が必ずソロを務めていたものですが、この録音がラストでしょうか。これからの若い世代は、ソロイスツの変化だけでなく、この曲自体を「昔からあった古典的な名曲」としてノビノビと楽しく演奏してくれることでしょう。(2000年12月9日更新)


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written by wabisuke hayashi