Wagner「タンホイザー」「トリスタン」「ヴァルキューレ」「神々の黄昏」より
(トスカニーニ/NBC交響楽団/トローベル(s)メルヒオール(t))
汝、ダブリ買いを恐るるなかれ
Wagner
歌劇「タンホイザー」より「序曲」
楽劇「トリスタンとイゾルデ」より「前奏曲と愛の死」
楽劇「ヴァルキューレ」より「ヴァルキューレの騎行」(以上1944年5月25日ライヴ)
第1幕第3場(1941年2月22日ライヴ)
楽劇「神々の黄昏」より「夜明けとジークフリートのラインへの旅立ち」(1944年5月25日ライヴ)
抜粋(ブリュンヒルデとジークフリートの2重唱〜ジークフリートの死と葬送行進曲〜ブリュンヒルデの自己犠牲)
トスカニーニ/NBC交響楽団/トローベル(s)メルヒオール(t)(1941年2月14、24日ライヴ)
HISTORY 20.3192-HI 10枚組3,350円のうちの2枚
往年の歴史的録音ものは、減価償却が済んでいるのか、はたまた著作権が曖昧なのか、いろいろと安く出てくれるので思わず買ってしまいます。ワタシにとってやや縁遠い存在であるトスカニーニも、こんな価格だったら思い切って買っても後悔しない。
全10枚、どれも楽しめるのですが、このワーグナー2枚にはやられました。常識なんでしょうが、RCA盤(ワタシが悩んで楽しめなかったCD。1941年ライヴ)と半分同じ音源。ワタシのような、ヤクザな音楽愛好家がよくやる交響曲第18番「宿命−ダブリ買い」。あ、一枚分損した、と後悔してもあとの祭り。
ところが人間万事塞翁が馬、瓢箪から駒、藁しべ長者、棚からぼた餅、等々、古来からの言い伝えもあるが如く、なにが幸いするかは人生わからないところが面白み。いやはや、正直云ってトスカニーニに開眼しました。凄い。
まず2枚目冒頭、ワーグナーでは一番気に入っている「夜明けとジークフリートのラインへの旅立ち」(1944年ライヴ)からスタート。ところが、テンションの高さが尋常じゃない。感興がわき上がって、溢れる感じ。
ワタシはアメリカのオーケストラで演奏するワーグナーはあかん、と思っておりました。いえね、たしかにセル/クリーヴランドやライナー/CSOの演奏は立派ですよ。でも、金管の音色がワーグナーしてないな、と。
でもイタリア人のワーグナーでしょ。(狭量なドイツ民族主義の亡霊よさらば)しかもトスカニーニ。なによりも楽譜を大切にして、明快によく歌ってくれる。金管はたしかに明るすぎるけれど、眼前に夜明けの情景が浮かぶ、まなじりを上げた若者の決意が浮かび上がる。歌。歌。歌。もう、一気に引き込まれてしまって、コンポの前を動けない。
ここで脳味噌の中のスイッチが入ってしまったようで、そのままRCA盤と同じ(はず)の音源に突入したけど、精神的な高揚は揺るがない。以前は、立派なアンサンブルに反比例するように、空虚な気持ちが広がったのがウソのように、あらゆる音、旋律が意味深い。ブリュンヒルデの自己犠牲まで、あっという間に行き着いて心が洗われるような気持ち。
これは?と不思議な気持ちでRCA盤と比べてみてわかったのは、音質でした。これはミキサーの思想の違いでしょうか。RCA盤は、個々の楽器の音は明快ながら奥行きがなくて、薄い音。トローベルの声なんか、キンキンしちゃって印象は全く変わってしまっている。
HISTORYってどんなレーベルか素性はわからないけれど、金管はずっと深みがあるし、全体として「音に骨がある」状態。一瞬、昔の録音であることを忘れるほど明快。
こうなりゃ一枚目もいただきで、タンホイザー序曲冒頭のSPの派手な傷音も微笑ましいもの。(SPからダイレクトで復刻した、ということかな)オーケストラの圧倒的な力量にノックダウン。
「トリスタン」は、トスカニーニのイメージとはなんとなく合わないようだけど、弦の明快なアンサンブルが気持ちがよく高揚する。ていねいな旋律の歌わせ方。(低音ノイズがあるけど、全体の音のイキを大切にした復刻らしい)
「騎行」は、想像通りオーケストラのメカニック全開の快演。ときどき、トスカニーニのかけ声らしきものが聞こえるのはソラ耳?
RCA盤と同じ音源であるはずの「ヴァルキューレ」は、「黄昏」と同じ印象で、音に腰がある。
これをきっかけに、ほか8枚のCDも楽しんで聴けました。ワタシが持っているフルトヴェングラーの劣悪なライヴより、こちらのほうがずっと楽しめる。
(フルトヴェングラーのワーグナー寄せ集め)
雑誌で見たんですが、NAXOSが復刻しているトスカニーニもなかなか音質が良いらしくて、こりゃ買い、ですかね。楽しみが増えました。
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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