Bruckner 交響曲第9番(ティントナー) 


NAXOS 8.554268 Bruckner

交響曲第9番ニ短調(ノヴァーク版)

ティントナー/ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

NAXOS 8.554268  1997年録音 800円で購入

 ワタシのティントナーへの評価は大甘で、正反対の意見も多いらしい。他のかたのHPでチラリと拝見しました。そもそもBrucknerが好きで、たいていの演奏は楽しんでしまうし、ティントナーの録音は新しいから聴きやすい。恣意的なクセを感じさせず、自然体なのも好意が持てます。

 この第9番も、ワタシは悪くないと思います。でも、厳しい評価も理解できないわけじゃない。全体に地味でショボい感じはあって、とくに弱音では線が細すぎてテンションが落ちる印象がある。録音かもしれないし、80歳を越えた指揮者の気力・体力問題もあったのかも知れません。もちろんオーケストラの性質もあるでしょう。

 それに、ヨッフムの演奏と比べるとよくわかるのですが、金管の大爆発というか、ここ一発のダメ押しも物足りないのは事実。「壮絶な」〜というような場面が少ない。とくに第9番では、その辺りは気になるかも知れません。RSNOのアンサンブルは素直な響きが整っていて、どうしようもない演奏ではないが、個性に不足します。

 第2楽章は、怒濤の熱狂で激しいリズムが欲しいところ。ワタシは、ティントナーの演奏に必要にして充分なチカラを感じるが、「怒濤の熱狂」でないのは事実でしょう。終楽章は、抑制が利いていて美しい演奏ですが、金管のファンファーレの絶叫に、目眩を感じるような切迫感は足りないかも。

 木管も金管も弦もスッキリ。この曲には例えば、ときにシミジミと歌うフルート、豪快に割れるホルン、極限に深い呼吸の弦を求めたい場面があります。たしかにそれは感じられない。響きが濁らないのはよいが、微量栄養素が足りないのか。Brucknerは旋律が素朴なので、個性的なうねりで味付けして欲しいとも思う。

 でもね、こういう演奏は聴き飽きないもんなんですよ。細部まで仕上げがていねいで、繊細かつ美しいBruckner。ここまでクールで飾りがなく、枯れて、密やかな演奏は滅多にないでしょう。グイグイと聴き手を引き込むような強引さはないが、こちらが求めれば答えはそこに隠されてある。

 評判の良くなかった演奏なので、意地でかばってみました。3晩続けて聴きました。音楽はなにからなにまで「超名演」で聴くことはない。(2001年2月16日)


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written by wabisuke hayashi