ティル・フェルナー・リサイタル(2000年)


Bach

平均率クラヴィア曲集第1巻より
前奏曲とフーガ 変イ長調BWV862/嬰ト短調BWV863/イ長調BWV864/イ短調BWV865

Beethoven

ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 作品110

Bach

平均率クラヴィア曲集第1巻より
前奏曲とフーガ 変ロ長調BWV866/変ロ短調BWV867/ロ長調BWV868/イ短調BWV869

ティル・フェルナー(p)

2000年5月16日 ウィーン・ムジーク・フェライン・ブラームス・ザール・ライヴ〜FM放送からエア・チェック

 1972年生まれの期待の若手ティル・フェルナー(Till Fellner)のライヴ。1998年に来日済み。個人的には、もっとも最近のエア・チェックで既に2年前か。FMの受信状況がよろしくない(ま、ちゃんとアンテナ張ってないし。以前みたいに)のと、そもそも放送プログラムを真剣に探さない、放送時間に帰宅していない(これはタイマーを使えばいいだけだけれど)云々で、もうやっておりません。

 CD在庫も増える一方だしね。閑話休題、これはじつに渋い演目です。ドイツのBB。フツウ若い人は浪漫派とか、バルトークとか、もしくはテクニック披瀝用にLisztとか、そんなん多いじゃないですか。真正面からBB。若手には難関でっせ。まだ、Mozart に手を出さないだけマシか・・・って、他の演奏会ではやっているかも知れないが。

 ま、音質の関係かも知れない(?違うよなぁ)が、じつに内省的であり、落ち着いて、静かな味わいのピアノであります。浪漫風甘く、あま〜い表現は全然ないし、かといってバリバリ叩きつけるようなド迫力でもない。かといって「ひ弱」さは感じさせわけでもない。正統派であり、真正面から奇をてらわずに勝負!いえ、淡々と演奏していることが感じられます。

 音色は美しい。が、ホロヴィッツのような、上質の生チョコみたいなのを想像されると困りますね。もっと、若くて清潔。若いんだから、もっと華やかさがあって良いのに・・・なんて思うくらい、聴いていて気持が落ち着きます。静謐、静寂、かつ禁欲的。これはBach に相応しい表現じゃないですか。畏敬、なんていう言葉も浮かびます。もちろん、繊細、も。

 Beethoven の最晩年の傑作のひとつ、変イ長調ソナタって、こんな曲でしたっけ?で、ブレンデル盤(一番旧い録音)を取り出したら、ああ、そうだよね、と。もっと、暖かくて濃密な作品だった記憶有。数年前のワタシのサイトコメントにも「こりゃBach の世界だね」といい線突いてます。ところがね、フェルナーはとても寂しい印象がある。

 あまり評価の定まったもの(いかに若い頃の録音とはいえ)と比較するのはいかがなものか、と思います。この作品では、やや淡々さの度合いも過ぎて、散漫な印象がないではない、というか、聴き手はより一層の集中力を問われるのでしょう。つまり、味が薄い。あくまで録音上ではそう聞こえます。(ナマでの印象はわからない)やや旋律が流れ気味か?もっとしっかりとした味付けの方向性を望みたいところ。

 ・・・とまぁ、エラそうなことをいったが、これだけ若くてリキみもないのは素晴らしい。MD一枚分、なんやらとにかく気持が落ち着きました。(2003年2月14日)


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written by wabisuke hayashi