Telemann 「受難オラトリオ」(シェファー/フライブルグ・ヴォーカル・アンサンブル)



Telemann

受難オラトリオ

シェファー/フライブルグ・ヴォーカル・アンサンブル/L'Arpa Festante Mu"nchen
ローヒェル(s)デール(t)ポスマイヤー、シュミット(br)

BEILLIANT 99521 録音年不明だけれど、DDDとの表示。 2枚組600円(Bayer Record原盤)

 クリスマスだし、Bach でも聴きましょうか、例年のごとく。なんて考えながら棚を見ていたら、こんなCDが出てきました。ちゃんと聴かなくちゃ。

   「Pssions-Oratorium」は「受難オラトリオ」の訳であっていますか?このCD、例の如しでなんの解説も付いていないが、「受難曲」というくらいだから、キリストの受難を表現した例の筋立てなんでしょう。同時代のBach 「マタイ」「ヨハネ」があまりに有名だけれど、なんか全然雰囲気が違っていて、これは流派の違いなのか、それとも作曲者の個性の違いなのか。全2時間ほど。

 牧歌的で、田園風景のようなノンビリとした味わいなんです。「おお頭は血潮にまみれ」(これ、同じ旋律が出てきます)とか「我らは涙を流してうずくまった」「主よ、哀れみたまえ」(Bach 「マタイ」より)なんて、もう本当に胸を締め付けるような劇的な旋律で、あまりの厳しさに逆に甘美な苦痛さえ感じることがあるでしょ。それに対して、こちらはもっと快活で、平明で、親しみやすい、といっては失礼か?

 ワタシなりのド・シロウト感想だけれど、教会音楽といった味わいじゃなく、一般の舞台で上演される「宗教劇」みたいな味わいがあって、「オラトリオ」というより歌劇の雰囲気が感じられました。ま、誰がキリストやらカヤパだか、ペテロだかようわからんが、雄弁・多彩でノリノリの明るい旋律が目立ちます。コラールの部分は少なくて、短いんです。

   古楽器によるバックがとても楽しくて、お馴染みの彼の協奏曲と同じ味わいでした。おそらく実演でも、演奏者自身も楽しいんじゃないのかな、器楽曲としての見せどころが多くて、にぎやかなんです。演奏的には、豊満で厚みがあって、時に見られる古楽器系の痩せてスカスカなものとは違いました。

 歌手陣も各々雄弁です。もちろん後年のイタリア・オペラとは方向が違うが、線香臭さはまったくなくてのびのびと楽しげな歌。録音は優秀なほうだと思うが、繊細さに欠けて、ま、音が前に出過ぎるといった贅沢な感想を持ちました。


 「Du edles Angesichte」(かつてはかの大いなる)のコラールがBach 「おお頭は血潮にまみれ」と同じ旋律・・・っていうか、歌詞的にも同じ部分ですかね、これはずいぶんとサッパリとしていて、単なる演奏の違いでしょうか。リヒターの「マタイ」(1958年)を取り出してみたら、もう身動きができない。全身全霊で人類の罪を嘆いているようで、ワタシのような無宗教傍若無人人間でも「嗚呼、今年もウソをいっぱいつきました。ごめんなさい」といった思いに駆られます。

 これはBach の音楽のチカラかな?それともリヒターの入魂か。これから他の録音を聴いてたしかめます。でも、そう毎日毎日深々と反省ばかりしていては、生き馬の目を抜くような世間を渡っていけません。Telemann の「受難オラトリオ」は気楽に聴けてよろしいと思います。(2001年12月28日)


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written by wabisuke hayashi