Telemann 組曲イ短調/協奏曲集
(リヒャルト・エドリンガー/カペラ・イストロポリターナ)
Telemann
ヴィオラ協奏曲ト長調(ラディスラフ・キセラク(va))
組曲イ短調(リコーダー、弦楽器と通奏低音のための) TWV55 A3(イルジー・スティヴィン(rec))
3台のヴァイオリンのための協奏曲ヘ長調(「食卓の音楽」第2集)(アンナ・ヘルブリンガ/クイード・ヘルブリング/アレクサンダー・ヤブロコフ(v))
2本のホルンのための協奏曲変ホ長調(「食卓の音楽」第3集)(ティルシャル兄弟(hr))
リヒャルト・エドリンガー/カペラ・イストロポリターナ
NAXOS 8.550156 1988年録音 購入価格失念(833円か?)
ワタシはバロック辺りの作品は大好きなんです。TelemannはBach にそっくりでして、しかも音楽の表情が親しみやすい。このCDはNAXOS初期発売(現役らしい)であって、ワタシにとってもCDを集め始めた頃の懐かしい一枚。(知名度ともかく、音楽愛好家が聴くべき音楽を手際よく一枚にした、当時のNAXOS方針らしいもの。現在なら、古楽器団体で「食卓の音楽」を一気全曲録音している・・・黄金時代管弦楽団)演奏団体は(当時NAXOSの主力であった)カペラ・イストロポリターナ(ブラティスラヴァのスロヴァキア・フィルのメンバーを主体に1983年創立・・・とのこと。最近どこへ行ったのか?)。
まずヴィオラ協奏曲のキセラクが艶やかな響きで魅了します。この作品、Bartokの作品が初演されたときに「Telemann以来の傑作!」と評されたくらいだから、ほんまの名作なんでしょ。ヴィオラは管弦楽の内声部を担当する、ひときわ地味な存在だけれど、しっとり瑞々しく、落ち着いて豊かな味わいは作品自体の魅力+キセラクの実力(控えめではあるが、セクシーで鈍い輝きがある)が光ります。「ラルゴ」のゆったり余裕の表情、リキみない躍動に充ちた「アレグロ」、遣る瀬ない「アンダンテ」・・・バックは現代楽器であり、穏健派(激しいアタックや、リズムを強調しない)だけれど、しっとりソロを包み込んでおります。(以下の作品も同様)
組曲イ短調は、リコーダーをソロに据えた管弦楽組曲となります。これぞBach と激似!(時代の音楽なのかな?)であり、「食卓の音楽」にも類似作品は見られます。冒頭に「序曲」(緩急緩のフランス風)を据え、短めの舞曲が続く・・・(ここではあと7曲)馴染みの構成。フルートをメインにしたBach 管弦楽組曲第2番ロ短調にも似るが、作風故か、それとも穏健派演奏表現のためか、劇的深遠なるテイストは薄くて、親しみやすい旋律頻出は、これはこれでTelemannの魅力だと思います。
スティヴィン(読み方エエ加減=ほかも同様)は清冽であり、しっかりとした(おそらく完璧な)技術。どんなに快速な楽章でも静謐であり、どことなく寂しげなる作品の魅力を充分引き出しておりました。
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3台のヴァイオリンのための協奏曲ヘ長調は、これはBach にはない優雅でノンビリとした味わいがあって、とても美しい作品です。次に収録される2本のホルンのための協奏曲変ホ長調〜名手ティルシャル兄弟(hr)のちょっと粗野で素朴な味わいのホルンは、いっそう説得力が深いが、両作品とも演奏家知名度では想像できないほどの楽しい演奏でした。
ワタシは大Bach をココロより愛するものだけれど、時にそのあまりの偉大さ、立派さ(出来の良すぎる親父に、筋の通った説教をされているみたい・・・という比喩は何度も使った)に、時には鬱陶しさを感じたものです。(演奏表現の問題かも)Telemannは似たような作風でありながら、素直に楽しめる(ような気がする)のは、ワタシの先入観でしょうか。