Tchaikovsky 交響曲第4番ヘ短調
Prokofiev 組曲「キージェ中尉」(ロリン・マゼール1981年)


SONY 32DC299 Tchaikovsky

交響曲第4番ヘ短調
クリーヴランド管弦楽団

Prokofiev

組曲「キージェ中尉」
フランス国立管弦楽団

ロリン・マゼール(Lorin Maazel, 1930ー2014亜米利加)

SONY 32DC299 1981年録音

わずか2年前にTELARCに同じ第4番を録音して、オーケストラも同じ、なぜ短期間に再録音したのか理由は不明です。この作品を十八番としてベルリン・フィル、ウィーン・フィルとの若い頃の録音も存在します。第1楽章「Andante sostenuto - 」”運命のファンファーレ”から充実したオーケストラがしっかり鳴り切って洗練されたアンサンブル、露西亜風暑苦しい泥臭さとは無縁、音質も極めてクリア。第2楽章「Andantinoー」もウェットになり過ぎないバランス感覚、第3楽章「Scherzo」はやや速めのテンポに、弦のピチカートがぴたり足並み揃えて完璧な技巧。第4楽章「Finale: Allegro con fuoco」頭の全奏がド迫力な切れ味、爽快に鳴り渡って響きに濁り皆無。音質極上、上手いオーケストラやなぁ。当時マゼール51歳気力体力充実していたのでしょう。圧巻の感動が押し寄せました。全集ボックスものに収録されるけれど、意外なほど不遇な、入手困難な一枚。17:18-9:05-5:17-8:42。

Prokofievは仏蘭西のオーケストラ、「キージェの誕生」(3:51)「ロマンス」(4:21)「キージェの結婚式」(3:01)「トロイカ」(3:06)「キージェの埋葬」(5:41)抱腹絶倒のウソ話はしっとり表情豊かにユーモラス。響きの軽さ、色気がまたアメリカのオーケストラとは違った個性、これも音質最高。ここのところ旧ソヴィエットのライヴ辺り精力的に聴いていたので、洗練された響きに耳が洗われるようでした。(2021年5月「音楽日誌」より)

 1980年辺りはディジタル録音が本格化した時期、自分にとっては”新録音”の感覚だけど、じつは既に40年が経過して、昔馴染みの音楽家も次々と鬼籍に入っております。若い頃は気恥ずかしく感じたTchaikovskyの甘美な旋律も好んで拝聴するにようになって、自分にとっての鉄板の基準はエフゲニ・ムラヴィンスキー、それは露西亜風ローカルな個性の範疇を超えて、近現代オーケストラの技量限界超えを眼前に示されたものでした。こちら偉大なるジョージ・セル(1897ー1970洪牙利→亜米利加)逝去から10年を経、マゼール壮年の気力体力充分な記録に圧倒されました。

 上記「音楽日誌」コメントに加えることも少ないけれど、2管編成なのに大きく響き渡る名曲、全体としてテンポは中庸にオーソドックスな演奏と感じました。第1楽章「Andante sostenuto -」は鳴り渡る管楽器による「運命のファンファーレ」、金管はムラヴィンスキーのように強烈金属的刺激的に響かぬマイルドなバランス感覚、そのクリアな力強さ、自在にテンポを揺らせても不自然を感じさせぬ統率と、オーケストラの技量に感服いたします。この作品は幾度録音しているマゼールの十八番(おはこ)センスは都会的に洗練されております。

 第2楽章「Andantino in modo di canzona -(歌の様式によるアンダンティーノ)」冒頭旋律は途方に暮れて哀愁たっぷり、第2部の明るい旋律対比も肩の力抜けて、意外と淡々とした表現であります。粘着質風情に非ず、繊細にサラサラと終了しました。第3楽章「Scherzo: Pizzicato ostinato. Allegro - Meno mosso」はやや速めのテンポに、弦のピチカートがぴたり足並み揃えて完璧な技巧、とは以前のコメントそのまま。途中木管の剽軽な行進、そして金管も参入して、この辺りクリーヴランド管弦楽団のアンサンブル披瀝と第2-3楽章は抑制気味に、徐々にアツく盛り上げて終楽章への大爆発を際立たせるマゼールの戦略なのでしょう。

 第4楽章「Finale: Allegro con fuoco」(マゼールはアタッカを採用していないよう)。冒頭金管打楽器炸裂はぴたり縦線が揃って、あくまでクリアに濁らない、解像度の良さ、低音含め優秀録音とオーケストラの技量ををたっぷり実感させるところ。途中民謡風旋律をはさみつつ、圧巻のコーダに至って充実した響き、大音量におそらくマゼールは常にクール、爽快なフィナーレを迎えました。

 Prokofiev 組曲「キージェ中尉」も上記、以前の感想に付け加えるものはほとんどありません。こちらも優秀録音、金管の響き明るく軽快、各パートの動きは明快そのもの。ユーモラスな風情に溢れました。

(2022年1月29日)

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written by wabisuke hayashi