Tchaikovsky スラヴ行進曲 /交響曲「マンフレッド」
(アンドリス・ネルソンス/バーミンガム・シティ交響楽団)


Orfeo C895151A Tchaikovsky

スラヴ行進曲 作品31
バイロンの劇詩による4つの音画の交響曲「マンフレッド」作品58
第1楽章 「アルプスの山中をさまようマンフレッド」
第2楽章 「アルプスの妖精」
第3楽章 「山人の生活」
第4楽章 「アリマーナの地下宮殿」

アンドリス・ネルソンス/バーミンガム・シティ交響楽団

Orfeo C895151A 2013年ライヴ

 次世代の巨匠Andris Nelsons(1978ー)が2008-2015年、バーミンガム・シティ交響楽団の音楽監督を務めていたことは不覚にも認識しおりませんでした。いつくかこの組み合わせの音源は見掛けていたのにね。Tchaikovskyの交響曲は第4ー6番が発売され、インタビュー情報によると全曲録音済とのこと、第1-3番はたしかCD市販されていないはず。このオケはサイモン・ラトル(1980-1998)時代に名を上げて、立派なアンサンブルを聴かせてくださいます。音質も当たり前に極上。(先日某ネット評を見ていて、ラトルは所詮”バーミンガム”水準程度、みたいな不快なコメントを発見!なんという上から目線)

 「スラヴ行進曲」は汎スラヴ主義に基づいてセルビア民謡「太陽は明るく輝かず」、「懐かしいセルビアの戸口」、「セルビア人は敵の銃を恐れない」いかにも民族主義を煽るような引用が続いて、ラストは帝政ロシア国歌「神よ、皇帝を護りたまえ」(序曲「1812年」大砲とともに登場する旋律)で締め括られる”大仰にクサい”旋律作品。旧ユーゴスラヴィアやセルヴィアと露西亜の親和性?この辺り、国際情勢に疎いド・シロウト(=ワシ)には知識暗いところ。(勝手にリンクご容赦)ラトビア出身のネルソンスはどんな気持ちで演奏したのか、昔からよう知られた名曲として受け止めたのか(←世代的にきっとそうでしょう)ようわかりません。

 ”大仰にクサい”旋律作品〜というのが自分のイメージ、ネルソンスの手に掛かるとずいぶんと印象変わるもの。鬱蒼しっとりとした風情のまま、この人の語り口は清潔にモダーンなんです。テンポ速めなのかな?と思ったら9:31、これはヘルベルト・カラヤン(1966年)9:33とほぼ変わりません。オケの威力たっぷりに煽ったようにギラギラしたカラヤンに対して、やや軽量軽快サウンドに燃えるようなメリハリ、情熱を感じさせました。流れがスムーズ、しかし素っ気なく乾いたものに非ず、颯爽とリズムを引き締めて”新鮮”に作品を聴かせて下さいました。この印象は「マンフレッド」にもそのまま継続します。

 「マンフレッド」は交響曲第4番と第5番の間に作曲されたとのこと。サイズ的にも似てますよね。正直云うと、かつて聴いたアブラヴァネル盤に敗北して(遠い記憶では妙にユルい演奏であったような・・・自信はない)作品そのものにちゃんと馴染んでいないから、これはお勉強のつもり。

 劇的なファゴット+バス・クラリネット(「マンフレッド主題」)にて開始される第1楽章 「アルプスの山中をさまようマンフレッド」。Tchaikovskyってヴィオラやファゴットのイメージがあって、彼(か)の独特な憂愁サウンドに寄与しているんでしょう。そしていかにも劇的嘆きに充ちた序奏が延々と続いて、バスドラムのアクセントよろしく”大仰にクサい+甘い”旋律がスケールたっぷり、延々と押し寄せました。若い頃はこの風情が気恥ずかしかったなぁ。35歳の俊英はオケのコントロールに優れ、英国のオケは洗練された響きによう歌って瑞々しいサウンドに間違いなし。ラストいっそう劇的なコーダも賑々しい怒涛の迫力、オケの威力でっせ。(17:00)

 第2楽章 「アルプスの妖精」は、いかにもメルヘン、ちょいと不安げな儚い風情の木管で始まりました。これはスケルツォ楽章なのですね。ハープを伴ってメルヘン風夢見るデリケートな旋律が続きます。この辺り、わかりやすいなぁ、Tchaikovskyの旋律の泉滾々と湧き出る感じ。やがて打楽器も伴って音量を上げていく効果の上手さ、文句なし。ラスト辺り、静かに「マンフレッド」主題が顔を出しました。10:21。第3楽章 「山人の生活」は安寧のオーボエで始まる緩徐楽章。ホルンが牧歌的な雰囲気を醸し出すところ。やがて不安げな疾走も登場して、嵐到来か?それもすぐに治まって弦による優雅な歌が伸びやかに続いて、村の教会の鐘も鳴る・・・この辺り、朗々と歌って刻々と変わる場面の性格分けもネルソンスは上手いもんでしょう。10:31。

 第4楽章 「アリマーナの地下宮殿」。アマリーナってなんですか?前楽章の牧歌的風情を否定すべく、風雲急を告げる劇的な開始。細かい音型の木管+金管+打楽器が容赦なく緊張感を保って進撃いたします。太古のズドン+シンバルのシャーンも効果的、これって劇的序曲「ロメオとジュリエット」に似ておりませんか。中間部の弦によるフーガ〜デーハーな木管金管に受け継がれて、ついに銅鑼登場!この辺りの盛り上がりは割り切って愉しまないと、いかにも俗っぽいウケ狙い的風情と感じるかも。やがて例の「マンフレッド主題」が現れて”大仰にクサい+甘い”旋律ダメ押し。ご存知「白鳥の湖」ラストをいっそう大袈裟にしたみたい。コーダに荘厳なハーモニウムのコラールが入っているから改訂版?この辺り詳しくないので自信がありません。20:09。まとまりを付けるには難物な楽章と類推されて、ネルソンスの統率は文句なし、若いのにね。

 Wikiによるとバーンスタインが大嫌いな作品だったとのこと。トスカニーニはカットだらけ、真面目に演奏するにはあまりに”大仰にクサい+甘い”旋律連続、けっこう現役世代は録音していて、21世紀に演奏効果たっぷり、必要なオケの技量も充分な時代なのでしょう。”バーミンガム”水準なんてとんでもない!立派な演奏に作品を堪能いたしました。

(2018年5月13日)

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written by wabisuke hayashi