多摩管弦楽団2002冬の名曲演奏会


Wagner

歌劇「さまよえるオランダ人」序曲

Hindemith

Weberの主題による交響的変容

Brahms

交響曲第3番ヘ長調 作品90

高橋 俊之/多摩管弦楽団

2002年12月8日 パルテノン多摩大ホールにて〜当日収録分をMDにて送付いただきました。

 ワタシはサイト上でいろいろわかった風なことを書いてはいるが、じつはな〜んも知らんけんね、音楽のこと、ただ好きなだけですもん、という勢いで更新しちょります。アマオケは大好きで、なんせチケットが安い!岡山ではご招待も多いし。たまに、CDのベルリン・フィルと同等に語って評価するバカ(おっと失言。でも本音)を見掛けるが、鮮度の高いナマ音楽は別格の魅力でっせ。なにより技術を越えた、音楽に対する真摯な姿勢に打たれるものです。

 それはね、MDでもちゃんと伝わりますよ。

 いかに酔狂なワタシとはいえ、多摩って東京?岡山からはムリでっせ、行くのは。残念ながら。東京にはアマオケが100団体以上あるんでしょ?凄いね。ワタシは岡山のアマオケで充分充足しております。でもね、サイト上で知り合った妹分の「過激なる打楽器奏者」ひらもこ♪が出場すると言うし、東京方面の知り合いは大挙演奏会に行っていたから、ワタシにも「せめて雰囲気だけでも頂戴な」と、MD到着が年末も押し迫った12月29日。ありがとう。

 ウワサはね、聞いていました。「会場のバランスか、金管が突出している」とか、ひらもこ♪妹添付の手紙にも「弦が弱い」という意見もある、なんて書いてありました。そう?じゃ、せめてMDだけど、しっかり聴かせていただきますね。まず、選曲がね、意欲的じゃないの。誰が酔狂でHindemithの「Weber」なんてやるかっちゅうの。その意欲で座布団一枚。

 録音の音量がちょっと低くて、ややオフ・マイクっぽいけど、充分鑑賞に耐えます。まず「オランダ人」から、いざ。

 いきなりのホルンの深い響き、トランペットの迫力、それを凌駕するティンパニの激しい打鍵(やはり、過激なる打楽器奏者ひらもこ♪にまちがいない。面目躍如!)に驚かされます。いきなりパワー全開か。静かなる「贖罪の歌」ではややアンサンブルが頼りないが、なんのその、この団体のキモは、激しいやる気とパワーに有、と見破ったワタシ。

 たしかに弦(+木管)のバランスはちょっと弱いが、ちょっと荒々しいくらいの金管が厚みを持って存分に活躍してくれるから、このアツさは貴重でっせ。で、なによりティンパニの激打が続くこと!すんごいねぇ。ひるむことはない。この路線で行ってちょうだいな。弦はこれから強くなって欲しい。応援しまっせ。

 高橋さんの指揮は、ずいぶんと浪漫的なもので、テンポのタメ、揺れが頻出していていますね。(Brahms でもそうですね)音楽のアツさはピカイチ。ワタシ、この序曲はあんまり好きな曲じゃないが、この演奏はずいぶんとドキドキしましたね。

 で、問題のHindemithですよ。この切羽詰まった雰囲気はなに?冒頭の叩きつける粗野なティンパニ(これもひらもこ♪か?)に押されるように音楽が推進します。興奮状態は、打楽器がつぎつぎと加わって最高潮。金管の雄弁なる絶叫は言うまでもないでしょ。録音だと、木管、弦もちゃんと聞こえますよ。

 「トゥーランドット」〜木管の静かな語らい始めがいいじゃないの〜そこへ出ました!打楽器群の多彩さ、おもしろさ。東洋風のユーモラスな旋律は弦〜金管に引き継がれるが、この厚みは先ほど触れたとおり。加熱するノリ、爆発するエネルギーがなんとも騒々しい。ここ、最大の聴きもの。

 「アンダンティーノ」〜ここは木管の繊細さ(ファゴット、クラリネットが上手いんじゃないの?)、弦も幽玄な味わい出しているじゃないの。もっと自信持って弾いていいよ!途中から(こんどはちょっと控え目に)ティンパニが鳴ると、アンサンブルが引き締まりますね。後半のフルートは切ない夜の嘆きのようだねぇ。素敵。

 ラスト「行進曲」。不気味で良い感じ。ホルンは相変わらず雄弁。木管も細かい味わいだしているが、激しい打楽器が乱入するとすべてが吹っ飛びます。凄い!ワタシ、この曲もそんなに好きじゃなくて、フルトヴェングラーの天才的な録音で目覚めたが、多摩管のアツき演奏で、ほんとうに好きになりそうです。ナマで聴くともっと良いんじゃない、きっと。拍手も盛大です。


 問題はBrahms ですね。こういう有名でオーソドックスな作品には、オーケストラの実力がモロに出ます。ましてやワタシ「アンサンブル・ハルモニア」という滅茶苦茶上手いアマオケで、昨年聴いています。みんな知ってる名曲、頑張れ多摩管。

 この曲のキモはホルンとチェロなんです。(と、勝手に決めているが)高橋さんの指揮ぶりは先ほどの通り、揺れとタメが頻出する浪漫的なもの。弦がね、やはりちょっと薄い。ちょっとアンサンブルも頼りなさげ。でもね、きちんとフレーズ刻んで一生懸命やっているのが(録音通しても)ちゃんとわかりますよ。ここでも過激なるティンパニの激打健在!

 嗚呼、第2楽章アンダンテの静かな木管と弦が良い感じだね。オーボエが美しい。第1楽章より、ずっと音楽の流れが自然で繊細。これ、ナマだときっともっとヨロしいはず。トロリと甘い「ポコ・アレグレット」これ、ごめんなさい。やっぱり弦は思い切って、もっとクサく歌っていただけますか?真面目で上品な人達ばかりなのかな?ちょっと大人しいかも。

 終楽章、渾身のチカラを込めて演奏しているのが眼前に浮かびます。全体としてHindemithが荒々しいくらいの勢いで楽しませてくださったのに比べると、ちょっと大人しい演奏でしょうか。少々のミスタッチや、アンサンブルの乱れなど一切気にしないで、バリバリやっていただきたい。終楽章、中間部から(例の如しの)激ティンパニの「渇!」が入ると、一気に加熱しましたね。金管も負けじと張り合いました。

 楽しい演奏会じゃないですか。ワタシの余生中、多摩管のナマを聴く機会はあるでしょうか?嗚呼、人生は短い。(2002年12月29日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi