Beethoven ピアノ協奏曲全集(+ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版)
(オスカンプ/ベルリン交響楽団/杉谷昭子(p))



BRILLIANT Classics 99036〜38 Beethoven

ピアノ協奏曲全集 (+ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版)

オスカンプ/ベルリン交響楽団/杉谷昭子(p)

BRILLIANT Classics 99036〜38  1993/4年録音(Verdi Records原盤) 3枚組$5.97で購入

 とにかくBeethoven は苦手、と公言して憚らない厚顔不遜ななワタシ。だから、そんなに聴く機会は多くはありません。しかし、世評的に「名曲である」とされているものを、手許に揃えるのは音楽を愛するものとして当然のこと・・・・。じつは、1970年頃”極め付き”と評価されたケンプ盤(第1/2/5番〜中古各々@250にて入手)を久々に聴いて感じるところ有、「ああ、真面目に取り組まなくっちゃ」と、少々ホコリまみれの3枚組ボックスを虫干し〜そんなことろかな。

 ようはするに、Beethoven は戦闘的で前向きじゃないと聴けない、ということでしょうか。荒々しくもチカラ強い響きを、真正面から受け止められるほど、自分に自信は持てません。「うぁっ、またやっちまった」とか「すまんねぇ。ごめんなさい」みたいな毎日でしょ。そこに「皇帝」冒頭の「バ〜ン」ぶちかましが来たら引きますよ、フツウ。気持ち的に。そうでもない?

 ワタシ、杉谷さんのナマは残念ながら聴く機会を持たないが、メール情報では「かなり激しく、燃えるような演奏だった」とのこと。数年前の自分の評では「諄々と語りかけるような静謐・・・・・・・なんという静けさ!」(これは第4番)だったが、久々の再聴ではちょっと印象も変わったかな。ま、「かなり激しく」はないと思うが。

 ええっと、杉谷さんのピアノの印象の前にオスカンプのバックの件。ワタシは、この全集中(ヴァイオリン協奏曲のピアノ版を別格とすれば)第1番ハ長調が相対的にお気に入りです。若い頃、FMでルービンシュタインの演奏を聴いた(誰の指揮だったんだろう?)好印象が残っていると記憶しております。ポイントは冒頭の弦の単純なリズムと響き。疲れが溜まると、脳裏にその響きが鳴ることも・・・

 旧西ドイツの「ベルリン響」は、ザンデルリンク(現インバル)の「ベルリン響」ではありません。録音も少なくて、ほとんど知られていない存在。(VOXに数枚録音が存在する)目の覚めるような、鮮やかな技巧とか厚み・重量感(上記、ケンプ盤に於けるライトナー/ベルリン・フィル!など)とは縁遠いが、素朴で押しつけがましくなくて、おおよそヨロシい感じ。少なくとも奥行きは存分に感じました。

 前回聴取時より、オーディオ環境が変わったせいか、想像以上にソロ・バックとも完成度の高い演奏と感じました。余計なる蘊蓄だけれど、女性ピアニストによる初の全集、だそう。言われてみればそうかな?数年前の文章は、こうして読み返してみると(表現はともかく)〜そのままの印象で変わらない。とくに、テンポの遅い第4番ト長調協奏曲が印象的でした。(これも変わらない?)

 これ以上ネタの広がりもなさそうなので、このまま掲載します。恥ずかしいが。(2003年7月21日)


 このCD、BRILLIANTと意識して初めて買ったはず。だから、HPに掲載したのも開設初期の頃で、まだまだ慣れていないというか、HPの原稿増やしに精一杯というか、未熟でした。(じゃ、今は?といわれるとツライが)

 この度、なんと杉谷さんの秘書の方から「このHPを楽しみしている」と驚きのメール。杉谷さん自身も、このHPの存在もこの文書も知ってらっしゃるとのこと。こりゃマズイ。許して下さい。もういちど、ちゃんと聴きます。書き直します。以下、若干筆修正。でも、ほとんど感想は変わらず。(2000年8月25日更新)


 このCDは数年前、国内盤でも発売されていました。偶然に、杉谷昭子さんのホームページを発見、録音年や原盤の詳細がようやく分かりました。「ヴァイオリン協奏曲のピアノ編曲版が欲しい」と、日頃思っていた矢先に出会ってさっそく注文したもの。(その後、日本の店頭でも@300で出現。あちこちで見かけたから、売れことでしょう。めでたい。)

   くすんで遠くから鳴っているような地味な録音の加減か、素朴で朴訥とした味わいに溢れて独特。杉谷昭子さんのピアノは、水が滴るような美音とか、指がバリバリと鳴るような技巧を披瀝するようなタイプではなくて、トツトツと進めていきます。(技術的には不足なし)ひとつひとつの音をていねいに扱って、流したり、細部の旋律を弾き崩すようなところはありません。

 ゆったりとした楽章が上出来で、とくに第4番は遅いテンポが印象的でしょう。諄々と語りかけるような静謐・・・・・・・なんという静けさ!ふっくらとして、心に染みるようなカデンツァ。(これ、ほかじゃあまり聴けない、かなり長いもの)小声で囁くような、呟くような落ち着いたピアノ。(第2楽章) 終楽章(冒頭の愛しげなソロを聴いて下さいよ)の、柔らかな日差しでジンワリと氷が溶けていくような味わいも出色。「ささやかな幸せ」のような演奏。

 いつもは、大柄で押しつけがましい旋律が気にくわない「皇帝」。控えめで実直、暖かくて好感の持てる演奏です。自然な流れの中から、少しずつ盛り上がっていく感じ。ミケランジェリなんかの、華麗な打ち上げ花火みたいな演奏ばかり聴いていたので、これは逆に新鮮。

 第3番の3楽章はとくに好きなのですが、(これもミケランジェリの演奏で開眼!)やや迫力不足でしょうか。時には聴き手を厳しく叱っておかないと、いつも甘やかすばかりでは(ワタシのように)生意気な人間ばかりになってしまう。はっきり言って、どの曲も同じような表現であり、飽きが来ない演奏でもある。

 第1・2番辺りも上品で、この曲の普段のイメージから遠い、エレガントな落ち着きぶり。第2番って、もっと溌剌とした「若書きの曲」といった印象がありましたが、しっとりとした大人の音楽に仕上がっています。これはこれで悪くない個性。杉谷さんは、けっして声高に叫ばない人みたいですね。やはり第2楽章「アダージョ」が美しい。終楽章の軽快さは、まるで田舎のお祭りのような懐かしさ。軽快さ。

 期待の「ヴァイオリン協奏曲」。これは原曲に負けない名曲ぶり。かつてP.ゼルキン(小澤のバックが安全運転で面白くなかった)の精緻を極めたような演奏で楽しんでいました。ここでは、もともとの静かな曲調にピタリと似合って、やはり静かで瑞々しい。ここでも第2楽章「ラルゲット」が際だっていて、まるで古い山寺の参道に、ポツリポツリと雨が降ってくるような風情有。

 オスカンプという人は、初めてきく名前でした。その後いただいた情報によると、オランダ出身の若手(中堅?)らしい。録音の加減かも知れませんが、オケは地味な渋めの音色でベートーヴェンに似合っていると思います。洗練されない田舎臭い響きは、一種独特の魅力。はっきりいって技術的にはパッとしないが、協奏曲のバックとしては合格点。

 旧東のベルリン響ではなくて、ベルリンに3団体存在する「ベルリン響」のウチ、旧西のベルリン響でしょうか。ザンデルリンクのベルリン響ではないはず。

 もしこの演奏に燃えるような情熱とか、力強さを求めるようでしたら、かなり方向性が違うので覚悟の程を。また、曲ごとの個性を描き分けているわけじゃなくて、ある意味ワン・パターン。でも、こういう「味わい系」「地味渋系」「微笑系」は捨てがたい魅力があって、他ではなかなか探せません。しかもこの値段。


比較対象盤

 じつは、Beethoven のピアノ協奏曲は苦手なんですよ。でも、数組手元にある。手持ちのなかで一番好きなのは、ブレンデルの一番旧い、若い頃の録音(VOXBOX CDX3 3502)。じつに溌剌とした演奏です。LP時代からの愛聴盤。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi