Stravinsky 歌劇「ナイチンゲール(夜鶯)」
イーゴル・ストラヴィンスキー/ワシントン・オペラ・ソサエティ(1960年)


SONY 88697103112  22枚組 5,189円にて購入 Stravinsky

歌劇「ナイチンゲール(夜鶯)」(1909/1914年)

イーゴル・ストラヴィンスキー/ワシントン・オペラ・ソサエティ管弦楽団/合唱団/ローレン・ドリスコル(t)(漁師)/レリ・グリスト(s)(夜鶯)/マリーナ・ピカッシ(s)(コック)/ケネス・スミス(b)(侍従)/ハーバート・ビーティ(b)(僧侶)/ドナルド・グラム(br)(皇帝)/エレーヌ・ボナッツィ(a)(死神)(1960年)

歌劇「マヴラ」(1922/1947年)

イーゴル・ストラヴィンスキー/CBC交響楽団/スーザン・ベリンク(s)(パラーシャ)/マリー・シモンズ(ms)(母親)/パトリシア・リドー(コントラルト)(隣人)/スタンレー・コルク(t)(ヴァシーリー)(1964年)

SONY 88697103112 22枚組 5,189円にて購入

 この22枚組は2007年衝撃の廉価で発売されたものであり、ワタシは既存所有12枚分を処分して購入したものです。日常聴く機会の少ない作品もあり、しかも作曲者自らの解釈、Stravinskyのような歴史的人物が、自らの録音をほぼすべて、このような状態の良い音質で残して下さるというのは貴重な業績だと思うんです。歌劇「ナイチンゲール(夜鶯)」は、ロバート・クラフト(1997年)にて購入前に予習していたが、知名度とは別の魅力ある作品と確信しました。

 原作はアンデルセンの童話「皇帝とナイチンゲール」だそうで、第1幕「森の夜明け」、第2幕「中国の皇帝の宮廷」、第3幕「皇帝の病室」からなるロシア語(だと思う)の短いオペラ。筋の流れ的に「漁師」というのがワカラんが、あちこち節目に登場して、ラストも締め括るから”狂言回し”みたいな役割か。アンデルセンは19世紀の人だけれど、黄金の国・ジパングは当時から「精密機械」(まがいもの?)で有名だったのか。

 ワタシはオペラに演奏云々するほどの経験はないが、ロバート・クラフト→ストラヴィンスキー自演と聴いてきて、その個性の違いには気付きました。ネット検索するとブーレーズの精緻な演奏の評価が高いみたいですね。(未聴)”ワシントン・オペラ・ソサエティ”ってよくわからなくて、現在のワシントン・ナショナル・オペラのことか。それだったらけっこう著名な団体だけれど。(話しは逸れるが、ワシントン・ナショナル交響楽団もケネディ・センターを本拠とする団体だけれど、どんな関係なんだろう?)

 このオケがなかなかよろしい。次に収録されるCBC交響楽団(トロントの放送オケ?)よりずっと上手い。ロバート・クラフト盤は著名なるフィルハーモニア管弦楽団との録音(1997年)だけれど、それと比べても遜色ないどころか、演奏がクリアでとてもわかりやすく感じたものです。録音もよろしい。言語不如意なるオペラだけれど、短くて馴染み易いし、聴きどころもちゃんとあるんですよ。第1幕「森の夜明け」がDebussy風に幻想的で美しく、第2幕以降が件(くだん)の「春の祭典」風野性的なサウンドに変化しております。(以前自らコメントした”新古典的な静謐な響きを先取り”というのは言い過ぎ)まず、その管弦楽そのものがとても楽しい。

 誰でも気付くが、第1幕はDebussy風の幻想的(保守的)なサウンドであります。それでもメルヘンだけではなく、途中Stravinskyらしい粗野な旋律が(ちょっとだけ)顔を出してアクセントはちゃんとあります。作曲者による管弦楽は雰囲気で聴かせない、各パートが溶け合わない。独立して明快な主張をしていて、結果、とても乾いた、情感の薄い響きに至ります。

 夜鶯役のトロラトゥーラ・ソプラノが聴きどころ(各幕毎に出番有/とくに第2幕が凄い)でして、ま、「夜の女王」(魔笛)もよろしいが、20世紀の音楽で女声の咽の妙技を堪能できるのも一興。伝説のレリ・グリスト(s)はふっくらと輝かしい美声の持ち主であって、当時未だ20歳代ながら彼女の超絶技巧が出現すると仰け反ること間違いなし。

 第2幕は「春の祭典」ばりの不協和音やら、原始的な旋律リズム支配といっても、そう破壊的なサウンドじゃないんです。やはり”クリア”で”ドライ”、バランス感覚なのか?それとも爆発が足りないのか。一歩引いたような、やる気がないような、カルいような、そんな風にも感じます。舞台が中国だから、中華風パロディ旋律も多くて(中国人の行進)どことなくユーモラス(+怪しさ)もある。いや、楽しいっすよ、ずっと。どーせ言葉の意味はワカランのだから、大筋の流れと出演者のみ押さえて、奔放なる旋律+キラキラとしたサウンドだけ聴いていても充分楽しい。

 メカニカル・ナイチンゲールは「ぎーこぎーこ」とネジ巻いて、クラリネットが(機械的に)歌うんです。

 第3幕は、第2幕ほどの爆発はなくて、ちょっと動きが少ない。でも、レリ・グリストのアリア沢山聴けます(「ナイチンゲールの帰還」)。「春の祭典」の第2部のような旋律がちょっと回帰して、王様の病が癒えて終了。第2幕が山でした。

 歌劇「マヴラ」はプーシキンの原作による30分ほどの”オペラ・ブッファ”(喜劇)だそうです。筋書きは、娘が好きな隣の男を女装させて家に連れ込んだ挙げ句、滅茶苦茶になって逃げ出す〜といったものらしい。新古典派に入った頃の作品。CBC交響楽団って、あまり上手いオケじゃないっすよ。色気も素っ気もない、飾らない(民族的な?)旋律が続いて、ヒジョーに哲学的な(=わかりにくい)作品。サウンドが”乾いている”のではなく、音楽旋律リズムそのものがそうなんです。

 サビも盛り上がりも、情感もなし。淡々と続く対話。こんな音楽は好きなんですよ、意外と。「兵士の物語」を(ちょっと)連想しました(←ずっとあちらのほうが楽しい)。ま、ボックス”オトナ買い”したからこそ出会えた音楽。

(2008年1月18日)
 

【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi