Mozart セレナード第10番 変ロ長調 K361「グラン・パルティータ」
(ストコフスキー/アメリカ交響楽団)+バロック


VANGUARD KICC2166 Vivaldi

合奏協奏曲「調和の霊感」よりニ短調 作品3の11

J.S.Bach

主よ、人の望みの喜びよ(P.シッケレ編)
羊は安らかに草を食み(ストコフスキー編)

Corelli

合奏協奏曲ト短調 作品6の8「クリスマス」

レオポルド・ストコフスキー/彼の管弦楽団/イーゴル・キプニス(cem)
(1967年 ニューヨーク・ヴァンガード23番街通スタジオにて録音)

Mozart

セレナード第10番 変ロ長調 K361「グラン・パルティータ」

レオポルド・ストコフスキー/アメリカ交響楽団
(1966年 ニューヨーク・マンハッタン・タワーズにて録音)

VANGUARD KICC2166 2,000円にて購入

 2006年から開始した「CD在庫削減計画」は、2009年初頭「歴史的録音ボックスもの」一気処分で佳境を迎えております。けっこう追加購入しているだけれど、それ以上に(枚数は)売っている、といった手応え有。いずれ人生に音楽を愉しむべき時間は限られておりますから。レオポルド・ストコフスキーはお気に入り指揮者だけれど、往年の英DECCA録音はほとんど、歴史的録音2巻分計20枚はすべて処分いたしました。それは劣化し不自然さばかり目立った往年の”フェイズ4”録音とか、戦前太古録音に閉口した結果でもあります。21世紀は廉価盤(というか、価格相場崩壊)の時代になってしまったが、おそらくは1992年頃購入した、この”2,000円CD”に後悔なし。

 ちゃんと、しっかり聴いてあげれば、価格の多寡なんて知れている。これは音質かなり良好です。

 前半は「ストコフスキーのバロック音楽」であって、ワタシは基本古楽器系溌剌としたリズムを愛するけれど、これが別格の個性と魅力に溢れておりました。オケが上手いんですよ(彼の管弦楽団=おそらく臨時編成か、ニューヨークの録音用のオケ/RCAヴィクター交響楽団とか、コロムビア交響楽団などと名乗った?)。Vivaldi/Corelliは、悠々朗々と歌うオールド・スタイルであって、各楽章必ず(名残惜しく)リタルダンドするんです。纏綿とした歌の表情は、最近見ない陶酔であって、「クリスマス協奏曲」は充分敬虔なる気分に溢れます。イーゴル・キプニスの自在なる通奏低音が華を添えております。小編成であり、響きは濁らない。

 「主よ、人の望みの喜びよ」(カンタータ第147番「心と口と行いと命もて」)は、ストコフスキーの最高傑作じゃないのか。前者は合唱がオーボエに置き換わっていて、これだけ聴けば俄に編曲とは思えぬ完成度と、宗教的畏敬の念に充ち充ちました。ラスト、しっかりテンポを落としても違和感なし。「羊は安らかに草を食み」(カンタータ第208番「狩だけが私の喜び」) は、いっそうテンポの揺れが大きいいが、これはストコフスキーの濃厚なる表情付けなんです。リコーダーがオーボエに、ソプラノ・ソロが弦に置き換わっております。最高。

 問題は・・・「グランパルティータ」。ストコフスキーの演奏は若い頃からFMエア・チェックで馴染んできたし、我らがヴォルフガングの音楽に疑念を感じたこともない・・・はずが、華麗なる加齢を重ねた結果か?先日、著名なるカール・ベーム/ベルリン・フィル(1970年)の堅苦しさに耐えきれずオークション処分済(300円でもなかなか売れんかった)。このアメリカ響も、いまいちオケが上手くないんじゃないか〜そんな不遜な印象が時に〜

 「オケが上手くない」というのは個々の技術やアンサンブルに不備がある、という意味ではなく、各パートの自在なる自発性とか、歌心への期待からの距離であります。軽快優雅なるリズム感、メリハリだって、もう少々望みたいところ。ストコフスキーはコントラ・ファゴットにコントラバスを2本増量、更にはオーボエを1本追加していて、それはゴージャスなるバランスを狙ったものなのだろうが、それが成果を上げているとが必ずしも思えない。

 けっこうフツウだから、けっし悪くない演奏だと思いますよ。響きは明晰だし、音質も良好。この作品のキモである、第3楽章「アダージョ」変奏曲の陶酔だって感銘深い。でもね、フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(1947年)のあまりよろしからぬ録音から滲み出る、馥郁たる香りみたいなものが(ちょっぴり)足りません。

 そんな文句を(一人前に)垂れるようになったのは堕落か。Mozart は無条件幸福でエエんです。これしか座右になかったら、これで充分満足。

(2009年4月3日)

 2003年再聴。手許にどのくらいCDがあるのか数えたこともないけど、ああ、このCD一番のお気に入りかも知れない〜そんなことを考えました。隅から隅まで楽しさに溢れて、ホンワカな気分になります。屁理屈とか、下手な講釈はもう止めよう・・・・いいじゃない、これで。

 「彼の管弦楽団」〜これってなんか贅沢ですよね。現代では消えてしまった概念でしょうか。アメリカはユニオンが強いから、臨時契約のオケか、はたまたどこかのオケの変名か。演奏ぶりは達者なものです。いえいえ、昨今の古楽器風溌剌リズム感じゃないですよ。でも、良く知られた名曲を楽しませる仕掛けはタップリ。(以前の執筆↓以来おそらく4年〜さすがに古楽器もたくさん聴きました)

 前半バロックは「とことん引きずって、クサく、クサ〜く」演奏。最高です。なんど聴いても「これしかないっ」という説得力あります。ああ、これで正しい。おそらく昨今の研究成果からみれば大勘違いなのかも知れないが、とにかく納得します。楽しいから。

 「主よ〜」これはワタシにとって最高の名曲。人生の節目節目、苦しいとき、嬉しいとき、いつもいつも聴きたい。しかも、ストコフスキー編曲版こそ、この旋律に出会った演奏そのものだから、これが一番幸せ。散骨主義者だから葬儀は必要ないが、人生のお別れにはこの曲が欲しいな。

 Mozart 「グラン・パルティータ」は、アメリカ響の演奏者達の技量が楽しまめした。これ、そんなにたくさん録音はないでしょう?デ・ワールトのデビュー盤辺りが出会いか。あと、ベーム盤、パイヤール盤、ほか馴染んだ演奏は以下に記したとおり。おお、BRILLIANTのシュナイダー/ヨーロッパ室内管の録音も40枚組に収録されていたような記憶が・・・。

 演奏の善し悪しをコメントできません。ま、なるべく状態の良い音質で、のびのび演奏していただければ、ほとんどそれでOK。この曲って、演奏者の個性をゴリゴリ出すような、そんなんじゃないですよ。かのフルトヴェングラーだって、ずいぶんと素直な演奏でした。まっとうに、まっすぐに演奏すればそれだけで、いやもう愉悦に溢れてね、文句ない。

 ストコフスキーといえば「ギョッとする演奏」が思い浮かぶ(実際このCD前半のバロックがその方面か)が、Mozart ではまっとうなもんです。但し、コントラバスを2本入れているのは、現代の広い演奏会場での響きを配慮したものでしょう。(低弦の動きがとてもわかりやすい。音楽に安定感が増す)

 「Mozart は誰にでも弾けるが、どんなプロにもまともに弾けない」と言ったのは、どこかのピアニストだったっけ?ひたすら素敵な音楽に感謝できる、まっすぐな気持ちで楽しめる〜そんなCDです。ワタシ、な〜んも語ってないね。(2003年5月1日)

以下、おそらく1999年頃の文章そのまま。


 じつはこのCD、ワタシの掟破りで国内盤2,000円での購入。(なんという贅沢!信じられないバブル時代)きっと1992年くらいに購入したと思うのですが、のち1997年に輸入盤で800円で売られているのを目撃してショック。(金返せ)しかも、これ、なぜかひどい傷が付いていて(きっと落としたんでしょ)、前半がときどき音飛びするので、今度見つけたら買い直そうかな。

 この録音には、LP時代から思い入れがあったんですよ。「主よ、人の望みの喜びよ」〜これ以上ない史上最高のややす安らぎの名曲。原曲で聴いても、ヘス編曲のピアノで聴いても、なんでも最高。ストコの演奏はLP時代、たしか1,200円くらいのバロック名曲集みたいなのに入っていて、えらく気に入っていました。

 合唱部分がオーボエになっていて、編曲ものとは気付かない敬虔な雰囲気タップリ。「羊は安らかに草を食み」は、FMの朝の番組でながくテーマ曲として使われていて、「主よ」に負けず劣らずの超名曲。でもストコ盤の方が、ところどころのルバートが、懐かしそうに後ろを振り返っているようで素敵なんです。

 「ルバート」といえば、ヴィヴァルディもコレルリも凄い。これだけ思い入れタップリにテンポを引きずられると、別の曲を聴いている思い。こんな演奏ばかり聴いているから、バロック好きを自認するワタシも、最近の古楽器による演奏になかなか手が出ない。(CDが高いだけ、という気もするが)タップリして、豊かに歌うバロックもたまには良いでしょ。クササもこれだけ徹底すれば立派な芸術。
 「彼の管弦楽団」というのが、あとのアメリカ響より上手くて、立派なアンサンブル。

 (ここまでで40分。次のモーツァルトも38分ほどあるから、おそらくLP2枚分)

 ストコとモーツァルトとは縁が薄いように思えます。(きっと、録音は存在するはず)13管楽器に、更にコントラバスを2本重ねて低音を強調しているとのこと。明快でわかりやすい音楽。「グラン・パルティータ」は映画「アマデウス」で有名ですが、ワタシはこの演奏をFMで録音して、ずいぶん長い間テープで楽しんでおりました。

 LP時代は、コレギウム・アウレムのを持っていたはずなのですが、何故かこの演奏しか記憶にない。(あと、フルートの神様モイーズがマールボロで指揮した、これまたFMエア・チェック・テープで)なにせ、この演奏でこの曲を覚え、これしか知らないので、これが一番。

 豊かで、明快で、快活で、なんという楽しさ。モーツァルトでは特異のデフォルメは使わないのでしょうか。アンサンブルの水準もなかなかのもの。
 アメリカ響の管楽奏者は欧州の団体とは違って、やや明るすぎて、細かいヴィヴラートも気になりますが、おおらかな流れの前では、そんなことは気になりません。名曲です。

 音質も悪くない。
 ストコフスキーは録音芸術とともに歩んできた、とのことですが、意外と「これは超優秀録音」というのは少ないかも。どれも、ちょっと強調がきつすぎて、不自然なかんじが多い。ここでの音質はあまり作為は感じさせない。


その後・・・・・・・・

 「グラン・パルティータ」は、フルトヴェングラー盤(NOTA BLUE=EMIと同じ録音)、ウィーン・フィル木管グループ(ウェストミュンスター盤。図書館で借りた)を聴きました。ストコ盤に比べて、やや早めのテンポ、歯切れの良いリズムが特徴です。ウィーン・フィルの名人は、そりゃアメ響とは音色の味わいが違うでしょ。
 でも、ストコフスキーのやさしい、柔らかな表現を確認できて、収穫でした。

 最近は古楽器による録音も増えていますので、一度聴いてみたいもの。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi