Holst 組曲「惑星」
(ウィリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団)


DG/LPオリジナルデザイン
Holst

組曲「惑星」作品32

ウィリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団/ニューイングランド音楽院合唱団

DG 1970年録音(写真はLP時代のもの)

 

William Steinberg(1899ー1978独逸)はラインスドルフと小澤の中継ぎとしてこのオケ在任1969ー1972年、DGの欠損レパートリーを埋めて録音しておりました。表現はスパッと剛直荒削りな推進力が魅力、なんとなく彼に似合いそうもない演目は逡巡ないストレート系、文句ないオケの技量を発揮して輝かしいもの。冒頭「火星」は怒涛の進撃、有名な「木星」の優雅なスケールと迫力、弱音主体の楽章も充分デリケート、ほとんどこれが「惑星」との出会い、刷り込みでした。(2019年7月)
 1998年/2008年大昔のコメントが残って、当時は駅売り海賊盤。上記2019年にも聴いていたコメントがありました。この録音も既に半世紀上経過して、現役CDはR.Strauss 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」と組み合わせ。ウィリアム・スタインバーグも懐かしい名前となって、ピッツバーグ交響楽団との関係が深かった人(在任1952-1976)彼の残した音源は21世紀に現役でした。

 これは前のめりに速めのテンポにカッコ良く疾走する「惑星」、ライスドルフ時代人気いまいちだったらしいオーケストラも(在任1962-1969)実力は充分、輝かしい演奏を繰り広げております。音質も現役水準。四管編成にハープ、オルガン、チェレスタ、ティンパニ2台先頭に多種多様な打楽器+女声合唱という大きな楽器編成となります。初演は1918年御大エイドリアン・ボウルト。

 「火星、戦争(戦い)をもたらす者」は5拍子のリズムの切迫感、これはロックバンドがレパートリーに取り入れるほどの激しいリズムを誇ります。やや速めのテンポに前のめりの演奏は緊張感たっぷり、ノリノリのアツい演奏にボストン交響楽団パワフルな金管炸裂!上手いオーケストラですよ。途中いや増すテンポ・アップ!緻密精密さより勢い生命(いのち)こんな演奏に馴染んでしまうと、他の演奏がユルく感じられるほど。ラスト、ダメ押しのタメも決まりました。(6:37)「金星、平和をもたらす者」は遠いホルン・ソロより始まり、それが繰り返される静謐に暖かい緩徐楽章、ここも絶品ですよ。チェロやヴァイオリンのソロもデリケートに、管楽器も弦も囁きあって夢を見るよう。(7:25)

 「水星、翼のある使者」ここはスケルツォ。怪しくもユーモラスに細かい音型の木管がつぶやきあって、ここにもヴァイオリン・ソロ、そのままの旋律を木管やチェレスタに受け渡して、全オーケストラに花開く味わい深い楽章でした。(3:59) 「木星、快楽をもたらす者」は前曲中もっとも著名、カッコ良くも華々しいところ。出足は怒涛の華麗なるぶちかまし、徐々にテンポを上げて金管大爆発もパワフルに爽快なところ。そして中間部「Andante maestoso」は誰でも知っている勇壮な旋律、これは多くあちこちに流用されておりました。(日本では平原綾香ちゃんの「ジュピター」きらきらとした木管、深みのある弦、華やかな金管の掛け合い、ティンパニの迫力、タンバリンの存在感、デリケートかつストレートな表現は文句なし。(8:01)

 「土星、老いをもたらす者」はWikiに「一番長い」とされたけれど、ここでは木星より短いテンポ設定。やや速めに競り上がる金管が圧巻の迫力威力、この爺さんは元気いっぱいに怪しく、老熟しておりません。幻想的に神秘な楽章は流麗に過ぎ去って、ここのテンションの高さも特筆すべき高揚を見せております。(7:45)

 「天王星、魔術師」ここもスケルツォ。Wikiには「魔法使いの弟子」に影響を受けたとのこと、たしかにリズムの風情は似ております。但し、冒頭の深刻な金管とティンパニの衝撃的な掛け合いと、その後のユーモラスな歩みの対比は緊張感に充ちて、スタインバーグのアクセントの強調+オーケストラの威力(金管のパワー)は壮絶でしょう。テンポはやや速めに、パワフルに過ぎ去ります。この楽章に限らずティンパニが登場するたび、その存在感に驚かされます。(5:24)

 「海王星、神秘主義者」にようやく神秘の女声合唱ヴォカリーズ登場。その前に木管が寂しげにつぶやいてハープが絡んで太陽系の果て、孤独に静謐な締めくくりとなります。この辺りVaughan Williamsの南極交響曲を連想いたしました。(6:47) 冥王星の件は今となっては、なんだかなぁっぽいので触れません、あしからず。

(2022年12月2日)

Ligeti 「ルクス・エテルナ(永遠の光)」

ヘルムート・フランツ/北ドイツ放送合唱団(1971年録音)

(輸入元エコー・インダストリー)CC1057  1,000円にて購入。

 2008年個人的「惑星ルネッサンス」に至っております。数ヶ月で4種のCDを入手、飽きもせず連日愉しんでいるが、個人的な原点はこのスタインバーグ盤となります。LP時代からお気に入りでした。変更をした時に購入したのは、当時「1,000円激安」(非正規ライセンス/駅売海賊盤)だったから、という理由。DGレーベルの音源(廉価盤)としてずっと現役であります。

 この(エエ加減なる)盤でも、かなりの優秀な録音であることを実感出来。若い頃からこればかりだから、これが個人的基準(リファレンス)なんです。たしかこのLPを購入した日に、そのままご近所の音楽好きの家におじゃまして、お酒を飲みつつ拝聴した記憶もあります。(同好の志も既に故人となられました)もう20年以上前のこと。今は昔。

 「速いテンポ、やや前のめりのリズムで、バリバリ進んでいく」「細部までアンサンブルを整えたり、節回しの微妙なところにこだわらず、とにかく勢い」〜とは10年程前のコメントだけれど、なるほどその通り。ボストン交響楽団は優秀であって、「ホルンの深い音色や、弦の繊細な響きなんて聴きもの。どのパートもほんとうに上手い」というのも間違いない。「アメリカのオケにしては、意外とキンキラしていない」というのは、いったい何が念頭にあったのかな?華やかに、朗々と鳴り渡るオケであります。

 冒頭「火星(戦争をもたらす者)」より、尋常ならざる焦燥感を感じさせる急いた勢い有。颯爽とカッコ良くもある、前のめりの推進力。オケは輝かしく金管鳴り切って、駄目押しのように加速して、熱気いや増すばかり。ボウルト盤(1978年)7:57に対してわずか6:34のストレート快速テンポでした。「金星(平和をもたらすもの)」では一転、艶やかな弦がさらり静謐繊細に歌って、テンポが速くはないけれど、スッキリもたれない表現となります。ホルンもエエ音だなぁ。

 快速なのは「火星」「土星」「天王星」〜他は特別なテンポではないけれど「さらりスッキリ」とした印象があるのは、纏綿と歌わないからでしょう。剽軽なる「水星(翼のある使者)」のリズム感の良さ、アンサンブルは特筆すべき精緻さであります。各楽器の自然な位置関係、存在感にも文句なし。「木星」は全曲中の白眉だから、悠然たるタメで表現したところだろうが、さっくりとして素直、明るい表情で乗り切りました。素朴で、ちょっと粗野な感じがして、荘厳にもったい付けた表現ではない。

 「土星(老いをもたらす者)」は、金管が弱音〜最強音まで弱くならない(様子がよくわかる)のがボストン響の威力なのでしょう。後半の幻想的なサウンドも厚みがあって聴きもの。「天王星(魔術師)」は「魔法使いの弟子」によく似たスケルツォ楽章となります。素っ気なく進めているようでも、喧しく響きが濁ることはない。リズム感の良さ(ティンパニが上手い!)と、金管圧巻の厚みに満足。タンバリンの、確かな存在にもはっとさせられます。オルガンもちゃんと聞こえます。

 「海王星(神秘主義者)」〜弱音の美しさ、繊細さ、女声合唱の効果では、これ以上の演奏を聴いたことはありません。

 LPより収録時間が延びて、CDはフィル・アップが問題となってきました。ここまで価格相場が下がったら、潔く「コレ一曲」でもよいのでは?と最近感じております。手持ち他のCDでは「威風堂々」「エニグマ」「グリーンスリーヴス」・・・どれも少々違和感があって、ズービン・メータ/ロサンゼルス・フィル(1971年)の組曲「未知との遭遇」(1977年)が一番似合っているかな、と感じました。

 「ルクス・エテルナ(永遠の光)」は、映画「2001年宇宙の旅」に使われた前衛作品だけれど、LP時代からお気に入りでした。ます。静謐無垢なるアカペラによる不協和音は、まるで太陽系から外に飛び出してしまった小さな宇宙船を連想させる神秘さ有。7:57の幻影です。

(2008年3月21日)

 海賊盤の音源としてはカラヤン/ウィーン・フィルに取って替わられて最近見ません。(著作隣接権改訂の余波)ネーム・バリュー的にスタインバーグじゃ弱いですしね。DGの正規盤も、あまり見たことないから貴重かも。

 数年前に来日しているピンカス・スタインバーグという人は、息子さんだと思います。写真で見た限り禿具合などよく似てました。(NAXOSでCDが出ている)W.スタインバーグはアメリカで活躍した往年の名指揮者。ピッツバーグ響の音楽監督(1952〜76年)、晩年にはラインスドルフの後任、小沢征爾の前任としてボストン響の音楽監督(1969〜72年)も務め、1978年に亡くなっています。

 実力派ですが、(少なくとも日本では)華やかな存在ではありませんでした。でも、ベートーヴェンやブラームス、シューベルト、R.シュトラウスなどの大曲、アメリカの音楽なども積極的に録音しておりました。1960年前後に、Capital、Command辺りで膨大な録音もあります。

 この「惑星」はLP時代からお気に入りでした。やや前のめりのリズムで、バリバリ進んでいく彼らしいスタイル。テンションも高く維持していて、ボストン響の優秀なアンサンブルを堪能できます。「金星」におけるホルンの深い音色や、弦の繊細な響きなんて聴きもの。どのパートもほんとうに上手い。アメリカのオケにしては、意外とキンキラしていないのも好ましい。迫力充分ですが、落ちつきのなさを感じさせるかもしれません。(ボウルトの演奏なんか聴いちゃうと「あれは横綱」と思う)

 この人は、細部までアンサンブルを整えたり、節回しの微妙なところにこだわらず、とにかく勢い「命」。ストレートで飾りは一切なし、テンポも揺れない、元気いっぱい。冒頭の「火星」のリズムからノリノリなのです。アッチェランドも切迫感があって決まっている。燃える演奏。聴いていていたたまれなくなるくらいの切迫感。静かな部分でも、飾りがないぶん、すいぶんスッキリと気持ちよい。ラインスドルフ時代、低迷していたというボストン響に「喝」を入れた感じですね。相性はいいみたい。

 アンサンブルにはこだわっていないようだけれど、きっちり合っているところがボストン響の凄さ。録音も自然で、アナログの最盛期の音が堪能できます。

 リゲティは、たしか映画に使われて有名になった曲で、「宇宙からの神秘なメッセージ」、といった趣の透明な響きの音楽です。(1998年)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi