Spohr 複弦楽四重奏曲第1番ニ短調 作品65Spohr 複弦楽四重奏曲第1番ニ短調 作品65 クリーヴランド弦楽四重奏団、メロス弦楽四重奏団 1988年9月9日 ベルリン・フィルハーモニー室内楽ホール・ライヴ(FM放送からのエア・チェック・カセット) 同上曲 ハジェット(v)ロンドン・ハウス・ミュージック 1994年7月6日 ベルリン・フィルハーモニー室内楽ホール・ライヴ(FM放送からのエア・チェックDAT) 「第1番」というくらいだから第2番(以降)も存在するはずだけれど、出会ったことはありません。この曲自体(というか、Spohrそのもの)も録音は少なくて、ハイフェッツ盤が有名なくらいでしょうか。ワタシは偶然にクリーヴランド/メロスの演奏に出会い(狙ったFM放送のついでに収録)、すっかりお気に入りに。その数年後、ハジェットの古楽器による演奏も録音できました。 この度、この二つの演奏をMDに収録して、じっくり楽しみました。偶然に同じ会場だけれど、雰囲気はまったく違うんです。(音質も違いも有。クーヴランド/メロスがC120のカセット、ハジェットはDATですから)どんな曲かというと、これは短調のMozart ばり、と思って間違いはない。Spohrは1784-1859だからBeethoven より後、Schubert より少々年上、といった世代でしょう?でも、Mozart なんです。 有名なMendelssohnの八重奏曲変ホ長調の爽やかさそのままに、もっと自由で、しかも深みのある旋律が連続する名曲中の名曲。但し秘曲。なぜ録音が少ないのかは、まったく理由がわかりません。泣けます。最高です。なんの説明になっていないのはお許しを。CDはなんとか探してみて下さい。 クリーヴランド/メロス・チームは「しっとり・じっくり派」。テンポはゆったりめ、ていねいに仕上げぶりに感心します。淡々、粛々としたなかに、大きな歌を感じる浪漫派よりの演奏。でも、聴き進むに連れてジンワリと酔いが回ってくるようでもあり、いつのまにか怒濤の感動の渦に巻き込まれている自分を発見できます。 これ、さっきも言ったようにC120分のカセットの音質がイマイチなんです。電波の受信状況は良好だけれど、簡単に言うと録音レベルが低い。だからジミに聴こえるのかもしれません。でも24分間、聴き終えた後の幸せな気持ち。 ハジェットのほうは倍速録音とはいえ、DATですから音質はずいぶんと良好。でも、ブーンという低音ノイズがあります。(ワタシは気にしないが)「どちらの演奏がお好みですか?」と訊かれれば、やはりこちらでしょう。古楽器使用。テンポはけっこう速いような気がするが、じつはクリーヴランド/メロスより1分短いだけという意外なデータ。 こちら「しっとり・じっくり派」に対抗して、「溌剌・躍動派」なんです。ハジェットがヴァイオリンを弾きながら全体を統率しているんでしょうが、やや粗め。ラフなアンサンブルで、これを厳しく評価する人もいることでしょう。でも、このいきいきとした躍動感は捨てがたい魅力なんです。 楽器の特性もあって、粗野で素朴な音色も楽しいし「古典派回帰」方面のSpohrでしょう。「短調のMozart 」は、こちらのほうがいっそうイメージしやすい。いかにもライヴ!、風な熱気もあって、スタジオ録音では経験できない雰囲気でしょう。楽しさもひとしお。
じつはこのあと、Weberのクラリネット五重奏曲変ホ長調(クラリネットはペイ。これもワタシのお気に入り)も演奏されていて、Spohrと同趣向の勢い重視の演奏なんです。クラリネットは古楽器だと、素朴さが際だってWeber独特のドイツ民衆の泥臭い楽しさが際だちました。 Spohr、Weberの室内楽なんて、ずいぶん渋い。でも魅力横溢の作品なんで、騙されたと思って音源を探してみて下さい。(2001年6月15日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】●愉しく、とことん味わって音楽を●▲To Top Page.▲ |