Bruckner 交響曲第1番ハ短調(スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ
ザールブリュッケン放送交響楽団)


Bruckner

交響曲第1番ハ短調(リンツ稿)

スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ/ザールブリュッケン放送交響楽団

ARTE NOVA 74321 59226 2  1995年録音/780円で購入

 おそらくは十数年ぶりの再聴。交響曲第6番イ長調(1997年)を聴いた流れ、以下昔のコメントがあまりに手抜きだったので(おそらくは仕掛り文書をそのままアップロードしたのか)反省しておりました。Brucknerのお気に入り順は、第5番変ロ長調→第8番ハ短調→第9番ニ短調→第7番ホ長調→第4番変ホ長調→第6番イ長調→第3番ニ短調→第2番ハ短調→第1番ハ短調(0番ニ短調、00番ヘ短調は番外)シンプルな金管の咆哮がいずれ魅惑の世界であります。現在のリファレンスは(厳しく引き締まった)ギュンター・ヴァント/ケルン放送交響楽団全集だけど、それと出会うまでは(緩い癒し系)ゲオルグ・ティントナー、そしてこの(緻密な)スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ〜それは(当時)CDが安かったから。

 いずれ第1番を聴く機会は少なかった。これは「リンツ稿」(≒初稿)とのことらしいけど、ド・シロウトにはどこがどーやら、ってなところでっせ。適度な残響、優秀録音と思います。オーケストラは上手いっすよ、充分。

 第1楽章「Allegro」はズンズンと行進曲風に開始、シンプルな木管の音形、粗野な金管の響かせ方は後年の傑作を予感させても、ややあちこちエピソードは唐突感が拭えません。スクロヴァチェフスキは贅肉を取り除いたような、引き締まったようなサウンドに、やや落ち着きが足らぬような?響きの厚みに不足はなくて、クライマックへのアッチェレランドも迫力充分。第2楽章「Adagio」は幻想的な緩徐楽章であり、やがて懐かしい旋律は木管楽器に順繰りと引き継がれて、これはBruckner中でも屈指の美しさでしょう。馴染みのパターンである弦のアルペジオに、金管が短く呼応するところにはやや違和感有。素直にいつもどおり長い和音だけでも良いのに。遠浅の浜辺にゆったり寄せては返す波のように、やがてクライマックスがやってくる傑作第7番第2楽章「Adagio」ほどの完成度ではないにせよ、魅惑の優しい旋律でしょう。ここのアンサンブルも粛々とていねいな仕上げ。

 Brucknerのキモは第3楽章「Scherzo. Schnell(急速に)」。素朴粗野な(田舎臭い)三拍子が全集中でも屈指の存在感であります。金管の咆哮は原始のエネルギーを感じさせても、スクロヴァチェフスキの統率は厳しい切れ味と緊張感のあるもの。中間部、優しい牧歌的なホルン(+木管)が歌って、その対比も美しい傑作でしょう。劇的な金管の炸裂が戻って締め括りも決まっております。最終楽章「Finale. Bewegt feurig(快速に、火のように)」は劇的にカッコよい出足は前楽章とは異なって、ハ短調でありながら、勇壮前向きな風情も漂って音楽は進みます。この辺り、引き締まったスクロヴァチェフスキの統率面目躍如。夢見るような弦と木管の旋律(第3主題?)は長く続かず、やがて激烈な快速に追われ、嵐が収まるのを繰り返すような・・・この辺り、晩年の傑作はもっとわかりやすいんだけどね。アンサンブルの縦線の合い方、木管のニュアンスとか、オーケストラの実力は充分でしょう。

 (例のかっこ良い)第1主題が回帰してやがて切迫する弦の細かい音形に、金管がシンプルな和声に呼応して、やがて全開に鳴り響いてクライマックスへ。やや未整理な印象を抱えつつ、たっぷり盛り上がって全曲を締め括りました。初期作品はスクロヴァチェフスキほどの統率力がないと、あちこち無定見に出現するエピソードを上手くまとめられないかもしれません。

(2016年12月24日)

 NAXOSのティントナーと並んで注目のBruckner シリーズ。

 この曲も録音してから3年もかかってリリースしたので、果たして全曲揃えてくれるのか危うい?きっとヴァントとの関係で遠慮しつつ出しているんでしょ。ちょっと話題になったからって、46分でCD一枚とはねぇ。ケチ臭い会社。

 ・・・・・といいつつ演奏は素晴らしい。

 この曲は、Brucknerとしては(当然)まだこなれていないようなところがあって、素材としての旋律をいじりすぎたりで落ち着かない。鍋物で云えば、まだ火が通ってなくて味が若い。材料が煮え切ってなくて、各々の味が渾然一体となっていない曲。

 Brucknerのキモは「スケルツォ」だと思うんですが、ここは後年の円熟を予測させるような、素朴な高揚と緩和が見られて魅力的でしょう。

 スクロヴァチェフスキの演奏は、最初のうち線が細く、神経質すぎるかと思います。スケルツォ辺りから調子が出てきて、フィナーレの決まりかたも堂々として満足すべき盛り上がりを見せてくれました。

 まとめにくい曲ですからね、しっかりと安定して聴かせるは難しいと思います。アンサンブルは優れていますが、オーケストラの音は薄いですね。ホルンやオーボエ、フルートなんかもあまり魅力的な音色とは言い難い。

 しかし、それが致命的な弱点にはなっていなくて、この曲としてのまとまった印象をきちんと提示してくれています。

 この曲は、いままでバレンボイム/CSO、G.L.ヨッフム/RIAS響でのCDしか聴いたことがなかったのですが、はじめて全曲が見通せたような、そんな感想を持った演奏です。ちょっと知的過ぎて、素っ気ないようではありますが。


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written by wabisuke hayashi