Scriabin 「法悦の詩」(ヴィンクラー/ドレスデン・フィルハーモニー)


BerlinClassics 0032072BC Scriabin 

「法悦の詩」 作品54

ヴィンクラー/ドレスデン・フィルハーモニー

ALBE'NIZ

イベリア(ARBO'S編曲) 

ヴァイクレ/ドレスデン・フィルハーモニー

BerlinClassics 0032072BC 録音年不明(ALBE'NIZは1989年)  300円にて購入

 なるべくマニアックな収集は目指さないようにしているが、安ければ買うのはワタシの身上。じつはALBE'NIZは 0010212BCで既に購入していた音源で、目的は「法悦の詩」のみです。「19:04=300円」が安いのかどうか、判断に少々迷うところ。ヴィンクラーについては、達人こんのさんのサイトに詳しい。

 1950年〜1989年(残念ながら交通事故で亡くなった)ドイツ人。欧州ではあたり前の歌劇場でキャリアを積み重ねてきたようで、現代音楽の紹介にも熱心だったらしい。一部の好事家にはShostakovich 交響曲第7番(USSR&DDR青少年友情交響楽団 1980年 ETERNA 8-27-485〜6 CD化されず)の激演で有名とのこと。(未聴)

 「法悦の詩」は、有名な曲だけれどLP時代のストコフスキー/ヒューストン響の演奏以来ほとんど聴いておりません。嗚呼、そういえばこの曲買ってないな、と思って帰宅したらマゼール/クリーヴランド盤が眠っておりました。(なさけな)閑話休題、ヴィンクラー盤は骨太で明快で抜群に新鮮。300円の投資に後悔なし。

 表示ではADDになっているが、ヴァイクレのは間違いなくデジタル録音(1989年)だし、(p)1984年表示だけれど意外と新しい録音かも知れません。抜群に新鮮な音質で、例の如しドレスデン・フィルの硬質な響きが気持ちよく録られていて、音に芯と艶が存分。(マゼールのDECCA 1978年録音よりはるかに上質)

 この曲、エッチなエクスタシーを表現したらしいが、ワタシの期待が間違っているのか、そんな曲には聞こえない。Mahler の交響曲第5番「アダージエット」とか、Franck のピアノ五重奏曲ヘ短調における「モロ」状態に較べれば、なんやら感性が基本的に違うのでしょうか。洋モノのアダルト映画に風情が足りないみたいなもの?ワタシはそちら方面熱心ではないからワカランが(と、いちおう言い訳)。

 時として粗々しいアンサンブルのドレスデン・フィルは、ここではまったく緻密。ひとつひとつのパート(とくに管楽器ソロ)がていねいで、曖昧さが存在しません。いわゆる「雰囲気」(ときどきあるじゃないですか、木管がどうしようもなくヘロヘロの色気充満状態〜これ誉め言葉のつもり)系じゃなくて、キッチリ演奏してます。個々の楽器に、色気はそうないがトータルではちゃんとエッチなんです。

 この曲、全体構造をわかりやすく見せるというのは難しいかもしれません。ワタシの数少ない経験(ストコフスキー、マゼール)でも、なんやら横流れでいつのまにか終了、状態の印象がありましたね。

 ヴィンクラー盤は、どの部分も全体像が正確に計算されているようで、いやもう、まったくわかりやすく、聴きやすい。これほどトランペット(例の主旋律)が効果的なのも珍しいかも。そして厚みがあって、力強くて迫力は存分なんです。背筋がスラリと伸びて硬派の演奏。


 ヴァイクレは、ドレスデン・フィル(ある意味、ひとつの)黄金時代を作ったケーゲル(1990年に自殺)の後をうけて就任した指揮者。(来日もしている)もともと合唱指揮者だったのかな?曲的にも演奏的にも「法悦の詩」とは違和感バリバリで、あまりいただけません。もしかして、ヴィンクラーの数少ない音源を世の中に出すのが主眼のCDなのでしょうか。

 でも、これ名曲。スペインのエキゾチックな雰囲気充溢、ARBO'Sの編曲が洗練されて気持ヨロシい。演奏は「同じドレスデン・フィル?」と驚くばかりの違いなんですよ。1989年と言えばベルリンの壁崩壊の当年でしょ、オケの状態も混乱していたのかも知れません。音質的な問題か、こちらはそれなりにオフ・マイクで間接音が豊かに収録されて、芯が少々細い。

 アンサンブル的に悪いわけではないが、先のScriabinの自信に溢れた明快さとは違うんです。やや手探りで、音を繊細に置いていく感じ。指揮者の表現の基本的な違い、曲に対する配慮、録音会場も違うでしょう。それにオケのメンバーも変わっているはず。強奏部分に、いつもの強面な響きが少々顔を出して(なぜか)安心します。

 やや雰囲気で流した感もあるが、悪い演奏ではありません。地味すぎるとも思わない。この人、ヴィンクラーほどの構成力はなくて、スケール感を必要とする曲には似合わないかも知れません。(2002年9月9日)


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written by wabisuke hayashi