Sibelius 組曲「歴史的情景」/恋人(ラカスタヴァ)/
ロマンスハ長調/交響曲第6番ニ短調
(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団)


EMI 7243 5 67299 2 6 Sibelius

組曲「歴史的情景」(序曲-狩猟-情景)
恋人(ラカスタヴァ-恋人の道-こんばんは、さようなら)
ロマンス ハ長調(以上1969年)
交響曲第6番ニ短調(1970年)

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

写真はEMI 7243 5 67299 2 6

 去る者日々に疎し、John Barbirolli(1899ー1970英国)も亡くなって半世紀以上経って、彼のSibeliusと云えばかつては鉄板!的存在。ヘタすると20年ほど聴いていなかったかも。ハレ管弦楽団現在のシェフであるMark Elder(1947ー英国)の録音を聴く機会が最近多くて、このオーケストラもほんまに上手くなったと感慨一入(ひとしお)昔はどんなだったのか、懐かしく再聴確認いたしました。この作品と演奏はLP時代より幾度聴いていて、オーディオのことは門外漢だけれど、ここ最近けっこうな比率でアナログ時代の音質の水準の高さに驚くことが増えました。

 組曲「歴史的情景」はもともと劇音楽から編んだ組曲らしくて、第1番(序曲ー情景ー祭り)第2番(狩猟ー愛の歌ーはね橋にて)からバルビローリが三曲選んで録音したらしい。なんと鬱蒼と不安と希望が入り混じった夜明け前を連想させる「序曲」(5:19)勇壮な推進力を感じさせる「狩猟」(7:51)寂しげに静謐な始まりから、やがてファンファーレが鳴り響いて壮麗な広がりを見せる、カッコ良い「情景」(6:42)、知名度や演奏機会が少ないのが不思議なほどの名曲。金管をグラマラスに響かせて、まったりと歌ういかにもバルビローリの統率が決まっております。オーケストラの技量云々は感じさせぬ完成度でしょう。

 金管が華やかに活躍する前曲に比べて「恋人」は弦楽合奏、打楽器、トライアングルのみの編成(弦以外聴こえない?)。もともと男声合唱曲だったらしい。ラカスタヴァ(恋人)にはどんな哀しいドラマがあったのか・・・そんなデリケートな吐息から始まりました。(4:34)「恋人の道」はそっと囁きあう恋人同士の笑顔が、弱音に儚く続きました。(2:47)ヴァイオリン・ソロから始まる「こんばんは、さようなら」は不安な心情が微妙に揺れて名残惜しく、もしかしたら恋人との別れなのかもしれません。(5:40)ロマンス ハ長調はの弦楽器のみの小品、ハ長調とは思えぬ陰りや不安が感じられて、「恋人」の続きに違和感がありません。(5:45)ここはハレ管弦楽団の弦楽器の実力をたっぷり堪能できる作品が続きました。

 どれも個性的な魅力を放つ7曲の交響曲。第6番ニ短調は「銀河鉄道交響曲」と勝手に名付けて、いかにも満天の星空に走り出す列車を連想させる傑作。二管編成。 第1楽章「Allegro molto moderato」は序奏が天空に煌めく星々をイメージできる「聖歌風」(Wikiより)やがてそれは感極まってリズミカルな第2主題へと移行して、それが銀河鉄道の出発をイメージさせて晴れやか。この辺りの絶妙な流れ、木管と弦のバランスはバルビローリのワザでしょう。(9:22)第2楽章「Allegretto moderato - Poco con moto」はフルート、ファゴットから始まります。木管の対話は寂しげに揺れて、なんとも落ち着かぬ、頼りない緩徐楽章。ティンパニに乗って金管が炸裂しても、その不安は消えません(6:56)第3楽章「Poco vivace」はスケルツォ。細かい付点のリズムが弱音気味に展開されて、寂寥の風情は変わらない。ラストは力強くまとめました。(3:44)第4楽章「Allegro molto - Doppio piu lento」は宗教的荘厳な旋律が支配して、サラサラと流さず確かめるように入念な描き込みはいかにもバルビローリ、やがてフィナーレに向けてテンポを上げて急ぎ足に走り抜けて熱気を加えたものです。(9:53)

 Sibeliusはパワフル骨太に、メリハリ付ければ解決するような世界に非ず、濃厚に過ぎると彼(か)の清涼な風情は台なしになりかねません。当時のハレ管弦楽団は作品を選んで、絶品の演奏を聴かせてくださいました。

(2023年7月8日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
written by wabisuke hayashi