Sibelius 交響曲第1番ホ短調/
第4番イ短調(オッコ・カム/ラハティ交響楽団)


BISSA2076 Sibelius

交響曲第1番ホ短調(2012年)
交響曲第4番イ短調(2014年)

オッコ・カム/ラハティ交響楽団

BIS-2076

 Okko Kamu(1946-芬蘭)もすっかり大ヴェテラン、満を持してのSibelius交響曲全集録音。オスモ・ヴァンスカ以来ラハティ交響楽団は再録音でした。Sibeliusに相応しい、線の細いクール透明に寂しげななサウンド。パワーがあってバリバリ弾けばよいというものでもないでしょう。実演ではかなり厳しいアンサンブルとの声も伺ったけれど、アンサンブルの技量に疑念は感じさせませんでした。BISの評判よろしい録音は音量レベルは低め、我が貧者のオーディオではその真価は引き出せません。

 ホ短調交響曲は全7曲中、屈指の劇的雄大なる作品は二管編成。セッション録音としてはフィンランド放送交響楽団(1972年)以来?第1楽章「Andante, ma non troppo - Allegro energico」は静かなティンパニとクラリネットにて開始、それはたしかに寂しげなホ短調だけど、弦が雄大な第1主題を奏でると勇壮に爽快なる北欧風情が広がります。やがて激性を増して、悲劇的なピチカートによる締め括りへ。(10:48)第2楽章「Andante (ma non troppo lento) - Un poco meno andante - Molto tranquillo」は弦が嫋やかな旋律を歌ってそっと囁くよう、木管の合いの手も静謐に充ちておりました。安らぎと不安、激昂が入り混じって中間部のホルンは牧歌的、名曲ですね。この辺りTchaikovskyの影響顕著かと。(9:22)第3楽章「Scherzo. Allegro - Trio. Lento (ma non troppo)」はティンパニが連打する劇的なもの。(5:35)第4楽章「 Finale(Quasi una Fantasia). Andante - Allegro molto - Andante assai - Allegro molto come prima - Andante (ma non troppo)」ここはタメてタメて詠嘆の風情漂う幻想曲。テンポは意外と軽快に始まって、サウンドはいくら激性を煽っても粘着質に重くならない。清涼な空気を維持するもの。ラストはぐっとテンポを落として引張りました。(13:02)

 イ短調交響曲は既にムダを削ぎ落として、後年のSibeliusの個性が色濃く表出した暗鬱に鬱蒼と怜悧な作品。二管編成。第1楽章「Tempo molto moderato, quasi adagio - Adagio」蠢くような低弦の導入から、暗鬱極まりないチェロ・ソロが第1主題を奏でます。息も絶え絶えに超絶暗い! けど清涼静謐、まるで死の世界みたい。(11:25)第2楽章「Allegro molto vivace」つかみどころのないスケルツォ。安寧の微笑みを浮かべて軽妙であり、不安げでもあります。(4:57)第3楽章「Il tempo largo」は暗鬱に悩ましい緩徐楽章。静謐な弦、木管、金管が呼応しあって、出口のない冷たい思索が続きました。(11:54)第4楽章「Allegro」ここは目まぐるしいチェロ・ソロの音型、グロッケン(チューブラーベル)が印象的なところだけど、グロッケンシュピール(鉄琴)で代用されることもあるとのこと。ここではおそらくそれかと。ホ短調交響曲のように朗々たる、わかりやすい結末ではありません。アクセントを強調せず、緻密な集中力が全体を支配しておりました。(10:21)

(2023年10月28日)

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written by wabisuke hayashi