Shostakovich 交響曲第9番 変ホ長調/祝典序曲/
組曲「カテリーナ・イズマイロヴァ」/タヒチ・トロット
(ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団)


CHAN8587 Shostakovich

交響曲第9番 変ホ長調
祝典序曲
組曲「カテリーナ・イズマイロヴァ」
タヒチ・トロット

ネーメ・ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

Chandos CHAN8587 1987年録音

すっかり息子が有名になった父ヤルヴィのグラスゴー時代、在任期間は短かったのに(1984ー1988)けっこうな量の録音を残してくださいました。エーテボリ交響楽団とのDG録音は記憶にあっても、ChandosにShostakovich録音がたんさんあることを見逃して初耳。軽快軽妙な「第九」はここ最近お気に入り、旋律にも細部馴染んで、これはもの凄くカッコよい!メリハリの効いた推進力に驚かされました。このオーケストラは細身で力感に足りぬとの勝手な思い込み雲散霧消、この人はオーケストラビルダーなのでしょう。賑々しく晴れやかな「祝典序曲」、小粋な「タヒチ・トロット(二人でお茶を)」はShostakovichの最高傑作と信じております。(音楽日誌2021年4月)
 かつて若い頃は超苦手だったShostakovich、いまやできるだけあちこち聴きたいお気に入り作品となりました。2022年2月露西亜の烏克蘭侵攻以来旧ソヴィエット露西亜の音楽を聴くのは心苦しいけれど、Neeme Jarvi(1937ー愛沙尼亞→亜米利加)の演奏だから許していただきましょう。ムラヴィンスキーの弟子筋なのですね。Shostakovich交響曲はChandos、DG(エーテボリ交響楽団)と併せて全曲録音に至っております。交響曲第9番 変ホ長調は全14曲中、もっとも軽快に明るく(Wikiによると軽妙洒脱)そして短いものでしょう。シンプルなニ管編成+打楽器は種々多様に使われております。

 たいてい深刻に重苦しく始まるShostakovich中異例な第1楽章「Allegro」は、まるで手探りのような始まりから、やがてピッコロが明るく駆け出して、金管の合いの手もノーテンキっぽい。ヤルヴィの表現は力感に溢れてパワフル、スコットランドのオーケストラにも切れ味メリハリをしっかり感じさせます。(5:05)第2楽章「Moderato - Adagio」はクラリネット・ソロの情感が読み取りにくい静謐。ここの不安な風情、重い足取りにはいつものShostakovichが顔を見せております。各パートの際立たせ方、バランスとも見事な演奏でした。(6:35)第3楽章「Presto」はスケルツォ。シンプルにシニカルな疾走が快速、細かいパッセージ連続も難なくクリアするオーケストラもみごと。トランペットのソロ旋律は俗っぽくありがちでオモロい。(2:35)第4楽章「Largo」は重々しいファンファーレから開始、深刻な風情もいつもなら延々鬱々と続きそうだけど、あっさりと終わってアタッカで(3:43)第5楽章「Allegrett」へ。不安な気持ちを引きずりつつやがてテンポ・アップ、妙に明るく盛り上げてクライマックスに向かいます。これは第5番ニ短調のわかりやすい「勝利」とはずいぶん違って、シニカルに投げやりっぽい世界でしょう。(7:03)逡巡のない指揮者の表現もお見事。

 「祝典序曲」は、「キャンディード」序曲と並ぶ現代の「フィガロ」序曲(勝手にそう評価)躍動する熱気に溢れてノリノリ!一点の曇りもない世界が駆け抜けました。(5:58)組曲「カテリーナ・イズマイロヴァ」(ムツェンスク郡のマクベス夫人)改定後のオペラよりの組曲。ここの収録中、軽妙洒脱とはちょいと毛色は違って強烈、暴力的な絶叫もありました。Allegretto(2:54)-Allegro con brio(1:55)-Largo(Passacaglia)(8:32)-Allegretto(1:38)-Presto(2:03)。Largo(Passacaglia)は雄弁に壮大な悲劇、Prest-Allegrettoはバカ騒ぎみたい。

 タヒチ・トロットはVincent Youmansによる「二人でお茶を」の秀逸な編曲。デリケートに囁くように小粋、そしてユーモラス。最高。(3:26)

(2022年6月25日)

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written by wabisuke hayashi