Shostakovich 交響曲第5番ニ短調/
交響曲第9番 変ホ長調(ヴァシリー・ペトレンコ/
ロイヤル・リヴァプール・フィル)


NAXOS 8572167 Shostakovich

交響曲第5番ニ短調
交響曲第9番 変ホ長調

ヴァシリー・ペトレンコ/ロイヤル・リヴァプール・フィル

NAXOS 8572167 2008年録音

 かつて苦手系の代表だったShostakovichも心安らかに聴けるようになりました。一番著名であり、若い頃から馴染んだ交響曲第5番ニ短調「革命」は、最近ほとんど聴いておりません。あまりにそれらしく、物々しく、雄壮雄弁に粗々しく暑苦しい〜そんな風情が耐えられない。ところが、Vasily Petrenko(1976-露西亜→英国?)はクールに知的、緻密に細部丁寧な描き込みに感心いたしました。かなり以前、いくつか拝聴した彼の印象は”弱い、おとなしい”=オモロない、といった感じ。ところが聴手の趣味嗜好がどんどん変わったせいか、こちら方面の表現を好ましく受け止めました。音質極上。現在ロイヤル・フィルの首席なんだそう。

 第1楽章「Moderato」は冒頭弦によるぶちかましも抑制して粛々、情感を配した始まりから、やがてテンポ・アップも自然にあまり煽らぬ過不足のない表現とスッキリとした響き。記憶(先入観)とも異なって線の細さは感じさせず、オーケストラの力感も充分でした。(18:02)第2楽章「Allegretto」はユーモラスなスケルツォ楽章。ゴリゴリとしたコントラバスの始まりから軽妙なノリを感じさせても、粗野な粘着質とは無縁なスッキリとした響き。(5:11)第3楽章「Largo」は弦+木管のみの静謐な緩徐楽章。ここも清涼な哀しみに溢れて、弱さを感じさせぬオーケストラの力量を再確認いたしました。(15:33)第4楽章「Allegro non troppo」風雲急を告げる最終楽章、ここも一歩引いてあまり重くならず、過度に走らない。「勝利へ」の道もあまり大仰に爆発せず、あくまでデリカシーを失わない。あまり煽ってわざとらしいフィナーレに追い込まない。(13:00)初めて聴いたコンドラシン辺りはもっと熱血?それはそれで懐かしく思い出しておりました。

 交響曲第9番 変ホ長調は誰でも知っているように「第九」の呪縛に反発して、軽妙に小ぶりに仕上げて重厚長大とは無縁な作品。これを意味深く、味わいあるように仕上げるのは逆に至難なのかも。これは予想通り、細部かっちりと清潔ていねいに仕上げて精緻、緊張感とテンション高い演奏でした。第1楽章「Allegro」は洒落て軽快なノリ(5:25)神妙に繊細な哀しみがにじみ、やがて狂気を孕んだ叫びも出現する第2楽章「Moderato - Adagio」(8:47)第3楽章「Prest」はスケルツォ楽章、木管の細かい快速音形はオーケストラの技量の証明、この辺りのテンションの高さ、メリハリは最高。相変わらず明るいんだか?なんかハラに一物あるのかわかりにくいところ(2:39)第4楽章「Largo」は妙に神妙とした金管のファンファーレ。実質上フィナーレの序奏、ラスト辺りのファゴットもとても怪しく、そのまま(3:33)第5楽章「Allegretto」へ。ここもユーモラスな風情なんだけど、素直に喜べぬシニカルを感じさせるところ。しっかりテンポをタメてクライマックスの高揚にも微妙な陰、ヴァシリー・ペトレンコは洗練された集中力に締め括ってくださいました。(6:06)大仰じゃないけれど、なかなかの名曲! 当時のお上からは批判され、作曲者の立場を危うくしたらしい。芸術の価値を権力が云々するのは笑止千万でっせ。

(2021年1月27日)

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written by wabisuke hayashi