Shostakovich 交響曲第14番ト短調 作品135「死者の歌」
(ルドルフ・バルシャイ/モスクワ室内管弦楽団1969年ライヴ)
Shostakovich
交響曲第14番ト短調 作品135「死者の歌」
ルドルフ・バルシャイ/モスクワ室内管弦楽団/ヴィシネフスカヤ(s) レシェーチン(b)
(+交響曲第9番 オイストラフ/ソヴィエット国立交響楽団 1969年ライヴ)
GPR 002/2 1969年ライヴ 4枚組1,990円にて購入したウチの一枚
初演時の録音のはず。バルシャイ/モスクワ室内管弦楽団といえば、かつては猛烈に緻密で集中力あるアンサンブルを誇った団体だけれど、バルシャイが西側亡命をしたため、ほとんど正規録音が復活しない状況というのが残念無念。この作品は1970年の正規録音が存在した(歌い手が異なる)し、2002年話題になったケルン放響との全集中に1999/2000年録音が存在します。
年末大掃除で、RUSSIAN DISC RD CD 11 192とダブっていることを初めて発見。(自分のボケが)ショックで、意地でも苦手なShostakovichを聴いてやろうと、ま、そんなところ。モノラルだけれど音質自体はそう悪くなく、意外と聴きやすいものでした。
これが交響曲?Mahler の「大地の歌」も作曲者が交響曲としたから、なんでも有なんだろうな。11楽章45分ですよ。連作歌曲集でしょ?あんまり曲のことやら演奏コメントのネタも(もちろん知識も!)ないので、楽章の説明しておきます。
第1楽章:深いところから(バス独唱)
第2楽章:マラゲーニャ(ソプラノ独唱+カスタネット)
(詩)フェデリコ・ガルーシア・ロルカ
第3楽章:ローレライ(バス独唱+チェレスタ)
第4楽章:自殺(ソプラノ独唱+チェレスタ)
第5楽章:用心して(ソプラノ独唱)
第6楽章:マダム、ごらんなさい!(ソプラノ独唱+シロフォン)
第7楽章:ラ・サンテ監獄にて(バス独唱+ウッドブロック)
第8楽章:コンスタンチノープルのサルタンへのザポロージュ・コサックの返答(バス独唱)
(詩)アポリネール
第9楽章:おお、デルウィーク、デルウィーク!(バス独唱)
(詩)ヴィリゲリム・キュヘルベケル
第10楽章:詩人の死(ソプラノ独唱+ヴァイヴ)
第11楽章:むすび(ソプラノ+バス)
(詩)リルケ
カッコ中の打楽器はワタシがとくに気になったもので、ほかトムトムとか鞭(ビシっとね。SM好きにはタマらん)、チューブラーベルなんか全編に散らばります。曲のラスト(ローレライ)に「カ〜ン」と二発鳴ると「はい!貴方の人生は鐘ふたつ。残念だったね」みたいに聞こえて、情けなくなるほど哀しい。
第5楽章「用心して」はシロフォンとトムトムが掛け合って、なんやらユーモラスなノリ(不気味だけれど)もあります。が、全体としてこんなにモノクロで、ずず暗く、無表情な曲調の連続って他にあるでしょうか。1969年と言えば、ついこの間、という感じだけれど、日本では「高度成長神話」に酔いしれてしたころでしょ。当時のソ連では、こんな暗鬱なる音楽ができあがるような状態だったんでしょうか。ま、もっと暗い第13番「バビ・ヤール」のあとだけど。
弦と打楽器のみの編成で、例えばBartok「弦、打楽器、チェレスタの音楽」でも、Shcedrin「カルメン」組曲だって、これほど抹香臭いことはないでしょ。なんやら「死者の歌」という題名があまりにピタリで、21世紀にドン詰まった世相にピタリ状態ですか?個人的には、喜んで日常生活に流したくない音楽だなぁ。
第2楽章「マラゲーニャ」(というくらいだからスペイン舞曲か)にカスタネットが登場します。フツウ、この楽器は情熱を表現しますよね。でもね、ここではまるで「骸骨が踊ると骨が鳴る」といった風情でした。大活躍なんだけど。
演奏はよくわかりません。ヴィシネフスカヤはロストロポーヴィチの奥さんで、彼との録音もあります。アンサンブルの精度は非常に高くて、(裏返しの)熱気、みたいなものを感じました。これはケルン放響との1999/2000年録音と比べればよくわかりますが、不気味さの桁というか、かなり違っていて、やはりこれは初演の意気込みかも知れません。
これは「生理的」にではなくて、「理論的」に聴くべき音楽なのでしょうか。ま、とにかく音楽はなんども聴かないとお話しにならない。ましてや名曲、と世評されるこの曲、手許のスロヴァーク盤やらも虚心に聴きましょう。きっと好きになれないワタシが悪いのでしょう。いちど、ナマで聴きたいな。(2002年12月27日)
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